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2002.03.11 (月)

「 鈴木宗男氏の国民への“本当”の罪は北方領土問題でのロシアへの譲歩 」

『週刊ダイヤモンド』 2002年3月16日号
オピニオン縦横無尽 437回

川口順子外務大臣の指示で行なった鈴木宗男氏と外務省の癒着の実態調査結果が3月4日に発表された。

注意してよく読むと、非常に多くのことが見えてくる。たとえば、鈴木氏が「1997年9月に北海道・沖縄開発庁長官に就任したが」「同年末から、同議員が北方四島住民支援への関与の度合いを深めていった」というくだりである。

北方四島住民支援はすなわち、日本の北方領土政策である。鈴木氏が先のポストに就いたのは橋本改造内閣のときだ。そのときから、日本の対ロシア外交は突然おかしくなっている。

97年11月に橋本首相はクラスノヤルスクでエリツィン大統領と首脳会談を行なった。この会談に先立って橋本氏は「領土問題について勝者も敗者もない解決」を目指すと経済同友会の演説で語った。ロシア側はこの発言に日本側の政策転換の兆しを嗅ぎとり、以降、巧みに日本を揺さぶり続けていくことになる。

日本固有の領土の返還を迫るのは、日本にとっての当然の権利である。にもかかわらずロシア側に大幅に譲歩した橋本発言は、外務省内のロシアスクールの一部の意見を反映させたものだった。日本の対ソ対露外交は四島一括返還、政経不可分に基づいてきた。だがベルリンの壁の崩壊後の80年代末から日本政府は「一括」の主張を後退させ、政経不可分も強調しなくなった。するとどうなったか。

外務省元ソ連課長で杏林大学教授の新井弘一氏が語る。「ソ連側が逆に政経不可分を主張し始めたのです。領土問題の進展のために、もっと経済支援せよというのです」。外務省内にも同調者が出てきた。橋本氏の発言もクラスノヤルスク外交も明確にその延長線上にあった。この橋本外交を新井氏は「戦後最大の失敗作」と呼ぶ。

橋本外交は小渕外交、森外交へと引き継がれる。日本を代表する政治家たちは、いったいどこまで自らの口にする外交政策の意味を把握していたのか。

表舞台の裏で日本外交の骨格と方向を決定づけていくのが官僚である。その外務官僚への支配を鈴木氏は確実に強めていったわけだ。そのプロセスのなかで日本の国益が損なわれていった事例は、外交の専門家でもない私の耳にさえ、聞こえてきた。日本の国益を喰いつぶす鈴木氏の“声”である。

たとえば、氏が従者のように付き従う野中広務氏は、2000年7月27日に領土問題と友好条約締結交渉を並行して行なうことも考えてよいのではないかとの内容の発言をした。国際政治の常識でいえば、領土問題の解決がつかなくとも、経済援助を含めて交流を拡大させてもよいではないかという意味にとられてしまう発言だ。

ロシア側にとってはこれ以上の好条件はない。逆に、日本にとっては国益を損ねる発言で、長年日ソ日露外交に心血を注いできた人びとは電流を流されたような衝撃を受けた。

しかし、東郷和彦欧亜局長(当時)と川島裕事務次官(当時)はいずれも野中発言を「重く受け止める」と発言した。これまでの長い戦後の交渉と先輩外交官の努力を無に帰し、明らかに日本の国益を損ねる発言に、外務省幹部たちはなぜ、なんの留保も批判も加えずに、了とするとしたのか。

鈴木氏がそうせよと命じたからである。氏は野中発言直後に外務省に電話をして、コメントするならそのように言うべしと指示したのだ。

こうした日本側の発言は、ロシア側首脳たちの発言によって支持されていく。まるで日本外交はロシアのためにあるかのような状況が生まれていった。鈴木氏が責められるべきは単なる地元企業への利益誘導のゆえではなく、北方領土の売渡しにも等しい、日本国と国民への背信行為ゆえなのである。

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「 鈴木宗男氏の国民への“本当”の罪は北方領土問題でのロシアへの譲歩 」

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