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2003.07.19 (土)

「 『平成の大合併』推進に住民投票で一石を投じた福島県下の合併案白紙撤回 」

『 週刊ダイヤモンド 』 2003年7月26日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 503回

総務省がアメとムチを使い分けながら強力に推進している市町村合併は、どれだけ地域住民に支持されているのか。現在約3250の自治体を約1000にまとめたいとする「平成の大合併」に一石を投ずる住民投票が、7月13日に福島県で行なわれた。

その結果、福島県内で合併協議が最も進んでいた3町村の合併が白紙に戻された。3町村は棚倉町、塙町、鮫川村である。これらの町村は、全国で真っ先に「合併しない宣言」を出した矢祭町と歴史的に深いつながりを持ち、久慈川と阿武隈山系に抱かれた、緑豊かで水の美しい県南地域にある。

早ばやと「合併しない」と決めた矢祭町とは対照的に、上の3町村は2002年7月15日、福島県内で初めて法定合併協議会を設置し、準備を始めた。協議会は、最初に合併ありきではなく、合併の是非も含めて検討するとされたが、48項目の協議事項のうち45項目まで合意され、協議会は、合併実現の大目的に向けて着実な歩みを重ねてきていた。

そして行なわれたのが、週末の住民投票だった。地元の識者が語った。
「協議会は最終的な住民の支持を得て、合併をより強固なものにするつもりだったと思います。ところが、3つのうち2つの町村で、反対が大勢を占めた。予想外の結果だったのです」

地元紙はそれぞれ社説や解説で、この結果がもたらす県内の他市町村合併への影響は強いと指摘するとともに、全国の合併に向けての流れは変わらないとの見方を示した。

そのとおりである。いったん「平成の大合併」と目標を定めたからには、総務省は中央省庁の権威や地方交付税の力をフルに使い、合併の流れをつくろうとする。その“力”が、地方自治や分権の本来の姿とどれほどかけ離れていようと、まったく意に介さない。

だが、実際に合併問題に直面している市町村とその住民たちは、多くのことを考えざるをえない。合併で住みよくなるのか、故郷は守られるのか、などさまざまな思案のすえに、今回は人口が最も多かった棚倉町のみの賛成、残る2町村の反対となったのである。

矢祭町の根本良一町長は、各自治体で状況が異なるため、一般論では論じ切れない面が多いとしたうえで、矢祭町のケースについて語った。
「私どもの町は、昭和28(1952)年の町村合併促進法を機に、合併されてできた町です。当時、主として役場の位置や合併後の村名をめぐって、非常に烈しい対立が生じてしまいました。境界線、分町などをめぐって、文字どおり血の雨が降らんばかりの事態となったのです。現在も、その当時の傷は完全に癒されてはいないといえます」

根本町長は、過去を振り返れば、この傷を癒すことが先だと言う。将来を展望すれば、辺境の自治体であればあるほど、大合併は自治権を奪い取っていく。役場は支所となり、職員もせいぜい一割程度に減らされる。矢祭町の各種料金は郡内では断トツに安いが、これも、合併市町村のなかで最も高い料金に合わせざるをえなくなるというのだ。

「住民の生活を考えれば、矢祭は合併しないのが最善の選択です」
合併しない場合の地方交付税の減額も考えて、矢祭町は自己努力を重ねてきた。“小さな役所”がその第一である。来年の選挙では、現在18人の町議会議員定数が一気に10人に減る。町役場の職員は、以前は109人だったが、86人まで減った。議員や職員だけに求めるのでなく、先月は町長、助役、収入役、教育長の年収を、総務課長と同額の826万円に減額すると決定。今月から実施する。

「わが身を切っても、自治のために頑張るよということです」と根本町長。総務省のアメに誘われず、自ら考え、工夫するその姿は、すがすがしくも、潔い。

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「 『平成の大合併』推進に住民投票で一石を投じた福島県下の合併案白紙撤回 」

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