「 蓮舫氏を都知事にしてはならない訳 」
『週刊新潮』 2024年6月20日号
日本ルネッサンス 第1102回
「蓮舫都政はNGだ」
「小池都政をリセットする、と決めゼリフは抜群だ。けれどその先に何があるかは全く分からない」
これは6月7日の「言論テレビ」で長島昭久氏と細野豪志氏が語った蓮舫氏の評価である。両氏は民主党、民進党の時代に蓮舫氏の身近にいて、共に活動したかつての身内である。蓮舫氏が都知事選に名乗りを上げた今、氏が民進党代表を務めていたときに離党して、のち自民党に合流した2人の政治家の蓮舫氏評には耳を傾ける価値がある。
蓮舫氏、立憲民主党、日本共産党の三者について、私たちは幻想を抱くことなく実態を知るべきだ。そこで両氏に尋ねた。なぜ、民進党と訣別したのか、と。両氏は安全保障政策についての蓮舫氏の考え方が離党の最大の理由だったと語る。細野氏が口火を切った。
「蓮舫代表、野田佳彦幹事長の下で私は代表代行を務めました。蓮舫さんが民進党の代表選挙に出るとき、支援する条件について、サシで彼女と話しました。➀共産党とは組まない、➁(安倍晋三総理が進めている)安保法制は現実的に進める、➂憲法改正もきちんとやる、の三点です。すると蓮舫さんはスパッと言った。『私は細野さんの考えと同じ』と。正直意外でした。でも本当にスパッと言ったので(信用しました)」
彼女は代表選挙で圧勝した。ところがその後何が起きたか。「私は細野さんの考えと同じ」という言葉とは正反対の路線を彼女は選んだのだ。細野氏が続ける。
「私との合意は完全に反古にされた。10人くらいで構成する党役員会で、私は本当に嫌になるくらい言った。衆議院選挙で共産党との共闘だけはやめてくれ、と。他の役員は皆、共産党と組むことに賛成で、私は孤立無援でした」
民進党のほぼ全体が「共産党との連携」を既定路線と考えていたというのだ。
「あれほどスパッと言った蓮舫さんが自身の言葉にどのくらいの信念を持っていたのか。正直、分からない」と細野氏は振りかえる。
「芸能界のノリです」
長島氏も語った。
「蓮舫さんが代表選に出ると決めたとき、私は支持できないとはっきり言いました。理由は彼女が『共産党とは手を切らない』と言ったからです。代表選において、共産党との選挙協力体制の継続を打ち出した。相前後して二重国籍問題も浮上した。それも支持できない理由でした」
長島氏が喝破したように蓮舫氏は共産党との共闘をはっきり掲げていた。それなのに細野氏には「スパッと」嘘をついた。細野氏は蓮舫氏の信念を疑うが、そもそも蓮舫氏に政策についての信念はあるのだろうか。国の在り方を決めるさまざまな政策について、彼女はどれほど熱心に、また深く研究しているのか。細野氏らは蓮舫氏ととことん政策論争をした記憶はないという。
「付き合いが長い割に、政策でしっかり話して事案に対する理解を深めたという記憶はないですね。予算委員会などでネタを共有したり、相談したようなことはあったかもしれないけれど……」と細野氏。
長島氏も「ないです」と断言し、「政策論を展開しようとすると、そんな馬鹿な話、やめなさいみたいなことを言われました」と苦笑した。
「ただ、蓮舫さんは野田グループにいてよく飲みに行きました。酒は強いし、座持ちはいい。芸能界のノリです」と長島氏が言えば、細野氏は「互いにからかったり、サバサバしているから根に持つこともない。まぁ、楽しくやっていた」と語る。
では彼女が都知事になったと仮定して政策は一体誰が考えるのか。
当然、共産党の影響は強いと考えるべきだろう。5月27日、党本部で出馬表明した後の写真で、彼女の右手には小池晃共産党書記局長以下、共産党の支援を受けて前回の都知事選を戦った宇都宮健児氏らが並び、左手に共産党との関係が深い元文部科学事務次官、前川喜平氏らが並んでいたが、象徴的な一葉だと感じる。長島氏が強い危機感を表明した。
「共産党はすでに『蓮舫さんを都政に押し上げよう』というビラまで作っています。立憲民主でさえ、まだこれ程の準備はできていないでしょう。共産党が如何に蓮舫都知事誕生を待ち望んでいるかということです。都知事選を制すれば、立憲民主、共産の各勢力は自ずと勢いがつきます。それが次の総選挙で立憲共産党政権として結実しかねない。かつての民主党政権は明確に共産党を排除していました。次にできる立憲共産党政権はまさに共産党が軸のひとつなのです。全然違う状況が生まれます。そのような政権の誕生を阻止するためにも我々は蓮舫都知事にNOとはっきり意志表示しなければならない」
「公選法違反の虚偽記載」
二重国籍問題についても長島氏はこだわる。
「民進党代表選挙が行われようとしていた16年8月に評論家の八幡和郎さんが蓮舫さんの二重国籍疑惑を提起しました。野党第一党の代表ですから、場合によっては首相になる。どんな国でも外国籍を持ち合わせている人物が首相や大統領になることはあり得ません。で、9月3日に蓮舫さんは読売テレビに出演し、『18歳で日本国籍を選んだ』とスパッと二重国籍を否定しました。ところがその3日後の6日、今度は本人が台湾代表処に確認中と言った。さらに1週間後の13日、台湾国籍が残っていた事実を公表したのです。13日は党員サポーターの投票締め切り日翌日でした。この間ずっと党員サポーターの投票は彼女の国籍問題を曖昧にしたまま、続いていたのです。私や松原仁さんは二重国籍の疑いが晴れていないので代表選を延期すべきだと主張しましたが、民進党はそのまま代表選に突入し、2日後の15日に彼女は代表に就任しました」
サポーター投票の締め切り日翌日まで事実を公表しなかったことに関して、自分の票を減らさないために公表のタイミングをはかったのではないかとの疑惑は当然残るだろう。
長島氏はもう一点、指摘する。
「04年に彼女は参院選に初出馬したのですが、選挙公報には『1985年、台湾籍から帰化』と記載しています。結果として虚偽記載だった。公職選挙法違反です。でもこの虚偽記載は時効で罪には問えません」
小池百合子氏の学歴詐称疑惑と蓮舫氏の国籍虚偽記載事件及び二重国籍問題、どちらがより大きく国益を損なうか。答えは明らかだ。
加えて蓮舫氏と共産党の結びつきの強さを考えれば、蓮舫都知事の先に立憲・共産による政権誕生もあり得ないわけではない。立憲民主党はその前身の民進党時代から共産党と協力してきた。共産党の影響は明らかだ。共産党が都政のみならず、国政の中心軸の一勢力となることを是とするわけにはいかない。従って結論は、蓮舫氏だけは都知事にしてはならないということだ。