「 韓国の狂乱、深まる米韓の亀裂 」
『週刊新潮』 '06年2月9日号
日本ルネッサンス 第201回
韓国の盧武鉉政権が異常である。同政権に対する韓国内外での軋轢も高まっており、非常事態に備えるよう、韓国国軍に呼びかける声さえ出始めた。盧大統領の異常さは、自由と民主主義を基調とする韓国を否定し、国民への弾圧によってしか存在し得ない北の金正日独裁体制の側に立とうとすることから生ずる。
米国国家情報長官、ネグロポンテ氏は昨年12月上旬、日韓両国を訪れ、北朝鮮問題を話し合った。同長官は韓国では盧大統領と会談し、北朝鮮の偽ドル製造、麻薬貿易などについて証拠を示して説明し、米国が昨年9月から行ってきた金融制裁への協力を求めた。韓国側の手応えはなく、米国政府は同月中旬、また今年1月21日から、再度財務省が担当者を派遣、韓国政府に情報提供を行い、協調体制を組むよう求めた。
この間に驚くべきことが発生した。盧大統領には、北朝鮮問題にまともに向き合う意思がないと判断したのか、24日、米国政府はそれまでの米国財務省と韓国政府との協議内容を、報道資料として、直接、在韓米国大使館から韓国外務省の記者室にファックスで送ったのだ。そこには対北金融封鎖政策についてのやりとり、韓国政府に対する米国政府の要求内容が詳述されていた。
この“事件”を、韓国の人々は“米韓関係の深刻な転換点”と見る。米大使館が直接、韓国言論界に立場を表明することは、米政府が韓国政府の情報伝達に信をおいていないと明らかにすることであり、事実上、韓国政府を見限ったとの解釈である。
頭越しに情報を出され、無視されたことへの苛立ちを示すかのように、韓国政府は翌25日、外務通商省のスポークスマンが記者会見し、米国政府から対北金融制裁について具体的な要請はなかったと述べ、前日に送信された米国側の資料を真っ向から否定した。
一方、同日新年の会見を行った盧盧大統領は、北朝鮮の国家ぐるみの偽ドル製造疑惑について問われ、「大統領が直接、結論づけるのは危険である」として、回答を避けた。
すると次に何が起きたか。翌26日午後、在韓米国大使のA・バーシュボウ氏が韓国の『インターネット独立新聞』(以下『独立新聞』)の事務所を訪問したのだ。
頼みは反政府言論人
『独立新聞』は2002年7月に創刊され、編集長の申恵植(シンヘシク)氏を含めてわずか5名で運営されている。彼らの主張の基調は保守主義と愛国主義、反金正日、自由市場経済の擁護である。組織は小さいが彼らの主張に賛同する人々は少なくない。事実、この日、韓国メディアの良心のひとり、『月刊朝鮮』の元編集長で現在ヒラの編集委員の趙甲済氏、国民行動本部長の徐貞甲氏、脱北者で『朝鮮日報』記者の姜哲煥氏氏ら多数が『独立新聞』事務室に集いバーシュボウ大使を迎えた。
趙甲済氏は、本人は否定するが、金大中氏の資金及び女性スキャンダルを報じようとして現政権の圧力を受け、編集長からヒラの編集委員に降格されたと言われている。徐貞甲氏は、北に傾く盧政権の現状を危機ととらえる元軍人で、韓国保守勢力の中心の一人だ。姜哲煥氏は自らの脱北を描いた『北朝鮮脱出』を読んだブッシュ大統領から招待を受け、昨年6月、40分間にわたって北朝鮮の現状について語った人物だ。
韓国の反盧武鉉勢力を象徴するかのような人々の集まった『独立新聞』の事務室を訪れたバーシュボウ米大使は、申編集長の話に聞き入った。申編集長は、韓国のメディアを取り巻く“劣悪な環境”の下で、言論の使命を全うするために努力を重ねていること、金正日の独裁と人権弾圧の実態を国民に知らせることに特に力を注いでいることを強調したそうだ。
大使は「ブッシュ大統領を含めた多くの米国人が北朝鮮問題に関心を抱いている」と述べたが、その言葉が現政権には痛烈な批判となり、反盧政権の言論人にとって大きな勇気づけとなったことは想像に難くない。
盧大統領のショックはさらに続いた。1月30日、米国に本拠を持つ『ラジオコリア』から仰天のニュースがもたらされたのだ。
それは青瓦台(大統領府)の高官と韓国国軍の将軍たちが、平壌で南北朝鮮連邦体制構築に向けての教育を受けているという報道だった。
北による併合を望むのか
『独立新聞』主筆の鄭昌仁(チョンチャンイン)氏は次のように書いている。
「青瓦台の秘書官たちが386運動圏出身(日本でいえば全共闘世代の左翼学生たち)で揃えられており、彼らが(金日成の)主体思想派だったことは周知の事実だ。彼らにとって大韓民国は誕生してはならなかった国家であり、ただ、金日成政権だけが韓半島の正統なる政権であり忠誠の対象である。だから平壌で連邦制教育を受けることはむしろ正当だと彼らは考えるかもしれない。だが、軍の将軍たちが平壌で教育を受けたとなれば事態は容易ではない」
平壌で軍中枢を担う将軍らが教育を受けることは、単に連邦国家の制度を学ぶのではないはずだ。軍事独裁者の金正日に韓国を引き渡すこと、反対勢力があれば軍事的に制圧することも前提にした“教育”であると考えなければならない。
現在、この瞬間も、韓国では『ラジオコリア』が報じたこのニュースの出所、信憑性を巡って慌ただしく確認や追跡が行われている。現在伝えられているのは、某国策研究機関の北朝鮮研究センターのセンター長が、盧政権の極左路線に危機を覚え、自分自身の体験を在米の韓国系ラジオ局に曝露したということだ。
研究機関や人物の固有名詞は幾つか浮上しているが、現時点では特定されていない。だが、私自身、昨年暮れに興味深い話を聞いた。韓国国防関係の専門家に取材したときのことだ。この人物は「05年12月に韓国国防研究院の院長以下ほぼ全員が、北朝鮮の金剛山ホテルでのシンポジウムに参加した。一行はバス2台を連ねて行った」と述べたのだ。
たしかに、去年12月3日、金剛山ホテルで第17次国防フォーラムが、韓国国防研究院主管、統一部の後援で開催され、南北軍事力の比較分析の専門研究員26名を中心に、韓国の国防・戦略を担う幹部らが参加した。報道からは同会議に北朝鮮がどう絡んでいたのかは見えてこない。しかし、いかにも奇妙ではないか。これをたとえれば、冷戦時代に、米国が国防総省のソ連専門家全員をひきつれてモスクワで戦略会議を開くにも匹敵する不可解な事例である。金剛山での開催は、当然盧政権の了承なしには不可能だ。盧政権は北朝鮮に併合されたがっているのかとさえ考えたくなる。韓国の将軍たちが平壌で教育を受けているとの、米国経由の俄かには信じ難い情報にも思わず耳を傾けるゆえんだ。まさに狂乱の渦の縁に立つ、それが現在の韓国である。
桜井良子様
12日のテレビ番組であなたは皇位継承問題で男系を守るべきとの観点から、いつもの鋭い論戦を展開しておられましたね。
私はあなたの言う男系維持については大反…
トラックバック by 言いたい放題 — 2006年02月16日 10:55
冗談が本当になる?
2年ほど前、某掲示板で韓国人相手に「韓国赤化統一作戦」
という投稿を書き韓国の北寄りの姿勢を危惧し、それに対して韓国の人も同意していたので若干安心してい…
トラックバック by 我考故我有 — 2006年02月17日 19:36
米韓の摩擦 ~韓国はどこへ行くのか
「櫻井よしこWebサイト」に気になる記事が出ていました。
題:「韓国の狂乱、深まる米韓の亀裂」
趣旨:※私による要約
韓国の盧武鉉政権…
トラックバック by 記憶の湖 — 2006年02月18日 23:11
竹島の日プロジェクト
2月22日は竹島 (dokdo)の日です。特定アジアには甘い外務省の対応が駄
目なため、…
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トラックバック by よろずBLOG — 2006年02月28日 01:40