「 集中審議で再確認した鈴木宗男氏と田中前外相の“いかがわしさ” 」
『週刊ダイヤモンド』 2002年3月2日号
オピニオン縦横無尽 435回
2月20日の衆院予算委員会の集中審議は、いくつかのことをあらためて確認させてくれた。
まず、鈴木宗男氏のいかがわしさだ。共産党の佐々木憲昭議員が外務省の内部文書「国後島緊急避難所兼宿泊施設メモ」なるものを示しながら問うていた。地元で「ムネオハウス」と呼ばれる宿泊施設の工事の入札資格を「根室管内(の業者)に限定すべきだ」と鈴木氏が外務省に指示したというのだ。
佐々木議員は以下のような生々しいやりとりがあったはずだと問いつめた。
「道東ならいかがか」(外務省)
「やはり根室管内だろう」(鈴木氏)
予算委員会集中審議の会場はここでどっとどよめいた。根室管内といえば鈴木氏の地元である。地元の業者しか入札できないということだ。事実この工事は地元の業者が請け負った。あまりにもあからさまな地元への利益誘導の要求に外務省側も戸惑ったのだろう。そこで少し範囲を広げて、せめて道東ではどうかと外務官僚が尋ねたのだ。小腰をかがめるようにして尋ねたであろう官僚の姿が目に浮かぶ。審議でのこのくだりに期せずして起きた笑いは、こうした一連の光景が多くの人の脳裏をかすめ、鈴木氏ならば“さもありなん”と感じたからではないだろうか。
それにしても鈴木氏の海外での動きには、日本の国益という視点から、厳しいチェックが必要である。なぜ北方領土問題が“四島一括”から“二島先行返還問題”に後退したのか。1956年の日ソ共同宣言で歯舞、色丹の日本への返還が決定され、93年には日露共同宣言で、エリツィン大統領が北方領土問題は二島ではなく四島問題で国後、択捉、歯舞、色丹であると、固有名詞まで明記した。それが今では歯舞、色丹はともかく、国後、択捉についてはその帰属について交渉するという線にまで後退した。
この後退に、鈴木氏がどこまで関与しているのか。外交資料を開示し、説明する義務と責任があるはずだ。国会は、国益をかけて調査すべきである。
集中審議からは一方の田中真紀子氏のいかがわしさもよく見えてきた。田中真紀子という人は、本当に自身を振り返ることのない人なのだ。謙虚さに欠けるために、失敗から学び成長していくことができないのだ。小泉首相による野上義二事務次官と田中氏の同時更迭について、緊急事態に直面して小泉首相は適切な判断ができなかった、首相の判断は間違いだと批判した。
想い出すのは金正男が偽造パスポートで入国した時だ。北朝鮮の次の指導者かともいわれている人物の不法入国を調査もせずに“すぐに出しなさい!”と言って国外に出させたのが田中氏だといわれている。米国への同時テロでは、米国国務省の避難先をマスコミに喋ってしまった。
すでに幾度も報じられてきたこうしたことは、彼女自身が緊急時に適切な判断ができないことを示している。小泉首相に大上段から攻めかかるのもよい。しかし、そのことの前に、少しは自らを反省せよ。だが反省もなく田中氏は言うのだ。自分は外交をしっかりやったし、空白を招いたことはないと。
田中氏はまた、国会答弁などで嘘をつくことは許されないと語気強く述べた。嘘はいけない。当然である。だがこの点に関しても、彼女自身どれほどの“嘘”を重ねてきたことか。それもまた、これまでに報じられた事例から、いやというほどみてとれる。
真紀子氏の応援部隊長ともみられている平沢勝栄議員が語っていた。
「真紀子さんの貢献は鈴木さんの悪を表に出したことに尽きます」確かにそうだ。そしてこの一連の騒動のもうひとつの“成果”は、田中真紀子という人物を、決して国家の要職につける愚は二度と犯してはならないということが明らかにされた点だ。