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2001.04.23 (月)

「 政府は李前総統へのビザ発給問題を明確に説明せよ 」

『週刊ダイヤモンド』 2001年4月28日・5月5日合併号
オピニオン縦横無尽 第394回

どうやら日本政府は李登輝・台湾前総統にビザを出すことをようやく決めるらしい。らしい、というのは、19日午前現在、まだ正式な決定が出ていないからだ。

 病気治療で来日したいという人を、なぜ拒絶するのか、国際社会でも理解しかねているようだ。この騒動のさなか、香港在住の中国人の友人一家が東京にきた。彼らは夫も妻も文革当時は紅衛兵だった。やがて農村に下放され、農業労働に長年従事し、その後、ツテを頼って北京に復帰した人びとだ。

 東京に留学していたとき以来の友人で私たちの交遊はすでに20年近くになる。今、夫のほうは香港で電話会社、コンピュータソフト会社など数社を経営し、妻はそんな夫が家事をまったく手伝わなくなったと言いながら、子育てを楽しんでいる。

 この2人が口を極めて日本を批判したのだ。「なぜ李にビザを出さないのか。日本は弱腰すぎるよ。日本は、半独立国だね」。親しい友人であるだけに、彼らはなおも言いつのった。「これじゃ、アジアからも中国からもバカにされるよ」。

 彼らは日本滞在が長く、日本に親しみを抱いており、したがって以上の批判は日本を思うがゆえの批判である。だが、聞かなければならないこちら側の憤りは、やり場がない。中国人でさえも、なぜ発給しないのかという李前総統へのビザ問題は、日本の現代史を象徴する痛恨事となるだろう。

 台湾側で提出された申請書を、外務省本省は受理していないと言った。それを受けて福田康夫官房長官が「申請は行なわれていない」と記者発表したことは先週も触れた。

 これに対して15日、台湾で李氏自身が会見して「日本政府は嘘つきだ」と非難した。国民の大多数も国会議員の多くも、ビザは出すべきと考えているにもかかわらず、嘘つき国家の烙印を押されるのは耐えがたい。政府はこの際、このような不様な事態に陥った経緯を明らかにし、担当者には、きちんと責任を取らせるべきだ。嘘つきなどと言われることは、経済的な損失を受けることよりも、なお、国益を損ねる重大事なのである。

 それにしても河野洋平氏はおかしな人だ。陳水扁台湾総統が、台湾政府の「威信をかけて」李氏へのビザ発給を求めると発表したことについて、「私人にそこまでやるかなという気がする」と述べた。だが「私人」の李登輝氏に国家として絶対にビザは出さないという姿勢をとったのは、日本が先である。

 また橋本龍太郎氏も変な人だ。「日本は中国と政治関係を持つと決断した段階で、台湾とは政治関係を断った。(ビザ問題を)政治問題化しないでほしい」と述べた。これもまた、政治問題化させたのは日本のほうである。北京政府への思いから、台湾前総統を呼ぶことができずにきた日本のほうこそ、きわめて政治的だ。

 人間も組織も何が最も大切かといえば、第一に、自らへの信頼である。自らへの信頼は、自分自身の価値観を持つことから生まれてくる。今回の外務省の対応をみると、判断基準となったのは、明らかに他国の政府の意向である。常日頃、チャイナスクールの人びとが唱えているリベラルな寛い心とか、人道主義などの美しい理想が、まったく役に立たなかった。今回の件で最も強硬にビザ発給に反対したのは、河野外相、福田官房長官に加えて、官僚の槇田邦彦アジア大洋州局長だそうだ。

 この人びとにはぜひ心してもらいたい。中国との友好を願わない日本人はいないが、中国にコントロールされ、病気の人を助けることのできない日本を希望する日本人もおそらくいない。

 日本の立場を損ねた右の3氏に対しては、明確な経緯説明と責任をとることをお勧めするものである。

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「 政府は李前総統へのビザ発給問題を明確に説明せよ 」

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