「 事実を伝えないメディアの責任大きい 韓国の重大事態から日本が学ぶべき教訓 」
『週刊ダイヤモンド』 2017年10月21日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1203
小池百合子氏が選挙戦の最前線で、安倍晋三首相への非難を強めている。小池氏の安倍非難にちりばめられているのが「モリ・カケ問題」「お友達だ、忖度だ」などの言葉だ。
かつての盟友も何のその、氏はあけすけな批判を繰り返すが、本当に森友学園、加計学園問題で安倍首相が「お友達」に便宜をはかり、優遇したと思っているのか。だとしたら、政権与党で閣僚などの重要な地位にあり、いま東京都知事としての重責を担う割には、氏の情報収集・精査能力には重大な欠陥がある。「モリ・カケ」問題で安倍首相が個人として関わった事実のないことはすでに明らかだ。前愛媛県知事、加戸守行氏らの陳述を読めばよくわかるはずだ。
それにしても、聡明なはずの小池氏をはじめ少なからぬ人々、とりわけテレビのワイドショーをよく見る人々がモリ・カケ問題で安倍首相への疑惑を払拭しきれないとしたら、それはメディア側の責任も大きい。事実を伝えないメディアがいかに人々の判断を狂わせ、国を揺るがすか。韓国で発生した重大事態が示している。
「統一日報」が10月12日付で、「タブレットPCは私が使った」という記事を1面トップで報じた。
タブレットPCとは、朴槿恵前大統領弾劾の引き金となった「物証」で、反政府報道で知られるテレビ局、JTBCが昨年10月にスクープした。JTBCは、このPCは朴氏の女友達、崔順実氏の所有物で、崔氏が朴氏の演説の草案などに修正を加えていたことが明らかになったなどと報じた。
報道の翌日、韓国の検察は、PCには大統領による不正行為の「証拠が満ちていた」と発表、この時から朴氏と崔氏の関係に非難が集中し始め、「スキャンダル」が暴かれ始めた。事件が崔氏の逮捕、朴氏の弾劾及び逮捕へ、さらに文在寅政権の誕生につながったことは周知のとおりだ。
ところが、このPCは崔氏のものではなく、朴政権の事務局でSNS業務を担当していたシン・ヘウォンという女性のものであることが、本人の記者会見によって明らかにされた。シン氏の主張が事実なら、朴氏弾劾は根拠を失い、大統領選挙もやり直しが必要となる。それにしてもなぜシン氏は1年も過ぎてから事実を公表したのか。彼女は次のように語った。
「昨年12月から、(朴氏非難に使われているPCは)自分のPCではないかと、疑惑をもっていた。しかし、検察が実物を公開しなかったために確認できなかった」
ところが検察が、問題のPCの内容についての報告書を公開したのだ。その中にシン氏や当時の閣僚の写真があり、それでシン氏は自分の使っていたPCだと確信したという。
実は、検察側はPCそのものの公開も、内容についての調査結果の公表も拒み続けていたが、朴氏の弁護人が粘り強く要請し、裁判所が検察に命令して、公開させたのだ。
新たな展開を受けて韓国国会が真相究明に動き始めた。ただしこうしたことが朴氏の無実証明への第一歩となるかどうかは、まだわからない。なぜなら、韓国メディアのほとんどがこの重大情報を報道しないからだ。
韓国の報道界には北朝鮮の工作が深く浸透していると言われる。その結果、メディアには専ら、韓国転覆や対北朝鮮宥和策の実現を目指しているかのような論調が満ちている。まさにマスメディアが大韓民国の消滅に向けて報道しているかのようだ。
一方で、日本以上にSNSなどが普及しているのが韓国で、すでにシン氏の記者会見は広く拡散され始めている。これからの展開は予断を許さないが、私たちが学ぶべき教訓は、NHKや朝日新聞に顕著な偏向報道を許してはならないということであろう。