「 『民営化』直撃対談 」 近藤剛(日本道路公団総裁)VS櫻井よしこ
週刊新潮 2004年3月11日号
日本ルネッサンス 第107回
「最初は“乙女心”をときめかせたんですよ」
「厳しいご意見を励みに頑張ります」
政府・与党の道路公団民営化案は、是か非か。思わず自民党道路族が拍手を送ったこの決定に、民営化委員が2人とも辞任してすでに2ヵ月。委員が内幕を曝露する本を出版するなど、問題は今も燻り続けている。30兆円もの借金を抱えた道路公団再生は、果たしてこれで可能なのか。政府・与党案に異を唱えるジャーナリスト・櫻井よしこが、日本道路公団の近藤剛総裁を直撃した。
櫻井 総裁就任3ヵ月、今日は色々と伺います。よろしくお願いします。
近藤 いえいえ、こちらこそ、よろしくお願いします。
櫻井 道路公団に対して国民の関心が高いのは、小泉首相が民営化、株式上場と言われたことにもあると思います。それには大きく分けて2つの意味があったのではないか。
1つに、族議員と官僚の道路行政への介入の余地をなくしていくということ。もう1つは、この国のお金の流れをきれいなものにする、国民に見られても恥ずかしくない公正なものにする。そのためには特別会計にメスを入れ、私たちの郵便貯金や簡易生命保険が原資となっている財政投融資(財投)を見直すということだと思うのです。
近藤 そうですね。
櫻井 そこで近藤さんが90点以上と評価された政府・与党案についてお伺いしたい。90点以上という根拠を私も含めてごく一般の道路行政に素人な者にもわかるようにお話しいただければと思います。
近藤 わかりました。この公団問題が取り上げられた理由、まあ、私なりに考えてみましたが、3つの背景があったのではないかと思います。1つが、借金ですよ。これは主として財投からの借金です。公団だけで28兆。政府の出資金、無利子負債を含めると31兆ぐらい。他の3公団合わせて40兆を超えるわけです。無利子負債や政府出資金などを含めると、45兆近く。これが非常に不透明な形で膨らんでしまった。
2つ目は、道路建設のあり方。優先度の高いものから本当に造られているのかどうか。本当に借金を返す目処が立って造っているのかどうか。
3つ目が、公団による道路の建設、管理が高コストではないかという懸念が出てきた。この3つの背景を解決していくというのが今度の民営化作業の大きな眼目と思うんですね。
それを踏まえて、12月22日の政府・与党の合意した枠組みは、非常にいい方向を向いた第一歩だと思っているんです。第一歩として、私は90点をつけさせていただいたんですよ。
櫻井 「90点以上」と仰いました。
近藤 90点、あるいは90点以上かもしれない。それは、借金を国民負担とせずにきっちりと返していく。もう1つは、これから民営化した新会社が建設する道路に優先順位をちゃんとつける。そして、公団を民営化することによって効率化していく。この3つを一応、達成できる方向を向いた第一歩だと、そう思ったんですね。
櫻井 マイナス10点は?
近藤 私は少なくとも償却資産、要するに道路の土地は国有としても償却する資産については、新会社で所有する形態になってもいいのではないかなと思っていたんですね。こうした考え方を私は道路調査会などでも申し上げたんですが、これは受け入れられなかった。それで20点減点したんです。ただし、「10年後見直し」という条項を入れてもらったんですよ、枠組みの合意でね。ですから、今度、法律でも「10年後見直し」という条項が入るはずなんです。そこで10点回復して90点というわけです。
櫻井 10年後の見直しは非常に大きいですね。
近藤 そうです。
櫻井「やり方がアンフェアです」
櫻井 しかし、何をどのように見直すのかということを具体的に詰めなければ、意味がありません。見直しという条項が入るかどうかも、明らかではありません。総裁が入れてもらう方向であると仰っても、何の保証もないですけど。
近藤 いや、ただ…。
櫻井 近藤さんの期待はとても甘くていらっしゃいますよ。きちんと法律の文言にしないと、我が国の政治、官僚政治のあり方を見れば、いかようにでも変えられてしまうのは明らかです。
近藤 枠組み合意で10年後見直すと宣言したことは、大変重い意味があって、これはやはり法律にもそのように書き込まれるんだと私は思っているんですね。
櫻井 それは意味がないとすでに申し上げました。私は近藤さんに、最初とても期待し、その後すぐに落胆しました。11月26日の参議院で江田五月議員の質問に非常にきっぱりと、「民営化委員会の意見書を尊重する」「民営化会社は、上下一体でなければならない」「責任を持って自立した経営ができなければならない」と正論を仰って、私は思わず釘付けになったくらい驚いた。でも、その僅か2日後の28日『ニュースステーション』に出演なさった時に、発言が後退していました。
近藤 そうですか。
櫻井 はい。そこで、すごく野暮なことをお聞きしたい。ぜひお答え下さい。この28日のお昼に会員制クラブの個室に、まず民営化委員の猪瀬直樹さんが入って行った。次に石原伸晃大臣の姿を見て「あ、一緒だったんだな」と思ったら、近藤さんにばったりお会いした。あの時、「これは他言しないでくれ」と仰ったから、私はそれを守りましたが、新聞がさり気なくそのことを書きました。
近藤 そうでしたか。
櫻井 あの時何が話し合われたのですか。その夜の『ニュースステーション』で発言が変わりましたので、同日昼の三者会合でどういう話があったのか。それによって近藤総裁の考えが影響を受けたのではないか。
近藤 石原大臣が猪瀬さんと僕を紹介、引き合わせたいと、こういうことだったものですから、それでお話しさせて頂いたのです。
ただ、あれは私的な会合で、他の方の了解をいただいているわけじゃありませんので、公にしないで下さいとお願いをしたというわけです。ですから、特別深入りした内容の話は、あの時はしておりません。
櫻井 近藤総裁のやり方はアンフェアです。民営化委員会の委員長代理は田中一昭さんです。委員会代表にまず会うのが、責任ある立場の方のなさり方です。
そうでない段階で秘密の会合をなさり、一委員のみに会った。大改革をしようとする時に、近藤総裁についていこうと思わせるには信頼を損う行動で、手法が間違っていたと思います。
近藤 僕は会える方にはどんどんお目にかかりたいと思っていましたから。
櫻井 総裁が田中委員長代理に会いたいと言えば、田中氏はいかようにも時間をつくったと思います。
近藤 田中委員長代理とも、お目にかかっていろいろお話しさせていただいています。ですから、あまり不透明なことはやっていませんので、誤解のないようにひとつお願いいたします。
櫻井 「誤解」はしたくないのですが、突然、発言が変わった。理由はやはりどうしても理解できない。たった2日で発言がひっくり返っている。私は、近藤さんが国会で「意見書に沿ってやります」「上下一体です」「民営会社は自立しなきゃいけません」とおっしゃったことに〝乙女心〟をときめかせたんですよ(笑)。道路公団は、民営化でなければならないと主張するには、明確な理由があります。45兆円を返す中で、政府・与党案では9,342キロほとんど全部造ることになりました。
公団を政府の手元に置いて、官僚が運営するのでは経費削減のインセンティブでさえも生まれてこない。道路公団、国交省、族議員も含めて、内部の力で規律を働かせることができずにきたからこそ、事態はここまで腐ったのです。民営化して、市場の金融機関と株主の厳しいチェックの目に晒されないと構造的に何も変わらないからですよ。
近藤 変わるからこそ、90点つけたんです。新会社がやる事業については、財投資金を使わない。民間の金融市場からお金を集めてくるんです。
櫻井 新会社が造る高速道路の建設費をですか。
近藤 そうです、そうです。財投資金をそこに投入しないで、わざわざ民間の金融市場で新会社が金融調達をすることになっているわけです。
櫻井 民間の金融市場がなぜお金を貸してくれるんですか?
近藤 なぜというのは…。
櫻井 私が民間金融機関の頭取だったら、採算の取れない高速道路を造る近藤さんにはお金を貸しません。しかし、政府・与党案だから貸すのです。民間会社が造った高速道路は借金と一緒に、保有・債務返済機構が最終的に一括して持つからです。機構は、独立行政法人で実態としての国です。
つまり、民間金融市場は国に貸すつもりになっている。だから貸すんです。そして何が起きるかというと、今までのどんぶり勘定が更に洗面器になるのです。
近藤 日本道路公団は3つに分割されますが、それぞれの会社にとっては、その機構と別々の協定を結びますので、いわゆる洗面器にも、タライにもならないんです。保有・債務返済機構としては、返済資金は一括して管理するけれども、それぞれの会社との協定は別々に結びますから、各会社の経営責任がそれで薄くなるとか、なくなるとか、そういうことではない。お金の流れとしても透明度は高くなります。
櫻井 機構が債務は一括して払うと書かれています。高速道路、一般有料道路、全て同じ財布からの返済で、どんぶりは必ず大きな洗面器になります。それで本当に45年後に借金が全部返せるのか?
やっぱり自立的な経営ということが非常に難しいんじゃないかという気がしてならない。新たな高速道路の建設をしながら、今の総額約40兆の借金を45年で返すのは難しいでしょう。しかも、金利は…。
近藤 平均4%。
櫻井 45年間、金利が4%以上にならないという保証は全くないわけですね。むしろ、日本はこの長期の不景気から抜け出そうと官民挙げて努力して、経済成長を達成しましょう、GDPを増やしましょうと言っているわけですから。国民を挙げての努力によって、今の低迷状況から抜け出すことを考えれば、金利は容易に4%を超える。
国交省お得意の机上の計算にすぎないと私は思います。45兆円の借金を、さらにあと2,100キロほどの高速道路を造りつつ、45年間で返済というのは、一種のフィクションですよ。
近藤「借金返済は可能です」
近藤 借金返済は可能だと私は思ってます。今だったら遅過ぎない。だから、今度の民営化の議論というのはいいタイミング、ぎりぎりセーフじゃないでしょうか。今、公団が借り入れている金利は1%台前半です。過去の高い金利も随分入っているので平均をすると今、2.78%。現時点で借り入れるのなら1%台前半。ですから、これからの半世紀、平均4%というのは私は必ずしも合理性がないとは思っていません。
櫻井 今、庶民の受け取る金利はほとんどゼロですよ。バブルがはじけて以降、資本主義の歴史上、初めてこれほど長い間ゼロ金利が続いているわけです。
そこから私たちは脱却しようと官民挙げて必死の努力をしている中で、これから45年、近藤さんも私も、残念ながら百歳超えますよ。そうした長期を、平均4%で見積もるのは危険です。
近藤 借金を増やさないということを宣言した、これが重要なことなんです。それで、あとは45年かけて着実に返済をしていく。
櫻井 借金は増やさないだけでは不十分です。着実に減らすことが絶対に必要です。道路公団がここまで借金を増やしてしまったのは、民間には馴染まない償還主義という考え方があるからです。今回の政府・与党案では、この償還主義をほとんど論じていない。
近藤 償還主義というのは一定期間内に借金を返済するという意味なんですね。これがいいのか、あるいは償還主義と決別したほうがいいのか、これは意見が2つあって分かれるところです。今のところは、償還主義でいこうという結論ですから、45年間で返していこう、と決められている。
償還主義から決別するとどうなるのかというと、金利と管理費を賄うだけの料金でいいということになりますね。料金としては償還のための元本を回収する必要はなくなりますから、これは料金が相当安くなりますよね、その場合には。
この2つの考え方があって、今回の合意はその借金を返しましょう。それも国民負担のない形で返そうと決めたわけですね。
櫻井 ちょっと待って下さい。庶民を代表して申し上げますけれども、あなたはウソつきですよ。
償還主義でない場合には、金利だけを払って借金を返さないなんて、方程式はどこにあるんでしょうか。私、初めて聞きました。
そもそも償還主義があるから誤魔化しが利いたのではないですか。これまで償還主義でやってきたから、返済期間の30年が延び、40年が延び、50年になった…。
近藤 それはプール制(注:全ての高速道の料金収入を集め、収支を合算する制度)の弊害で、私は償還主義だけの話をしたんです。
櫻井 償還主義とプール制が一緒になっているからです。政府案には45年返済とは書いてありますけど、詳しいことは書いていない。今、仰ったのは、大変、総裁らしくないお言葉です。
近藤 それ、ちょっと誤解があるんで申し上げますが、民営化委員会の意見書では、最初の10年間は元利均等とあります。それから、資産買い取りが10年後から始まる。資産を買い取った後、償還主義とは決別をします、ですから、その後は必ずしも借金は返さないでもいいと。二本立てなんです。私は民営化委員会の意見に沿ってお話をさせていただいているつもりです。
櫻井 総裁の方が誤解をしておられる。民営化委員会の意見書で、確かに最初の10年間は長期固定・元利均等としました。それ以降、別立てにした理由は、10年経った時に資産も債務も民間会社の方に移譲しますということです。そこから先は完全に民営化会社が、保有・債務返済機構とも関係なしに、自分の責任でやっていくということですね。
近藤 そう。ただ、そこで返さないという選択肢もあるんですよ。
櫻井 もちろんです。しかし、今の枠組みの中で、償還主義から離れて金利だけを払うというのは、相手が民間の金融機関ではなく、保有・債務返済機構、つまり国だというわけでしょう。
近藤 債権者がどこであっても同じです。
櫻井 いいえ、違います。国が相手の場合、誰も責任を取ってこなかったじゃないですか。道路公団の誰が責任を取りましたか。首都高速、阪神、本四、誰が責任を取りましたか。官僚は何も責任を取ってこなかったじゃないですか。官僚は薬害エイズで500人以上死なせても責任を取らない人たちですよ。官僚、政治家、大臣も責任を取らない。
しかし、これが民営化会社になって、社長も社員も、会社の景気がよければお給料も増える、悪ければつぶれる、債権者から追われるとなれば責任ある経営をします。借金があっても自分で判断して、そのまま抱えていられる余裕があると思うなら、それはそれでいいわけです。ですから、総裁が仰っているこの2つをごっちゃにした話は、私は断じて違うと思いますね。
近藤 ごっちゃにしてないんですよね。要するに償還主義のお話があったから、償還主義とはこういうことですという説明をさせていただいただけの話で、その一番極端を私は対比させていただいたということです。
櫻井 総裁の仰ったことで思い出したのは、国交省の役人の主張と非常に構造的に似ていることです。結局今回の政府案では何も変わらないのに、それを言葉巧みに変わったと言っておられる。公団方式で一番駄目なのは償還主義ですが、それがなくならないと仰った。
近藤 今回の枠組みでは償還主義に基づいて返済をしていこうということです。
櫻井 そうですね。償還主義とプール制が残りますから、今までと基本的な構図は同じですよ。例えば高速道路、2,100キロほどつくらなきゃいけない、その建設費用が約20兆と見積もられていたのが、どんどん、どんどん削られて、今や?
近藤 7.5兆円。
櫻井 7.5兆円でできると言う。何かマジックみたい。
近藤 マジックでも何でもなくて、税金で整備される部分が入ってますからね。
櫻井 計算そのものが、官僚の作文の結果という気がします。道路公団の今までの事業は、どの道路も当初予算より約3割増えています。だから、これだけで収まるという官僚の数字は信じられない。
再生の鍵を握るのは何か
近藤 最近の公団の努力、凄まじいものがありますよ。建設経費も管理経費も相当努力してます。
私、着任してすぐに職員の皆さん全員に、生産性の向上、経費の削減、アイデア何でもいいから、出してくれとお願いしたんですよ。そしたら、1週間ぐらいで何と4,600件出てきた。
櫻井 不満が溜まっていたんですねえ。
近藤 だから、みんな思っていたんだ。これだけ改善したいと思っていたんです。
櫻井 どれだけ生ぬるい中でやっていたかということにもなりますわね(笑)。
近藤 過去のことは、まあ、いいじゃないですか。
櫻井 じゃ、そうしましょうか。でも、近藤さんもびっくりなさったでしょう。こんな状況だったのかって。
近藤 いや、これからいけると。それで、その4,600件のフォローを、組織を作ってパシッとやっています。
櫻井 どんなアイデアが出たんですか。
近藤 これは大から小まで。大は契約方式の見直し、人事制度の問題とか、小さいものは文房具の買い方、コピーのとり方とか…。
櫻井 公団の全職員を近藤さんがいらした伊藤忠に見習いにやったらどうですか。
近藤 いやいや、伊藤忠でもなかなかやることが多くて大変ですよ、大企業病を治すのは本当に大変。だけど、公団病というのもあるんです。
ご承知のとおり、今、日本経済の国際競争力というものが問題になってますが、足を引っ張る要素の一つは国内の輸送経費なんです。高速道路は、物流について言えば、海運と並んで大変重要な地位を占めているんですね。ですから、我々が料金を下げるということは国内の流通経費を下げていく、国際競争力をつけてもらうことに貢献できるんです。だから、我々としては生産性を上げ、それを料金に還元して経済を活性化しよう。経済が活性化すれば、我々のお客さんも増えますし、料金収入にもつながるじゃないかと。そのためには、より早く、より安全、より安く、より快適、より楽しく、そしてより便利。こういうことを今、8,500人いる職員、全員参加型で議論してもらってます。
櫻井 大変結構ですけど、一番基本的な大事なところが抜けていると思うんですね。旧国鉄の話を伺うと、国鉄時代にもサービス向上、より安くとかいろいろ言われたのですが、結局できなかった。民営化した時に初めて、スローガンを唱えなくとも、サービスが良くなり、適正利潤を上げて、利子を払い、借金を返して、社員の給料を払って、全てが上手くいったのです。
それと総裁、人事もなさいましたね。あの人事を見て、やる気があるのかと、正直思いましたよ。理事のポスト、国交省の方の後釜には国交省、財務省の後釜には財務省から来ましたね。国鉄の例を見ても、中曽根さんは国鉄の仁杉総裁はじめ8人の理事の首を切った。その時から国鉄改革は具体的に動き出したのです。
近藤 今、動いていますよ。
民営化までに、幹部人事を今後1回ないし2回はやりたいと思っていますが、今回は、その第1回目ですね。
櫻井 あれは、本当の人事じゃなかったのですか。
近藤 過渡的なものです。
櫻井 “過渡的な人事”ですね。
近藤 ええ。今はまだ公団ですから、依然として国土交通省の下部組織です。これは厳然たる事実ですから。
櫻井 でも、あなたは小泉首相に見込まれてなったのでしょう。下部組織なんて、小泉さん泣きませんか。
近藤 いや、僕は法律上の立場を申し上げているんです。
櫻井 心はどうなんですか。
近藤 心は新会社です。
櫻井 じゃあ、もっとシャンとしてほしい。
近藤 シャンとしているつもりなんですけど。なかなか厳しい評価なんでね。
櫻井 期待するからです。
近藤 いや、随分シャンとしているつもりで、本人はやってるんですよ。それでね、今度の人事も、これから2回ぐらいやることになると思います。それで、一番重要なのは、民営化の時の人事です。これに向けて、きちっとやります。
櫻井 今法案をつくっている時の人事こそ、とっても大事です。
近藤 そうなんですよ。
櫻井 改革派で左遷された片桐幸雄さん(注:昨夏『文藝春秋』誌に道路公団のあり方を告発した手記を掲載した)はそのままですか。
近藤 藤井前総裁が片桐氏と文藝春秋を訴えました。公団は取り下げの手続きをしています。文春が同意すれば、片桐さんの人事もできるのです。
櫻井 近藤さんは改革の旗を持って、先頭を走る位置におられるのに、あらゆる面で踏み込み不足です。決意も覚悟も手法も足りない。国交省道路局や族議員に取り込まれてしまわないかと大変心配です。
近藤 最善を尽くしてやります。これは私自身、長期戦だと思っているんです。
櫻井 何年間、総裁をしてらっしゃるおつもりですか。
近藤 それはわからない。
櫻井 だって、長期戦と仰るから。
近藤 私にとっても、国民にとっても長期戦だと思ってるんですよ。新会社ができてから、まずは10年間が勝負だと思ってます。やっぱり民営化してよかったという雰囲気をつくれるかどうか。これによって、10年後の見直しの命運が決まってくる。そういう意味で、非常に厳しいご意見、今日伺いましたが、それを励みとして、頑張ってまいりたいと思います。
櫻井 どうぞ、お励みあそばせ。