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2000.12.11 (月)

「 省庁再編を手がけた橋本氏は“巨人”総務省の監視に注力せよ 」

『週刊ダイヤモンド』 2000年12月16日号
オピニオン縦横無尽 第376回

第2次森改造内閣に橋本龍太郎氏が特命大臣として入閣した。担当は行革と沖縄と北方、いずれも氏が首相として手がけた課題だ。
 省庁再編がスタートする1月6日を直前にして、自民党内の紛争もあり、政治の主導性を高めるはずの省庁再編が、まったくその方向に行っていない。本来ならば、森首相がリーダーシップを発揮して、新省庁の幹部などを決めなければならないのだが、首相は、わが身を守るのに手一杯で新省庁の主なポストにまで心を配りきれないのだ。
 省庁再編の要のひとつは、政治を霞が関の官僚が主導する体制から政治主導に切りかえるための内閣府だ。そのために、現在3人の首相補佐官を5人に増やすことになっている。が、橋本行革案は当初、補佐官は10人と定めていた、と江田憲司氏は語る。氏は通産省出身で橋本首相の政務担当秘書官を務めた。それが、小渕氏と森氏の時に、5人に削られていたというのだ。
 補佐官の存在は霞が関の官僚たちが最も忌み嫌うものである。自分たちの所管すべき仕事を、自分たちの頭を越えて左右しがちであるからだ。また、補佐官人事は本来、政治任命の人材で占められるはずが、政治任命の動きはまだ出ていない。
 加えて、内政審議室、外政審議室、安全保障危機管理室などを廃止して、これらは官房副長官補がおのおのスタッフを抱えて首相を補佐する予定だった。副長官補も政治任命のポストであるはずだった。ところがこれも、いまは、官僚たちが自分たちの望む方向で人事を采配しているのだ。具体的には、これまでどおり、おのおのの室を担当していた外務、大蔵などの省庁のお役人のポストになっているという。
 省庁再編のもうひとつの目玉は総務省である。郵政省と自治省を軸にした巨大省は、おそらく、日本が浮き上がるか沈むかの運命を決する省になると思う。国民貯金255兆、簡易生命保険115兆に、地方自治体への交付税21兆の会わせて391兆円を一手に所管するまさに巨人省である。
 この圧倒的な資金が、いったいどう使われるのかが問題だ。これまでは財政投融資というかたちで、いったん大蔵省に任され運用されていた郵便貯金が、今度は郵政省の自主運用となる。しかも、貸付け先の大手である地方自治体も、自分の身内である。貸し手と借り手が合体してしまったからには、チェック機能はきわめて働きにくくなる。こんな不健全なかたちで、国民の税金が所管されるのだ。
 しかも郵政省の動きをみると、この人たちは、日本の金融制度を社会主義制度に移しかえようと、本気で考えているのではないかと疑ってしまうのだ。
 否、日本の金融制度は、すでに社会主義的金融だと、国際社会でいわれていることを考えれば、彼らが目ざしているのは、むしろ共産主義的金融制度かもしれない。こんな批判をせざるをえないほど、民間金融機関を圧迫して、郵便貯金は勢力を拡大しているのだ。
 郵貯と民間金融機関の提携は、デビットカード、CD・ATMオンライン提携を中心に飛躍的に伸びている。1999年の1月から始まった両サービスはこの2年弱のあいだに10倍20倍に、増えている。民間金融機関は、郵貯との関係が深まれば深まるほど自分たちの立場が不利になるとわかっていながら、そうしてしまう。郵貯の強大な力に太刀打ちできないからだ。
 省庁再編が、この郵政省の力を拡大する方向に働けば、日本の足を引っ張り、日本の経済を蝕むことになる。決済システムをみても、1000万円以上の貯金ができる郵便貯金法の抜け穴をみても、自体は悪い方向に向かっている。国民は、再編後の官僚支配、とりわけ、郵政省支配の監視に集中すべきだ。橋本氏は心して尽くせ。

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