「 信念なき福田首相こそ問題だ 」
『週刊新潮』'07年11月15日号
日本ルネッサンス 第286回
10月30日と11月1日、都合3回の党首会談から生まれた大連立構想とその後の小沢一郎民主党代表の辞任を巡る混乱で、メディアの批判は小沢氏と民主党に集中している。そもそも自民・民主の大連立構想を画策してきたのは『読売新聞』の主筆、渡辺恒雄氏と見られるが、『読売』は、「壊し屋」「『変わらなかった』小沢氏」「決定的なイメージ悪化も」などの見出しで批判した。
しかし、一連の展開は、小沢批判で済む性質のものではない。そこには国益も理念も忘れて政権にしがみつくかつての古い自民党に戻ろうとする勢力が蠢いていた。そうした勢力の目論見を見ずして、今回の党首会談の真の意味は語れない。
小沢氏が4日の会見で語った福田康夫首相との合意内容は、まさに驚天動地だった。氏が、自民党との政策協議に入ってもよいと考えた理由の筆頭にあげたのは、安全保障政策に関する首相の方針の大転換だった。氏はそれを次のように語った。
「国際平和協力に関する自衛隊の海外派遣は、国連安保理、もしくは国連総会の決議によって設立、あるいは認められた国連の活動に参加することに限る。したがって特定の国の軍事作戦については、わが国は支援活動をしない」「新テロ特措法案は、できれば通してほしいが、両党が連立し、新しい協力体制を確立することを最優先しているので、連立が成立するならば、あえてこの法案の成立にはこだわらない」
驚くべき内容だ。小沢氏はさらに以下のように説明した。
「(この合意は自民党が)これまでのわが国の無原則な安保政策を根本から転換し、国際平和協力の原則を確立するものである」、だからこそ、「私は、それだけでも政策協議を開始するに値すると判断した」と。
説明どおりなら、福田自民の小沢民主への完全な歩み寄りだ。下野した自民党が、村山富市氏を首相に担いであっと驚く自社さ連立政権を成し遂げた時と同様、福田首相は参議院での敗北を埋めるべく、理念なき野合を決断したことになる。
「首相が認めた」大転換
自民・民主両党の政策を比較すると、内政問題については往々にして民主党のほうが優れた案を出してきた。価値観の異なる公明党との連携に縛られ、中途半端な法案を出しがちな自民党とは対照的に、民主党は、教育基本法の改正案に見られたように、正当な主張を盛り込み、自民党案を凌駕してきた。にもかかわらず、政権担当能力において、民主党が国民の信頼を得ていないのは、外交及び安全保障政策についての基本が出来ていないと見られるからだ。
しかし、自民党の安保政策が根本から変わったとすれば、自民党の優位も揺らぐ。自衛隊の海外派遣は国連の決議がある場合に限るとの合意は、安全保障や憲法についての論議を一昔前に引き戻し、小沢氏が一貫して唱えてきた国連中心主義を自民党の政策として確立させるものだ。以後自衛隊の活動は憲法9条の厳格な運用に縛られる結果になる。
自主憲法の制定を、立党の原点とする自民党は、これまで半世紀以上、憲法9条の空疎さと国際社会の常識との乖離を埋めようとしてきたのではないのか。それが種々の゛拡大解釈〟だったはずだ。遅々とした歩みではあっても長年重ねられてきた自民党の努力を、一気に原理主義的9条擁護に引き戻すのが、小沢氏に同調したと見られる福田路線だ。自民党政治が戦後体制なるものの中に逆戻りし、沈み込む展開が見える。
小沢氏はまた、福田首相は、連立政権が誕生すれば新テロ特措法案の成立を見送ってもよいと合意したともいう。もし、福田首相が小沢氏への完全なる屈服であるこれほどの合意をしたのであれば、政策協議に入ってもよいと小沢氏が考えたのは自然なことだ。
小沢氏のこの点についての思いは強烈だった。記者会見で「離党するのか」「辞意を固めたのはいつか」などと問われたとき、氏は「あなた方は余り重く受けとめていないかもしれませんが」と前置きして、もっと重大なことに注目せよと言わんばかりに再度、首相の゛合意〟を持ち出した。「国連の活動以外に軍隊(自衛隊)を派遣しないというのは、今までの政府方針の大転換であり、憲法解釈の大転換だ」「私個人としては、この大転換を福田首相が認めたことをもってしても、それで政策協議に入ることがいいことではないかと考えた」と。
小沢氏の、国連中心主義への執念、対照的に、国の基本方針に関して、執念どころか信念も欠如した福田首相の姿を切り出した発言だった。
許されぬ理念なき野合
信念のない人間ほど、始末に悪いものはない。眼前の状況打開のために、節操もなく右にも左にも行くからだ。村山首相を誕生させたときの自民党のように、政権政党であり続けるためには信念を弊履の如く捨て去るからだ。
国連中心主義に拘泥するあまり国際社会の現実に目を向けない、永遠に成長出来ない小沢氏と、信念のひとつも語ることが出来ず調整に堕する福田首相が手を組んだ場合、日本は一体どうなるのか。民主党執行部が゛大連立〟を受け容れたと仮定してみる。連立政権は、明らかに、小沢氏の主張する国連中心主義に立脚する。その結果、福田自民党は政権を握り続けるかもしれない。だが、国際社会における日本の評価と立場は間違いなく失墜する。
それにしても、小沢氏が語った福田首相の政策大転換への合意は、果たして事実なのか。党首会談及び大連立の話はどちらの側から出たのか。『読売新聞』をはじめ、各紙は小沢氏が持ちかけたと、詳細に報じたが、小沢氏は「事実無根の報道が氾濫」「政府・自民党の情報を垂れ流し」たと、厳しく批判した。
5日、官邸で記者団から問われた福田首相は、大連立構想を首相が持ちかけたとされる点について、「まぁ、阿吽の呼吸でしょう」と答えた。新テロ特措法案の成立にこだわらないとされた点は明確に否定したが、自衛隊の海外派遣は国連の決議を前提とするとの点については、「そういう話も出た。一々メモをとっていないので、思いが違うことはあるかもしれない」と受けた。
明確な否定のないことは、大連立構想は首相が持ちかけたこと、自衛隊の海外派遣は国連決議が基本との考えに同調したことを、認めたと解釈してよいだろう。
首相をその気にさせ、背中を押したのは、大連立を実現させ、保守もリベラルもごった煮のように混在する政権政党を再生しようとする人々だ。彼らは中選挙区制への逆戻りを目指して蠢いている。それは問題解決能力を欠如させた古くて鈍い政党の姿に他ならず、日本の国益のために、断じて許してはならない方向転換なのだ。
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http://www (more…)
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トラックバック by ほそかわ・かずひこの BLOG — 2007年12月24日 08:51