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2008.11.27 (木)

「韓国の危機、中国が支配確立か」

『週刊新潮』’08年11月27日号
日本ルネッサンス 第339回

11月14、15日、ワシントンで開催された主要20ヵ国による緊急首脳会議(金融サミット)に併行して、日中韓財務相会合が開かれた。3ヵ国は、金融危機に際して互いに外貨を融通し合う「通貨交換協定」(通称チェンマイ協定)の支援枠を拡大することで意見が一致した。

チェンマイ協定は97年から98年にかけて起きたアジア通貨危機を教訓として、2000年5月に結ばれた。困ったときには外貨を融通し合って危機を防ごうというもので、外貨不足国と外貨余裕国の2国間での融通を原則とする。アジアにおいては、外貨不足国に融通出来るのは、日本と中国にほぼ限られる。そのため、同協定は、日本または中国が、アジア諸国をどの程度直接的に助けていくか、つまり、どの程度、直接的に影響を及ぼしていくことが出来るかという側面を色濃く宿している。

ちなみにチェンマイ協定で、日本は韓国に130億ドル相当のドルや円をウォンと交換して融通する枠を、中国は40億ドル相当の人民元を融通する枠組みを作っている。

一方、金融サミットに先立つ11月9日、李明博・韓国大統領は『毎日新聞』と韓国の『朝鮮日報』、英国の『タイムズ』3紙との会見に応じ、次のように語った。

「ドルの世界的地位は低下した。日中韓3ヵ国が単一通貨に合意すれば、アジア(全域)に広げるのは難しくないだろう。日本の役割は大きい」(『毎日新聞』11月11日朝刊)

韓国は米国発の金融危機で、自国の外貨準備が揺らいでいると見られる。各国政府が保有する外貨は、貿易黒字によってもたらされるだけではない。他国から借りて外貨を積み上げる場合もある。韓国の場合、2,600億ドルの外貨のうち貿易黒字で稼ぎ出した「真水」は約6割にとどまるといわれる(『日本経済新聞』2008年2月18日、「黄信号点灯、韓国の経常収支」鈴置高史編集委員)。

とすれば、危機に直面して使える外貨は、約1,500億ドルということだ。だが、韓国の外貨準備のうち、約500億ドルがファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)に投資されていたとの情報もある。事実であれば、500億ドルは失われたも同然だ。

再びIMF管理下の危機

このような状況の下で、韓国政府は10月末に米国政府と300億ドルのスワップ協定を結んだ。米韓の中央銀行が300億ドル分のドルとウォンを互いに預け合い、自国の通貨を安定させるために使うというのだ。この場合はウォン安定化のためにドルを使うという意味だ。韓国政府はこの300億ドルのスワップを必要とするところまで外貨不足に陥っているということでもある。

ドルの地位は低下した、日中韓でアジア統一通貨を考えるべきだという李大統領の先の発言は、大統領が、米国とのスワップに頼りながらも、他に危機打開の道はないかと模索中であることを示す。その際に気になるのが、アジアの統一通貨に関する発言である。

世界中が米国発の金融危機の影響を受ける中、韓国経済への打撃の度合が他国に較べてより深刻であることは、株価や通貨の下落率をはじめとする一連の数字が示している。

サブプライムローン問題が炸裂する前、IMFはすでに「韓国は97年の通貨危機以来、11年振りに経常赤字に陥る」と予測していた。9月末にサブプライム問題がはじけ、世界経済が一変、そして現在、専門家のなかには韓国が再び、IMFの管理下に入らざるを得ない可能性を指摘する声もある。

そうした中で、韓国をはじめとするアジア諸国にはIMFに対する否定的な感情が強い。アジア通貨危機のとき、確かにIMFは融資をしてくれたが、その見返りにこれ以上ないほどの緊縮財政を求めたり、厳しい自己犠牲を要求したからだ。出来ることなら、二度とIMFの管理下に入りたくないと、韓国政府や国民が考えるとしてもおかしくない。

IMF体制とは、ドルを基軸通貨とする体制である。だが、李大統領が明言したように、ドルはその地位を低下させつつある。事実、基軸通貨としてのドルを活用せずに、勝手に自国通貨で決済し合う試みが、諸国間に広がっている。

中国が狙う韓国の経済支配

イランは07年9月から、原油取引はドル以外の通貨でなければならないと定めた。ドルを締め出すことで米国の影響力を排除しようというわけだ。中国とロシアは今年10月末、2国間貿易の決済には、段階的に中国人民元とルーブルを増やしていくと合意した。ブラジルとアルゼンチンもまた、今年10月3日から2国間貿易の決済にドルではなく自国通貨を使う制度を導入した。サウジアラビアなど産油国で構成する湾岸協力会議(GCC)は2010年の統一通貨結成を目指している(『毎日新聞』11月11日朝刊)。

こうした動きは、米国の力の相対的な衰退と、米国に対抗する勢力の台頭に弾みをつける。アジアにおいては、明確なる中国の台頭である。

その意味で、李大統領が語った新たなアジアの共通通貨構想は、アジアにおける米国の排除と中国支配の強化につながりかねず、日本としては要注意で見詰める必要がある。

李大統領は米国との300億ドルのスワップ協定に続いて、日中政府と各々、30億ドル、40億ドルのスワップ協定を模索中である。こうした措置によって、韓国が、重症と言ってよい金融危機を脱することが出来たとしても、韓国経済の窮状は尋常ではない。その韓国を、虎視眈々と狙っているのが、中国共産党である。

中国問題の専門家が語る。
「中国は韓国の危機を千載一遇の好機と見ています。窮地に陥った韓国企業を、その価値がどん底に落ちたときに買い取ろうというわけです。政府が前面に出て資金を融通すれば、韓国国民は感謝するどころか反発することを、中国は日本の事例で学んだのです。98年の韓国の金融危機で100億ドルも融資した日本を金泳三大統領が悪し様に言ったのが一例です。そこで中国は、援助して恨まれる政府ベースの援助よりも、民間の形をとって、韓国経済を事実上、中国の支配下におく道として、韓国の有望企業への資本注入、買収を考えているのです」

人民元をアジアの基軸通貨に押し上げるさまざまな仕掛けを作りつつ、韓国の危機に乗じて、巧みに韓国への経済支配を強めていくべく、中国は状況を眺めているのだ。主要企業が中国資本の手に落ちれば、韓国、北朝鮮は中国に支配される。

日本は何をすべきか。いま、世界最強の通貨は円である。日本はIMF、ドル体制を支えつつ、韓国へのきめ細かな支援を進めることだ。また、日本経済への中国支配を防ぐために、円基軸通貨体制構築の戦略を立てることだ。

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