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2006.10.21 (土)

「 本当に“アジア外交”の扉は開いたか? 日本に深く浸透する中国共産党の概念 」

『週刊ダイヤモンド』    2006年10月21日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 662

安倍晋三首相の中韓両国訪問によって、閉じられていた“アジア外交”の扉が開けたかに見える。

扉の開き方はこれでよかったのか。安倍外交は始まったばかりであり、評価については慎重でありたいが、そこには深刻な問題が含まれていると思えてならない。だが、“識者”“専門家”らをはじめ、世論は大概、安倍外交の第一歩を高く評価した。こうした日本人の対中姿勢はどこから生まれてくるのか。一つの歴史資料を連想せずにはいられない。

それは、先週の小欄で触れた中国共産党による「日本解放」のための秘密指令の「日本解放第二期工作要綱」である。日中国交樹立時の1972年にまとめられた同文書は、第一期の目的、日本の資金、技術の獲得を可能にした日中国交樹立がすでに達成され、工作は第二期に入るとの前提に立ち、「第二期工作要綱」と題されている。

同文書は「日本が現在保有している国力のすべてを、わが党(中国共産党)の支配下に置く」ことを基本戦略とし、そのためには各界の日本人のコントロールが必要として、対象グループごとに働きかけの方法を具体的に示している。たとえば、政治家に対しては次のとおりだ。

国会議員は「個別に掌握」し、「秘密裡に本工作員の支配下に置く」との大目標の下、次のように五項目の指示が列挙されている。(a)第一期工作組によって獲得ずみの者を除き、残余の議員全員に接触ルートを最少四本確保する、(b)各党の役職者や有力者は、秘書、家族、彼らに強い影響力を持つ者の三者に、おのおの個別の接触ルートを最少二本確保する、(c)全情報は「議員身上調書」として整理、公私にわたる情報を細大漏らさず集積する、(d)党ごとに議員を「掌握すべき者」と「打倒排除すべき者」に分類、後者は党内勢力をそぎ孤立させる、(e)支配下に置くためには、カネ、権力、名声など欲するものすべてを与え、または約束する。中傷、離間、脅迫、私事の暴露などいかなる手段も可である。

以上の指示のあとにはこうも書かれている。「敵国の無血占領が、この一事にかかっている」「いかなる困難、醜悪なる手段も厭うてはならぬ」。

日本国内でこのような工作を行なった後、全議員への「招待旅行」を実施せよと、同文書は指示。中国政府の招待に応じない“反動極右分子”の政治家でも“形式のいかんを問わず”必ず中国を訪れるよう工作せよと強調する。

入国した議員には「C・H・工作』を極秘裡に行なう」とあるが、同工作の内容は不明だ。工作の詳細は不明でも、現実に中国に“弱点”を握られ、あるいは“欲する物”を与えられ、公然と中国に反対したり非難したりすることができない状況にあるであろう幾人かの政治家の顔がただちに浮かんでくるのが、日本の危うい現状だ。

中国共産党による日本人への働きかけは底深い。右に引用した政治家対象の手段は、そうとわかれば日本人の反発を食らう性質のものだ。しかし、一連の活動が学界、マスコミ界、財界などの分野に配された“2,000人の工作員”によって、10年20年単位で深く静かに、秘密保持を絶対条件として実行されてきたとしたら、自らも気づかないうちに、日本人は中国共産党の物の見方に染め上げられてきたといえるのではないか。

村山談話を引き継ぎ、日本を歴史の侵略国と位置づける地平に立つ安倍外交はこれからどう展開していくのか。来年の参院選に勝利した後、余裕を得て軌道修正するのか、中国もいずれ変わると期待するのか。確かに未知の要素は存在する。だからこそ現時点での断定は避けたい。しかし、歴史問題について主張すべき点を主張せず、譲ってはならない点を譲ったのではないかとの疑問は払拭出来ないのだ。

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