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2005.01.15 (土)

「 被災地への救援競争は米中のアジアでの覇権争い 日本も政府一体で取り組め 」

『週刊ダイヤモンド』    2005年1月15日 早春号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 575

インド洋大津波の犠牲者は、15万人を超えてなお増える勢いだ。被災国10ヵ国以上、被災者は現時点で500万人を超える。日本人を含む多くの犠牲者を悼みながら、日本は今、被災者への援助の手を、いかに早く、いかに強力に差し伸べるかに全力を挙げて取り組む必要がある。アジア諸国に必要とされる国としての基盤を、強固にしていかなければならない。

津波が発生した昨年12月26日、日本政府はスリランカ政府の要請を受けて、国際緊急援助隊の医療チーム21人の派遣を決めた。彼らは翌日午前、成田空港から出発し、日本は一応早いスタートを切ることが出来た。他方、中国も津波発生当日、約2,200万元(約2億8,000万円)相当の救援物資の提供を決定、29日に100トンの物資をスリランカに届けた。中国政府はこれをもって、「海外からの救援専用機第1号は中国政府の援助」だと喧伝する。

だが、各国の動きをよく見ると、フランス政府は中国よりもひと足早い27日に、テント、シート、毛布、簡易浄水器、医薬品などの救援物資とともに医療、通信の専門家ら100人を乗せた救援機をスリランカに派遣ずみだ。英国も、緊急援助物資を積んだ救援機を27日夜、ロンドンから送り込んだ。米国の太平洋軍司令部は行方不明者の捜索のため、沖縄の嘉手納基地からP3哨戒機3機をタイに派遣した。

こうしてみると、中国の言う救援専用機第1号の主張は事実と異なる。だが、中国の李肇星(リ・チョウセイ)外相は今年1月1日にアナン国連事務総長に電話をかけ、中国の援助活動を報告、事務総長は中国の活動を高く評価したと報じられた。中国は年末の31日には被災地15ヵ国の在北京大使を招き、5億元(約65億円)の救援物資の提供を伝えるなど、今回の災害復興で主導権を取る構えである。ソ連崩壊後、ロシアの力も振るわない今、米国に対抗すべく超大国を目指す中国の闘志をうかがわせる一連の動きである。

米国もまた、あわただしい動きを見せている。津波発生直後のブッシュ大統領の反応は、鈍いのひと言に尽きるが、その遅れを取り戻すかのように、津波発生から4日後の12月30日、実弟のジェブ・ブッシュ・フロリダ州知事とパウエル国務長官を団長とする視察団の派遣を発表した。年明け1月3日には父親のブッシュ元大統領、クリントン前大統領を伴って記者会見を行い、民間からの支援を呼びかけた。三氏は揃って、被災国の在米大使館を訪れて支援を約束した。

イラク問題を抱える米国は、世界最大規模のイスラム教人口を擁するインドネシア、その他のアジア諸国を軽んずることは出来ない。歴代大統領が揃い踏みして展開した米国のパフォーマンスも、事実とは異なる中国の自己喧伝も、被災地への同情と援助であると同時に、それぞれの国益を賭けての“戦い”であるのは言うまでもない。

では日本政府はどうか。1月4日に初めて対策会議を首相官邸で開き、外務、防衛、厚生労働など関係省庁の局長らが出席した。日本の医療チームは、先述のようにいち早く活動を開始したが、政府一体の取り組みを可能にする体制づくりは、どう見ても遅い。

それでも、6日にジャカルタで開催される救援のための首脳会議に小泉純一郎首相、町村信孝外相が揃って参加し、5億ドル(約510億円)の援助も決定したことはなによりだ。困ったときの友人ほどありがたい存在はない。だからこそ、日本は全力でどの国にも見劣りしない援助を実施せよ。そうして初めて、中国の台頭にもかかわらず、アジアでの日本の足元は堅固に築かれる。アジア諸国との友情の確立が日本の国益を守ってくれることを忘れてはならない。

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「 被災地への救援競争は米中のアジアでの覇権争い 日本も政府一体で取り組め 」

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