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2001.07.16 (月)

「 米国のインド重視を日本の政治家は理解しているのか 」

『週刊ダイヤモンド』 2001年7月21日号
オピニオン縦横無尽 第405回

“予算案が与党の反対で通らないようなことになれば、私が自民党をぶち壊します”

“小泉改革に反対する自民党議員はいても一人かそれくらい。反対している人も(改革の主旨が)わかれば強力に後押ししてくれる”

小泉首相の威勢のよい言葉と、改革反対論者への巧みな誘い込みのメッセージが連日のように発信されている。圧倒的な世論の支持を背景に、自己責任と自律を欠いた社会主義国のような制度の改革に、首相は最大限のリーダーシップを発揮しているといえる。

内政についての首相の問題意識と方向性はきわめて鮮明だが、外交についてはどうしても心もとない点が見えてくる。先の訪米で日米関係の重要性を確認し合ったというものの、それは目前の課題を無難にこなしたという程度のものだ。ブッシュ政権下の米国は、明確にアジア政策の舵を切り換えている。米国のその戦略を読み、日本にとって何が最も重要かを察知して、準備を整えることが必要だ。

米国は昨年10月のアーミテージ報告で、日本に現在の米英関係に匹敵する対等な同盟関係を築こうと呼びかけた。続いて今年1月初頭、ザルメイ・カリザド氏が中心になって「米国とアジア ―― 米の新戦略と軍事配備」という報告をまとめ、発表した。カリザド氏はブッシュ大統領の特別補佐官兼国家安全保障委員会の上級部長である。

200数十ページにわたる同報告書は、アジアは過去20年間は比較的平和であったが、現在安定を脅かす種々の問題に直面していると説く。問題とは領土問題、核戦力の軋轢、台頭するナショナリズム、強化される軍事力などだ。これら諸問題に対処するための米国の戦略は、日本に加えてインドとの関係を密にしていくことだ。

報告書の描くインド像は以下のとおりだ。冷戦時代、インドはソ連に近かったが、冷戦終結後インドの安全保障の懸念は中国に向けられるようになった。インドの目ざすところは、国連の安全保障理事会の常任理事国入りであり、核保有国として国際社会に認めてもらい、NPT(核不拡散条約)の対象外でありたいと考えている。したがって「NPTの修正がなんらかのかたちで必要」かもしれないと、この報告は分析する。つまり、米国は核保有国としてのインドを認めるつもりなのだ。

米印双方にとって、共通の目的は明らかに中国の脅威に備えることだ。“世界最強の民主主義国と世界最大の民主主義国の結びつき”とインドの新聞が形容した両国関係の緊密化によって、経済大国としても軍事大国としても力をつけつつある中国に対処しようということである。

米国は現在、インドの知的人材の最大の受入れ国であり、育成国である。米国のハイテク産業に最高給で迎えられる人材を、インドは高度の詰め込み教育で育成し、彼らがさらに米国で学び働き、そして一部は帰国する。人材交流面で米印関係は急速に緊密化しているが、今や、米の国家戦略としてインドの重要性を打ち上げたのがこのカリザド報告である。

米国はインドが次世代の経済大国になる可能性に注目しており、なによりも中国とは異なって民主主義国である利点を高く評価しているのだ。

「国を開くことを恐れる必要のない政治体制」「豊かさの拡大が政治機構を損ねない国家体制」のインドを評価する姿勢は、そっくりそのまま、中国への批判だと解釈することができる。

このような米国の新戦略を説明しに5月、日本を訪れたアーミテージ国務副長官をドタキャンで退けたのが田中外相である。アーミテージ氏は日本を離れた足でインドを訪れているが、日本の政治家たちは、この米国の新戦略をどこまで理解しているのだろうか。

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「 米国のインド重視を日本の政治家は理解しているのか 」

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