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2006.09.30 (土)

「 安倍新政権に求められることはまったき保守の価値観を貫くこと 」

『週刊ダイヤモンド』    2006年9月30日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 659

強者には草木もなびき、歴史観も外交政策も正反対の人びとが安倍晋三氏の門前に列を成す。氏の課題はいかに彼らをさばき、自分なりの内閣をつくり上げるかである。

安倍政権誕生を前に、国民が何を欲しているかを、戦後の歴史から振り返る。氏の祖父、岸信介は総裁選で石橋湛山に敗れたあと、石橋の病による辞任で総裁に就任する。1957(昭和32)年のことだ。岸はすぐさま組閣に取りかかったが、そのときの手法を拓殖大学日本文化研究所客員教授の遠藤浩一氏が語る。

「岸は一直線に自分自身の信念に基づいて組閣したのです。挙党体制などまやかしだとして、敵・味方をはっきりさせた。池田、三木、松村の各派を非主流に追いやったのです」
こうして岸は60(昭和35)年の日米安全保障条約改定への流れをつくり始める。周知のように、安保改定はマスコミとリベラルな知識人たち、学生たちの幅広い反対を受け、岸は退陣に追い込まれていった。

安保改定は、しかし、日本の国益への計り知れない貢献だったという評価がいまや常識だ。そのことを日本国民は、じつは当時も、よくわかっていたのではないか。認めなかったのはマスコミにすぎない。遠藤氏が指摘した。

「その年の秋の総選挙で、自民党は300議席弱を獲得して圧勝しました。安保改定反対で騒然とした雰囲気からは想像しがたい結果です。国家にとって重要な大きな変革は常に保守のバネによって引き起こされ、それを国民は支持してきたのです」

親が子どもの自立を願うように、国民は心の奥底で、この国が国家らしい国家になることを願っている。それは日本の美点を守りつつ、強さを維持するという保守の理念だ。戦後の日本に強要された非日本的な衣を脱ぎ捨て、本来の姿に立ち戻ろうと政治が大きく動くそのバネも、常に保守のバネだ。

遠藤氏は、93年の細川内閣誕生当時の民意を分析せよと指摘する。
「あの政変では自民党の下野ばかり語られます。しかし、93年の選挙では、自民党は離党議員を除けば一議席増やしている。自民党は党内の反乱で敗れたのであり、保守が力を落としたわけではありません。凋落したのは左翼、リベラル勢力だったのです」

小泉純一郎首相は、「自民党をぶっ壊す!」と叫んで総裁となった。しかし、「ぶっ壊した」のは保守基盤ではなく、五五年体制の残滓、社会党を中心とする勢力だった。昨年九月の“郵政選挙”で敗退した議員のなかにどれだけの社会党系議員がいたかを見れば、その流れは明らかだ。

安倍氏に求められるのは、政権の基盤、最重要のポストに保守の軸を明確に通すことだ。それは外交、国防、教育において、日本国の立場、日本文明の価値をわきまえた人材を配することから始まる。たとえば中国外交だ。安倍政権誕生を前に、すでに中国側に譲歩の動きが見られるが、日本の外務省などから、なんと日本側の妥協を示す動きがある。これこそ深刻な誤りだ。理不尽な外交を展開してきたのは中国であり、中国の譲歩こそ当然で、日本が今譲るのは誤りだ。譲ってはならないことは、未来永劫、譲ってはならないのだ。組閣および、それ以降の政策決定で、こうした点についての妥協は政権基盤の流動化につながると心しなければならない。

だが、安倍氏には危機に直面したときの祖父の姿の記憶があるはずだ。岸は、数十万人のデモ隊に囲まれ、実弟の佐藤栄作と、「死ぬときは一緒だ」と励まし合った。そうした祖父の、生命を賭けての山場に居合わせた記憶は、安倍氏にどんな圧力にも耐えうる力を与えてくれるだろう。だからこそ、できる範囲において柔軟に妥協しながらも、政権の根幹でまったき保守の神髄を保つことが重要だ。

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