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2005.03.12 (土)

「 幻に終わった南セントレア市 意味のない仮名文字文化は国家の運命をも狂わせる 

『週刊ダイヤモンド』    2005年3月12日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 583

市町村合併で、愛知県知多半島の先端に誕生するはずだった「南セントレア市」が頓挫した。合併の主体だった南知多、美浜両町の住民投票で、合併そのものへの反対が多数派を占め、「南セントレア市」という命名を支持する人も少数派だったからだ。

住民投票で最も支持を受けたのは「南知多市」で1万0,296票、対して「南セントレア市」は1,988票にとどまったそうだ。市町村合併については個々の事情もあり、一般論では論じ切れないためなんともいえないが、南セントレアなどという国籍不明、文化不在の命名を退けたのは、住民の皆さんの良識であると思う。

地名には、その土地の歴史が息づいているものだ。その土地で発生した歴史的な出来事、あるいはその土地の風土や特徴が凝縮されて地名になる。それは人びとの暮らしに溶け込んで、新たな文化や伝統の土台となっていく。

だが、「南セントレア市」の「セントレア」自体、新たにできた空港用に「セントラル」と「エアポート」をつないで創った、英語にもなりえない造語を基にしたものである。国籍も文化も意識せずに創られた記号にすぎないのが「セントレア」であり、それは、あえていえば言葉以前のものだ。

こんな命名を耳にするたびに、いくつかのことを連想する。たとえば韓国の現状だ。盧武鉉(ノムヒョン)政権の下では、今急速に、左翼革命、あるいは無血革命と現地の人が呼ぶ、法改正が進行中だ。親北朝鮮・親中国で、反日・反米の路線である。加えて、成長よりも分配の政策を軸に、大企業への締め付けも厳しい。期待はずれの成り行きに大統領への支持率は下がっているが、このような大統領を国民が選んだことに、言葉が関係していると韓国の人びとは言う。

韓国は1960年代末から、漢字を読めない人びとのためにハングルを重用し、ハングルだけの新聞などを発行し始めた。漢字の素養をしっかりと身につけた為政者は、それが国民のためと考えた。つまり、善意から生まれたのがハングル重用政策だったのだ。

ところが、以来30年余が過ぎてみると、韓国人の考える能力が低下した、と彼らは言うのだ。表音文字にすぎず、意味を持たないハングルのみで育った世代は、漢字世代に較べて明らかに、言葉の持つ意味を把握する力が弱く、言葉の概念を深く汲(く)み取ることができないのだそうだ。日本語から漢字を取り去り、平仮名とカタカナのみで教育され、新聞も雑誌も仮名だけで育った世代を考えればよいだろう。
 そのようにして育った子どもたちは当然、論理的に考える知的土台が不十分で、感情論に動かされてしまう。その結果が盧大統領の誕生だったと、彼らは嘆くのだ。言葉を大切にしないことのツケは深刻だということだ。場合によっては国家の運命を狂わせ、民族の悲劇へと突き進んでいく結果にもなりうる。

日本に南セントレアなどという名前の自治体が増えて、カタカナ言葉の氾濫が始まれば、それはこの国の国柄が変質しつつあることの警告である。私たちの考える能力の低下をも警告しているといえる。胸に手を当てて考えてみよう。日常生活のなかで使用しているカタカナ言葉で、自分でも意味がよく理解できない言葉、感覚的に把握できない言葉はないかと。そのようなカタカナ言葉を妥協して使用し続けることは、その人の知性を裏切る行為なのだ。

美しく知性ある日本語は、漢字と仮名のほどよい混合である。そうしてふと気づいた。日本を守る自衛隊の艦艇の名が、なぜ「きりしま」「はるな」など平仮名でのみ書かれているのかと。日本の知性はその中枢から、すでに蝕(むしば)まれているのではないだろうか。

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