「 安倍政権に求められる“保守の本気” 安易な妥協は必ず見破られる 」
『週刊ダイヤモンド』 2006年10月7日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 660
9月26日、初の戦後生まれの首相、安倍晋三内閣が発足した。人事を見ると、あらゆる意味で安倍氏らしい。
27日付の各紙は、新首相が人事について派閥の長の森喜朗元首相らに事前に相談、その結果、安倍内閣は森氏らの考えをかなり反映したものとなったと解説した。その最重要の事例が幹事長人事で、安倍氏の意中の人は麻生太郎氏だったのを中川秀直氏にせざるを得なかったというのだ。
“麻生幹事長”が誕生していれば、どんなにおもしろいことになったかと、じつは私も考える。自民党の総裁選挙を通して、世間に知られることになった麻生氏の魅力とおもしろ味は、来年の参議院議員選挙でぜひ勝たなければならない自民党にとって強力な武器となっただろう。また、安倍氏と価値観を同じくする麻生氏は、安倍氏の考えに沿って党をまとめ上げるのに、よきパートナーになっていただろうとも思う。安倍氏とは明らかに価値観の異なる中川氏に較べて、麻生氏は安倍政権の幹事長により適していたと思える。麻生幹事長が実現しなかったことは、じつに惜しいことだったのだ。
だが、年長者も含めて周囲の意見に耳を傾けるのは安倍氏の持ち味でもある。そのことの是非は結果次第で決まる。ゆえに、氏の持ち味の是非を、今論じても意味がない。
幹事長人事では譲ったが、安倍氏の持ち味が発揮出来ないわけではない。官邸人事は濃い安倍色に染まっている。最も力を入れたいとする教育問題の首相補佐官に山谷えり子氏を充てた。山谷氏は誤った男女共同参画の是正などに見られるように、これまで安倍氏を補佐してきた。教育現場をよく調べて、子どもたちへの非常識な性教育の実態にも警鐘を鳴らした。“のらりくらり”のイメージはあるが、じつはしっかりした価値観を持つと評される伊吹文明文部科学相とともに、教育改革に実績を上げていくことだろう。
中山恭子氏の拉致問題担当補佐官就任は、塩崎恭久官房長官が兼任する拉致問題担当相の設置とともに、首相の意欲を示すものだ。中山氏が拉致被害者と家族に絶大な信頼を得ているのは周知だが、それは氏の人柄と安易な妥協をしない信条の確かさゆえだ。小泉純一郎前首相の下、官邸が北朝鮮と妥協して拉致問題をほどほどに切り上げ、国交樹立交渉に移ろうとしたとき、反対したのは安倍氏だった。その安倍氏を支持し続けたのが中山氏でもある。
こうしてみると、ほかの三補佐官も含めて、安倍氏が働きやすい、信頼できる人物を身近に配置したのが見えてくる。安倍氏らしさを存分に発揮する環境をつくった今、日本が直面する重要問題に氏の価値観を曲げることなくぶつかっていってほしい。
氏にとって最も気がかりなのは来年の参院選であろう。その結果が、政権の岐路につながるとなれば、勝ちを取りにいくために、安全そうに見える道を選ぶのもわからないではない。“参院選までは挙党一致”“そのあとは好きなようにやればいい”との森氏の説得を受け入れて中川氏を幹事長に就けたのも、来年の選挙を気にするあまりであろうか。
だが、大切なことを忘れないでいてほしい。国民はじつによく見ているということだ。安倍首相が信念を貫いてこそ、国民の支持は確実なものとなり、さらに高まっていく。妥協は必ず見破られる。小泉政権が最後まで高い支持率を保ったのは、前首相が何事によらず、いつも“本気”で、妥協を避けたからだ。安倍氏にも、“本気”が求められている。しかもそれは“保守の本気”である。このことを常に心に置いていてほしい。
といっても、新政権の最初の100日間は静かに見守ることが肝要だ。安倍氏はその間に、これまでに説いてきた信念をどう具体化していくか、その策を練り上げればよい。
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