「 反対のための反対では通用しない 政権政党への成長はテロ特措法から 」
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 702
7月の参議院議員選挙での民主党大勝は日本の政治にどんな変化をもたらすのか。民主党は日本の未来を担う責任政党へと成長していけるのか。外交、防衛など、国家の基本問題を取り仕切っていけるのか。
最初の試金石はテロ対策特別措置法である。同法は2001年9月の米同時多発テロを受け、テロ掃討作戦を進める米軍などを支援する目的で制定された。具体的には、海上自衛隊がインド洋に展開し、米国はじめ各国の艦船への給油の任務をこなしている。
過去三度延長された同法は、11月1日に期限を迎える。民主党はこれまでいずれの延長にも反対してきたが、参院で過半数を得た今、この法律にどう対応するかは、国家の重要事項に民主党が責任政党として対応出来るか否かを見る基準ともなる。その意味で、とりわけ注目されるのだ。
党代表の小沢一郎氏は選挙戦が終わった7月28日夕方から“体調を崩した”との理由で姿を消し、31日にようやく、常任幹事会に出席した。
大勝という結果を得たにもかかわらず、代表がすぐには姿を見せず、発言も伝わってこないのには、落胆した。そして、テロ特措法についての氏の発言には、どう考えても疑問を抱かざるを得ない。氏は、「(これまで)反対したのに、今度賛成というわけがない」と述べたのだ。
同法を否定するとしたら、民主党は理由を説明してほしい。同法は、米国との関係だけでなく、欧州連合、そしてアジア諸国をも含む国際社会との連携の、一つの軸である。その延長を拒否することは、テロと対峙する各国の協力の輪から日本が脱落する意味合いを持つ。そのことによって、日本はどのようなリスクを抱え込むのか。日米、さらには欧州連合との関係はどう変化するのか。その変化は、中国やロシアが急速かつ大規模な軍事力の拡張を続けるアジア・ユーラシアで、日本の立場をどのように弱めていくのか。こうした一連の事柄について、民主党はこれまでなんら説明をしていない。
じつは同法について、民主党内の意見は決して一枚岩ではない。テロ特措法は、21世紀の国際社会が直面するテロの脅威に備えようとするものであるからこそ前向きの対応が必要だという意見も、そして、国際社会との協調のためにも、日米同盟を堅固ならしめ日本の国益に資するためにも、同法を支持すべきだという意見も、民主党内には根強く存在する。
しかし、そうした声は抑え込まれ、民主党は同法に反対し続けてきた。その際、民主党が掲げてきた反対の理由は「政府の説明が不十分」「十分な審議をしていない」などというものだった。今回反対するのは、前にも反対したことが理由だという。これでは、反対のための反対だといわれても仕方がない。参院の過半数を制した今、民主党主導の反対路線で自民党を揺さぶり、早期に解散、総選挙に持ち込みたいとの思惑が透けて見える。
小沢氏は主義主張の人ではなく対立軸をつくり、政局に仕立てていく政治家だといわれる。政局も大いによいだろう。むしろ、政界再編が起きて、真っ当な保守政党が誕生することを期待するものである。
しかし、国際情勢を見れば、現在の日本に外交や安全保障問題を人質にして政局に走り込む余裕はない。外交、安保政策は、国内の政局とは別次元で、国益をかけてまじめに取り組むべきものだ。それができないようでは、政権政党への道はいまだ遠い。
加えて、今回の参院選比例のトップは相原久美子氏、自治労の中央執行委員で組織局次長で50万票あまりの得票で1位だった。自治労の候補がトップ当選する政党が、政局に外交、安保を利用するとしたら、その党は政権政党にふさわしいのか。大いに疑問なのである。