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2003.09.13 (土)

「 官僚の悪知恵いまだ“健在” 独立行政法人トップの大半が天下りという実態を見よ 」

『週刊ダイヤモンド』 2003年9月20日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 510回

選挙で選ばれた国民の代表である政治家が改革を叫んでも、この国は変わらない。国民の代表でもない官僚機構が居座り、お手盛りで自らの利益を計ることに異常な執着を見せるからだ。

9月7日の「毎日新聞」の報道はその一例である。小泉純一郎首相の目玉政策である特殊法人改革で、廃止される特殊法人に替えて10月に発足する独立行政法人のトップのうち、4分の3が天下り官僚によって占められるというのだ。

「特に総務、財務、農水、経産、国交5省が所管する法人は全員が前身の特殊法人トップからの横滑り」と「毎日」は報じた。

小泉首相は天下りを是とせず、官邸主導で人事を行なうとしたが、その言葉はまったく実行されていない。

2001年4月に独法化された57法人も、改革とは名ばかりである。民主党政策調査会の調査によると、57法人の役員数は、独法化以前の90人から、267人へと約3倍に増えた。理事長と常勤理事のポストは145に上り、じつにその97%が天下り官僚によって占められている。

理事長就任者のなかで、純粋に民間から登用されたのは、一件のみである。前組織からの横滑りや、新たな人物が理事長に就くにしても、圧倒的に天下り官僚なのだ。まさに官僚たちの焼け太りである。

独立行政法人の理事長および理事の給与は驚くほど高い。旧特殊法人から横滑りする場合、彼らはまず退職金を得る。平均は5236万円余だ。新ポストの年収は、バラつきはあるが、2000万円前後である。2年間で退職し、別法人に行く際は、新たに約1000万円の退職金を受け取る。加えて、独立行政法人通則法によって兼職を原則禁止とされているにもかかわらず、現実には、彼らの約42%が兼職である。

民間企業に較べると、官僚が手にする特権の大きさと、収入の高さがわかる。しかも、これら独立行政法人はほとんど独自財源を持たず、運営費交付金という名の税金で支えられている。

他人(国民)のおカネだから、痛みもなく潤沢に使えるのである。旨みの多いポストであるから、決して手放そうとしない。彼らは国民を騙(だま)してでも、大臣を騙してでも死守しようとする。

菅直人氏が厚生大臣だったときだ。薬害エイズが生まれた一因に、官と業の結び付きがあったとの反省から、菅大臣は、一定ポスト以上に就いた官僚の関連業界への天下りを自粛すると発表した。会見の場で、記者たちは尋ねた。「当面」とはどの程度の期間かと。菅大臣は「当面」の二文字はないはずだと答えたが、取材陣に配られた資料には、「当面」の二文字があった。

当時の厚生官僚が、「当面」の二文字を抜いた大臣用の資料と二文字入りのマスコミ用の資料を用意し、大臣もマスコミをも騙そうとしたのは明らかだ。舌を巻く悪知恵と卑怯な精神。現在進行中の独法化への移行に伴う人事を見れば、官僚の心根は変わっていない。

こんな利己的な集団はどのようにして生まれたのか。『武士の家計簿』(新潮社)で、著者の磯田道史氏が興味深い観点から説明している。明治維新で誕生した官僚群の俸給の高さは、それ以前の江戸時代の武士階層の厳しい自律の精神からほど遠かったと。

人の上に立つ者として、草履(ぞうり)取りよりも金銭がままならない清貧に耐えた武士たち。彼らが治めた優れた文明を持つ江戸社会は、利己的な遺伝子の塊のような、新たに台頭した支配階級によって否定されていった。新支配層は旧弊の打破に熱心ではあったが、旧社会の美徳を、厳しい自律の精神も含めて否定し、権力の放恣(ほうし)に埋没したのだ。治める者の責任感と自律を欠く現代官僚社会は、明治維新で生まれた新支配層のお手盛り族以来のものだ。小泉首相は自民党を“ぶっ壊す”と言って橋本派を壊した。次は、官僚制度だ。

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