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2001.04.16 (月)

「 李前総統にビザを発給しない非人道的な外交を糾弾する 」

『週刊ダイヤモンド』 2001年4月21日号
オピニオン縦横無尽 第393回

日本はなんという心の狭い小国か。心臓病のために来日ビザを申請した台湾の李登輝前総統に、外務省はビザを出さないというのだ。

 その理由が「ビザの申請書は受理していない」「申請書は提出されていない」というものだと、いう。この発言に、台湾の親日派までが大憤激している。

 李夫妻の代理となって申請書を日台交流協会の台北所長山下新太郎氏に手渡した彭榮次氏が語った。
「私は4月10日の午前中に、李夫妻の署名入りの申請書、お2人のパスポート、治療が必要であるという医師の診断書、日本でのスケジュール表の4点をそろえて山下氏にお渡ししました。外務省本省が『受理していない』というのは自由ですが、日台交流協会の台北所長のもとに、書類一式があるのです。台湾ではこういう状況は、書類は受理されたというのが普通 です」

 李登輝夫妻が書類のなかに入れた日程表には、東京に立ち寄る予定がまったく入っていない。政治の中心地である東京には立ち寄らずに、滞在は李氏が今回、手術をお願いしようとしている倉敷中央病院のある西日本のみに限られている。来日は病気治療が目的で、政治的意図はないというメッセージにほかならない。

 李前総統の病状は1999年の台湾地震のころから悪化したという。地震発生直後から被災地に飛び、現場で指揮をとり続けたことが、体に負担をかけ心臓を弱らせていった。その後、2000年の総統選挙のストレスも重なり、ここ1年ほどは、体調が非常によろしくないとのことだ。昨年11月には心臓病の世界的な権威である先述の倉敷中央病院の光藤和明医師を台湾に招き診察を受けた。冠状動脈狭窄の治療を受け、その時にステントが埋め込まれた。これは心臓に通 ずる大動脈を一時的に広げる効果を持つが、半年以内に本格的な手術をしなければならないとの診断だった。そして今、半年の期限が近づいているのだ。

 彭氏が語る。
「戦争のさなかでさえ、敵の軍人が傷ついたときには、治療を施すではありませんか。李さんは今、政界から退いた身です。民間人が病気治療で訪日したいというのを、なぜ、日本国は拒絶しようというのでしょうか」

 親日派の彭氏の憤りは、これまで常に信頼してきた日本が、なぜこんな非人道的なことを平気で行なおうとするのかと深い失望と背中合わせである。

 外務省側はアジア大洋州局長の槇田邦彦氏が、河野洋平外相の意を受けるかたちで強硬にビザ発給に反対し、官邸側では、福田康夫官房長官が強烈に反対の意思を示している。彼らは日中関係に悪影響を及ぼすのではないか、一度ビザを出すと、次からも「また来られてしまう」のではないか、米中関係が軍用機接触事故で緊張含みのときに、新たな李登輝訪日問題がどんなインパクトをもたらすか、予測がつかないと心配しているということらしい。

 しかし、この人たちは李前総統にビザを出さないことのマイナス面をまったく考えていない。第1に、病気の人に治療のチャンスと場所と技術を与えないのは非人道的である。日本が武力に頼らない外交を推し進めようというのならなおさら李前総統をお招きするべきだ。第2に、ビザを出さなければ、中国に、日本は強い力や言葉で押せば屈服する国なんだと、また確認させることになる。第3にそんな日本の姿を、誰が尊敬してくれるかということだ。第4に、河野、福田、槇田3氏らの反対意見は、国民の意見とは正反対だ。国会議員の大多数も正反対だ。ごく少数の偏った物の見方で、日本外交を誤らせ、日本の国益を損なうことがあってはならない。日本は病気の友人を、大国の怒りを恐れて拒絶する卑しい小国であってはならないのだ。

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