「 皇位継承権は女性差別と踏み込む国連 日本をおとしめる情報戦対策が急務 」
『週刊ダイヤモンド』 2016年3月19日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1125
日本を非難する捏造の歴史を20年間も放置しておいて、たった1度、反論したからといって日本のぬれぎぬを晴らせるはずはない。日本に対する国際社会の誤解は極めて深く、その背後に、反日思想に駆り立てられている人々の国際社会への働き掛けがある。そのうちの少なからぬ人々が日本人である。
これが、3月7日に発表された国際連合女子差別撤廃委員会の対日最終見解が示す冷厳な現実である。
慰安婦問題について、外務省が初めて国際社会に異議申し立てをしたのが今年2月16日だった。日本国政府の反論を踏まえた対日最終見解には、強制連行や性奴隷という表現こそなかったが、慰安婦問題は「日本軍による深刻な人権侵害」「未解決の課題が残っており遺憾な状況」で、日本政府の「公式な謝罪と元慰安婦への金銭賠償」が必要だと断じたひどい内容だった。
菅義偉官房長官は早速、「極めて遺憾、受け入れられない」と反発したが、その後さらに驚愕の事実が判明した。国連委員会の対日最終見解案に日本の皇位継承権が男系男子の皇族に限られているのは女性への差別である、従って皇室典範改正を求めると勧告する内容が盛り込まれていたというのだ。
事前に日本政府が反論し、これらの記述は削除されたというが、ここまで日本の歴史や文化、伝統に介入する国連とは一体何なのか。日本に関してどのような知識と理解が国連委員会側にあるのか。極めて疑問に思う。
到底受け入れられない勧告案を作成していた国連委員会は以下の23カ国の委員が構成する。トルコ、ペルー、フランス、カタール、キューバ、ジャマイカ、フィンランド、アルジェリア、エジプト、ガーナ、レバノン、イスラエル、オーストリア、バングラデシュ、リトアニア、ジョージア、ナイジェリア、モーリシャス、ブラジル、イタリア、スイス、中国、日本である。
ちなみに委員長は日本人弁護士の林陽子氏だが、日本関係の討議には日本人委員は加わらない仕組みだという。
それにしても、なぜ、いきなり皇室問題が取り上げられたのか。前述の国々の各委員が皇室の由来や、祭祀をつかさどることを最重要の責務として今日に至る天皇の存在意義などについてどれだけ学んでいるかは、私の知るところではない。しかし皇位継承問題を女性への差別という切り口で論じていた事実は、委員らの日本に関する知識や理解が問題にならないほど浅薄であることを示している。
これらの委員の仕事は、本来、女性への不当な差別の撤廃である。彼らの主たる情報源は、訪ねてくる世界のNGOの人々だ。スイス・ジュネーブの同委員会に出席して「慰安婦は強制連行ではない」と問題提起した前衆議院議員の杉田水脈氏は、そこに集うNGOには左派系の人々が圧倒的に多いこと、その人々は日本に関しては公平さを欠く情報を流布しがちだと語る。
そこで、日本の神道、歴史、伝統を無視して皇位継承権が男系男子にあるのは女性差別だと論難するそのような人々に問いたい。ローマ法王が男性ばかりであることも女性差別だと言うのか。ユダヤ教の祭司(レビ族)も男系であり、男性から男性に受け継がれているが、これも女性差別だと言うのか。
とてもそんなことは言えないだろう。カトリックもユダヤ教もその教えや伝統はそれぞれに特有で、敬意を払うべきものだ。部外者が浅薄な理解で女性差別だとして切り捨てることは許されない。神道に由来する日本の天皇および皇室についても同様であろう。
国連を舞台にして展開されている、あらゆる面で日本をおとしめる情報戦は極めて深刻である。日本政府はこうした動きにまともに向き合い、公正でフェアな情報を発信する態勢を1日も早くつくり、粘り強く日本への理解を求めていかなければならない。