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2006.03.11 (土)

「 米中が互いに牽制し合うなか中国の『以経促統』政策で懸念される台湾の内部崩壊 」

『週刊ダイヤモンド』    2006年3月11日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 632

昨年12月の総選挙で台湾人の政党の与党民進党はなぜ大敗したのか。陳水扁(チンスイヘン)総統はその原因を、自分の政策が十分に台湾を意識したものではなかったからだと分析したのではないか。大敗後、陳政権は急速に台湾色を出しつつある。

まず、今年元日の演説で陳総統は、台中間の経済交流は「積極管理、有効開放」を原則とするとして、従来の積極開放を改め、規制を強める方針を打ち出した。

次に行政院長(首相)を入れ替え、新院長に国民に人気の高い蘇貞昌氏を任命。1月25日の蘇内閣発足では、副院長(副首相)に49歳の女性政治家、蔡英文氏を充てた。蔡氏は李登輝前総統から陳政権まで、中国政策のブレーンとして活躍してきた台湾独立派の人物だ。
1月30日には、これまで台湾が掲げ続けてきた台湾による台中統一の目標を取り下げ、統一へのプロセスを定めた「国家統一綱領」の廃止を検討すると発表。ひと月後の2月27日、台中統一を目指す総統の諮問機関、国家統一委員会とともに国家統一綱領終止を発表した。

翌28日、2・28事件の追悼式では、中国人の政党である国民党支配の歴史について激しい演説を行った。

2・28事件は1947年2月28日に起きた。中国大陸から逃れてきた阡」介石(ショウカイセキ)の国民党軍の圧政に、不満を爆発させた台湾の民衆が抗議活動に立ち上がり、その動きは全国に広がった。国民党は軍事力で台湾人を弾圧、殺害された台湾人は最大2万8,000人に上る。以降、台湾は“夜寝るときにもマスクをしなければならない。寝言であっても国民党や阡」介石の悪口を言えば、密告され連行される”と恐れられるほどの言論弾圧、思想的取り締まり、密告と拷問を躊躇しない恐怖支配の国となっていった。

59年前に起きた同事件の追悼式で、陳総統は「外来政権(国民党)、独裁体制が、一個人、一政党のため、多くの台湾人民を迫害した」と、厳しく述べたのだ(「産経新聞」3月1日付)。当然、中国は「陳総統の動きは両岸(中台)関係、アジア・太平洋地域の平和・安定に問題をつくり出す」として反発を強めた。

一方、米国は静観の構えだ。米国の基本方針は、台湾の現状維持である。昨年2月の日米安保協議会(通称2プラス2)で、日米両国は台湾問題の平和的解決をうたい、中国に対し、台湾への武力的働きかけは許容しないことを明言した。台湾が米国との意思の疎通に努め、独立に向かって“暴走”することはないと米国に納得させることができれば、米国が台湾擁護の立場に立たない理由はない。

米中が台湾を挟んで双方をうかがい牽制するなかで、じつは最も懸念されるのが台湾内部からの崩壊であり、それを誘引する中国の政策だ。

今、中国が力を入れるのは「以経促統」政策だ。経済交流を拡大し、台湾の中国市場依存度を高め、台湾を絡め取る戦略である。

李総統の時代には、経済交流には厳しい歯止めがかけられていた。それを緩和したのが陳政権で、その結果、2005年の統計では、台湾企業の中国向け投資額は対外投資額全体の71%を超えた。投資件数でもまったく同じ傾向が見られ、台湾経済が浮かぶも沈むも中国次第であることが見て取れる。

中国は台湾からの依存度を高めたうえで、陳総統と対立する国民党や親民党の党首ら外省人(中国系)勢力を招いて、台湾世論の二分作戦を採ってきた。分断政策は功を奏し、陳政権の対中強気政策には、台湾の人びとの反発と不安が付いて回る。そのような陳政権と台湾人に、日本は出来る限りの支援を与えなければならない。台湾の立場をよく把握し、助けていくことが、日本の国益に最もかなうことなのである。

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