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2002.06.24 (月)

「 それでも日本の元外交官か 解せない中江氏の総括論文 」

『週刊ダイヤモンド』 2002年6月29日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 451回

6月8日の「朝日新聞」に、中江要介元駐中国大使が寄稿した。

「瀋陽事件 独断と偏見目立つ報道も」と題された論文は、日本の元外交官としては驚くべき内容である。氏は「外務省で40年余仕事をした者として」瀋陽事件を「総括」するとの書出しで、7項目の主張を展開。まず、瀋陽の日本総領事館に5人の北朝鮮亡命者が駆け込んだ様子のビデオ撮影を非難した。

「外国公館の目と鼻の先で公館出入者を盗み撮り」と書き、謗(そし)りは免れえないという。中国がこの「非礼」に対して、今後、亡命者支援組織を厳しく取り締まることを検討するのは「当然のことである」というのだ。

また「盗撮映像」から見る限り、中国警察官はウィーン条約に定められた「責務を遂行している姿と見るのが自然」だともいう。氏は「盗み撮り」あるいは「盗撮」という言葉を計4回繰返し使いつつ、映像は警察官が「亡命を阻止している姿と決めつけるのは」「論理的に説明がつかない」と理解を超えた中国擁護論を展開する。

さらに、「中国警察官は、(中略)言わば“勇み足”により館内に立ち入って条約違反を犯した」のだそうだ。だから「不可侵権侵害の意図があったものとは思われない」、この点は「弁(わきま)えておく必要がある」と、あくまでも中国は悪くないという主張である。

小さな子どもをおぶった母親が地面に引き倒され、子どもが投げ出され、女性たちは泣き叫び逃れようとする映像のどこを見て、中江氏は「公館を侵入又は損壊から保護するため」の「適当な措置」だったというのであろうか。

「勇み足」で公館に入り、力ずくで女性2人と幼子を押し戻し、引っ張り倒した映像を撮ったことを「非礼」と非難するのは、あの映像を世界に配信されて面子をつぶされたと怒る中国政府の主張そのものだ。あるいは、「2人の女性が武装警官との揉み合いを仕掛けた」と、堂々たる虚偽を主張する中国とピッタリ重なる主張である。

中国政府は、あまりにも恥ずかしい粗野で人権無視の中国の姿を国民に見せることもできず、国内ではこの映像を流さなかった。だが、海外のメディアまでコントロールすることはできず、広く配信された自らの姿を恥じるよりも、日本に責任を転嫁したのだ。中江氏が中国政府の一員なら、氏の主張は当然であろう。が、解せないのは、氏が日本の元外交官であることだ。

中江氏や中国政府は、瀋陽事件に関して日本政府を責める。中国の対処策は正しかったという主張を、彼らは6月13日の事件のあとも保つのだろうか。同日午前、北京の韓国大使館に北朝鮮の父子2人が亡命を求めて駆け込んだ。父親は韓国領事部の敷地から中国の警備員に引きずり出され、公安当局に強制連行された。韓国大使館の外交官らは連行を阻止しようと中国の公安警察と揉み合い、負傷までした。

多くの日本人はこれを見て、瀋陽の日本外交官の対応とあまりにも異なる対応に、切歯扼腕の想いをしたに違いない。この件で中国が何を主張しようとも、日本国民はもうあまり驚かないはずだ。瀋陽のケースで中国の真っ赤な嘘は体験済みだからだ。しかし、中江氏が同様の主張をするのはどうしても解せない。それでも日本の元外交官かと考えてしまう。

このような人材がいかにして外交官となり、日本の国益を“40年余”の長きにわたり担う立場に立てたのか。中江氏を含む、世にいうチャイナスクール外交官のあまりにも中国寄りの姿勢はどこから生まれてくるのか。折しも外務省では、改革委員会が議論を重ねつつある。細かい枝葉の事柄よりも、国家を代表することの意味をとらえ、国益についての思いを育む作業を重ねてほしいものだ。

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