「 加計問題巡る首相への「嘘つき」批判 重要政策の反転こそ天に唾するものだ 」
『週刊ダイヤモンド』 2018年4月21日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1228
4月10日、「朝日新聞」が朝刊1面に「加計巡り首相秘書官」「面会記録に『首相案件』」の見出しを掲げて報じた。3年前の2015年4月2日、愛媛県及び今治市の職員と加計学園の幹部が(首相官邸で)柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面会し、その際柳瀬氏が「本件は、首相案件」と述べたというのだ。
4月11日、国会では右の「職員メモ」を巡って激しい質問が飛んだ。「希望の党」代表の玉木雄一郎氏は、安倍晋三首相を「嘘つき」と批判した。
尋常な批判ではない。安倍首相が、「嘘つきと言うからには、その証拠を挙げていただきたい」と反論したのは当然である。こうした国会の状況を、前愛媛県知事の加戸守行氏は憤りを込めて批判する。
「加計学園獣医学部新設問題の本質をなぜ見ないのでしょうか。岩盤規制を切り崩そうとした安倍政権と、それを守ろうとした文部科学省や日本獣医師会の闘いだったのです」
中村時広愛媛県知事は冒頭のメモは確かに県の職員が作成したもので、自分は職員を信じていると述べた。一方県庁の役人に「首相案件」と述べたとメモに書かれた柳瀬氏は、これを明確に否定した。「朝日」に寄せた氏の反論のポイントは以下の通りだ。
●2015年4月当時は50年余りも新設が認められていなかった獣医学部の新設をどうするかという制度が議論されており、具体的にどの大学に適用するかという段階ではなかった。
●実際、その後「石破4原則」が決定、具体策の検討が開始された。
●翌、16年11月に獣医学部新設が国家戦略特区の追加規制改革事項として決定された。
●具体的地点(大学)の選定は自分が首相秘書官の職を離れてかなり時間が経って始まった。
●従って、自分が(15年4月段階で)首相案件だという具体的な話をすることはあり得ない。
獣医学部新設を申請していた当事者の加戸氏は次のように語る。
「私たちは政府に獣医学部新設を15回も申請して15回全てはねられた。内5回は、安倍内閣によってはねられたのです。安倍さんに『首相案件』だという気持ちが少しでもあれば、加計学園の獣医学部新設はもう何年も前に実現していたはずです。加計学園が獣医学部新設を認めてもらえたのは、国家戦略特区諮問会議に民間の有識者が委員として参画し、彼らが既得権益にしがみつく獣医師会と文科省の抵抗を打ち砕いたからです」
諮問会議は一連の審議には一点の曇りもないと発表している。では「職員メモ」をどうとらえればよいのか。加戸氏の説明だ。
「面会日は2日、メモ作成は4月13日、実際の面会日の11日後です。記憶に基づいて作成したことがうかがえます。実際の会話のニュアンスがどの程度正確に反映されていたかも考える必要があります。柳瀬氏は否定しています。私も官僚でした。その体験から考えて、柳瀬氏はどぎついことなど言っていないだろうと思います」
この職員メモには下村博文氏が、安倍首相、加計孝太郎氏と食事をした際に語ったとされる言葉も出てくる。それを下村氏は「迷惑だ」と否定した。
「『職員メモ』には首相や加計氏と私が三人で食事したと書かれていますが、そのようなことは一度もありません。従って発言もありません」
玉木氏らは首相を「嘘つき」と国会で非難したが、玉木氏以下、全員が、小池百合子氏の下に走ったとき憲法改正にも安保法制にも賛成すると誓約した。いま彼らは民進党に戻る中で、これら重要な政策について再び反転しようとしている。もしそのようなことが現実となるならそれこそ、「嘘つき」であろう。玉木氏の首相非難は、まさに天に唾するものであろう。