「 台湾は親中反日に傾くのか 」
『週刊新潮』'08年3 月6日号
日本ルネッサンス 第303回
2月24日、台湾総統選挙の候補者、与党・民主進歩党の謝長廷氏と、野党・中国国民党の馬英九氏が初の直接公開討論に臨んだ。言葉の正しい意味において台湾の運命を決するであろう二人の対決を、民進党派でも国民党派でもない中立の第三者で、台湾事情に詳しい友人に聴いた。
この友人は、政策論と説得力において謝氏が馬氏に優っていた、馬氏は質問に答えられず、答えをはぐらかす場面が幾度かあったとして、総合的に謝氏を高く評価した。
民進党候補として台湾人(本省人)の価値観を代表する謝氏は、李登輝前総統同様、京都大学に学んだ知日派だ。元行政院長(首相)としての実績は氏の政治手腕に一定の評価を与えるものだ。一方の馬氏は国民党のプリンスである。背の高さや外見が人々に受けて人気は高い。政治的に中国に近く、後述するように日本に特に好意を持つわけではない。
さて、翌25日の台湾各紙は討論を、「弁論、政策、風格」いずれの点でも馬氏が謝氏に較べて優勢と報じた。国民党系の新聞で親中国の姿勢が顕著な『聯合報』は馬氏が優れていたとする意見が54%、謝氏が優れていたとするのは21%にとどまったと報じた。同じく国民党系の『中国時報』は馬氏49%、謝氏23%、国民党系のテレビ『TVBS』も馬氏53%、謝氏31%と、馬氏優位を強調した。
先の友人は深い知識を持つ台湾問題の専門家だ。その友人の感想と台湾の有力メディアの報道は、大きく異なる。台湾メディアは資本も人材も国民党系が握っている場合が多く、論調も国民党有利に傾きがちだ。
「私は台湾人だ。台湾は我々の故里だ」。馬氏は討論でこう語り、台湾人意識を強調した。親中国派と見られていること、総統に就任すれば、中国との統一に踏み込みかねないと論評されているのを意識して、親中の色彩を打ち消そうとしているのが見てとれる。
中国への甘い認識
国民党副主席の江丙坤氏が、馬氏の政策を説明した。江氏は東大に学び1971年に博士号を取得、国民党政権下で重責を担い、馬氏勝利の暁には、行政院長に目されている。落着いた雰囲気、巧みな日本語、論点整理の明晰さ。説得力のある江氏は、馬氏の政策として「三不政策」(3つのノー政策)を挙げた。①独立しない、②統一しない、③武力行使をしない、である。
「中国は96年に台湾にミサイル攻撃をかけました。98年には統一促進を試みました。2000年以降は民進党が独立に挑戦しました。これら全てが失敗しました。故にこの3点はもはや受け入れられない事柄なのです」と江氏。
だが、馬氏の「三不政策」にどれだけの意味があるのか。①は元々国民党の方針である。②を掲げなければ、有権者は確実に離れていく。③を台湾側が言うのは殆んど無意味だ。
したがって私たちが吟味すべきは、国民党の本音でありながら、有権者の離反を恐れて掲げたと思われる②の点である。統一しないとは、具体的にどういう意味か。馬氏は統一はしないが平和協定を結ぶと語っている。江氏が説明した。
「我々は平和協議を提唱し、大陸側も応じると言っています。戦争にならないことが最も重要で、そのために平和維持の話し合いが重要なのです。平和維持の実現に、三不政策だけでなく、我々は次の3つの主張も掲げています。①防衛力の強化、②日米との同盟の強化、③独立を主張しないという中国への保障です」
江氏はくどいほどに強調する。
「戦争しないことが最も重要です。緊張を生じさせて経済が冷えこみ友人を失うより、逆に平和を維持し経済を強くすれば、台湾に来る中共の人々は台湾のよさを知ります。その結果、我々の繁栄の力で中共を変化させることが出来るのです」
中国と周辺諸国の関係を見れば江氏の甘さが際立つ。いかによい経済関係を保っていても、中国がそのこと故に領土的野心を抑制することはないのだ。1980年代、90年代、中国は目ざましい経済成長に入った。一方で、南シナ海、東シナ海に海軍を展開させ、ベトナム、東南アジア諸国の領有する西沙及び南沙諸島を中国領と宣言し、軍事力で島々を奪い、現在に至る。良好な経済関係がある限り、中国も軍事行動に出たり、威嚇したりしないと考えるのは甘いだろう。
馬英九が持つ危険性
「3つの主張」では、台湾の防衛力強化も謳われている。しかし、台湾政府は、7年前に米国から戦闘機をはじめとする武器・装備の購入を決定した。にもかかわらず、国民党の反対で予算は通らず、武器・装備の購入は棚上げされ続けた。江氏は陳水扁総統の説明の出鱈目さ故に予算案が通らないのは当然だと語った。それでも国民党などの野党勢力が過半数を占める台湾議会の決定によって、台湾の軍事予算がここ数年、明確に減少してきたのも事実だ。これでは自らの安全保障のため、対中国抑止力を構築する気があるのか、疑われても仕方がない。台湾海峡をはさむ台中の軍事力のバランスは、いま中国が台湾を抜いて逆転しつつある。均衡が崩れそうな瀬戸際にもかかわらず、経済が最重要、戦争を起こさないことが最重要だと繰り返すのは、中国の思惑どおりの主張なのだ。
これまで馬氏は反日だと言われてきたことを気にしたのか、江氏は述べた。
「現政権はトラブルメーカーです。我々はピースメーカーです。日本は南方、つまり台湾問題を心配する必要はありません。心配するのは北朝鮮だけでよいでしょう。我々は日台関係を大切にします」と。
しかし2005年10月のスピーチで、馬氏は極めて不穏なことを語っている。1947年、国民党が軍事力で台湾人を弾圧し、多数を虐殺した悪名高い二・二八事件が発生した。その記念館でのスピーチで、馬氏は明言したのだ。「日本の台湾統治50年間で、計65万人余りの台湾人が殺害された」と。
日本が台湾統治でこのような大量殺害を犯したなどとは、これまで、聞いたことがない。日本統治時代を生きてきた多くの台湾人の友人たちも皆一様に驚き、否定する。そこで判ったのは、馬氏の演説の少し前、05年9月3日に中国の胡錦涛国家主席が「日本が台湾を侵略占拠していた50年間、台湾同胞は絶えず反抗し、65万人が犠牲となった」と演説していたことだ。
馬氏は、中国の国家主席の根拠もない政治的非難の数字を、受け売りした疑いが濃い。中国の主張を素直に聞き入れる馬氏が総統になれば、台湾政府は親中に、結果として、反日になると考えてよいだろう。さらに、軍事的備えを怠り、経済に集中する台湾は、中国による併合の道を、自ら、提供するという極めて憂慮すべき結果を招きかねない。
答申から逸脱した人権擁護法案−推進派の思惑とは何か…
自民党人権問題等調査会が下記の要項通り開催されます。
■自民党人権問題等調査会
午前8時30分(約1時間) 101
議題:
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他国の選挙だからと言って、傍観はできない…
Ponkoさんの所からのTBです:
http://blogs.yahoo.co.jp/nipponko2007/16943573.html
ともすれば、アメリカの大統領選に目が行きがちであるが、隣の友邦国台湾の選挙には、我が国はもっと注目すべき…
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