「 国際法は憲法に勝るが世界の常識 集団的自衛権は憲法違反の大間違い 」
『週刊ダイヤモンド』 2015年7月11日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1091
日本大学教授の百地章氏が6月26日の「言論テレビ」の番組で集団的自衛権および平和安全法制について大事なことを指摘した。民主党以下複数の野党が、多くの憲法学者の考え方を根拠として一連の法案を廃案にせよと政府に迫っているが、そもそも、批判論を展開している人々は国際法と憲法の関係を理解していないというのである。
百地氏は、この最重要の点をきちんと理解しなければ、安倍政権が行おうとしている集団的自衛権の行使容認が違憲か合憲か、正しく判断することなどできないと指摘する。
「集団的自衛権が国内で問題になることはありません。国際間の権利で、国際法上の権利です。国際社会においては、各国の憲法よりも国際法が優位するというのが法学者の常識であり大前提です。
そこで国連憲章51条を見れば、全ての国連加盟国に『固有の権利』として集団的自衛権を認めています。すなわち、国連加盟諸国は全て国際法上、集団的自衛権を有し、行使することができるのです。日本国憲法に、わが国には集団的自衛権があるとか行使できるとか書いていなくても、権利はあり、行使できるのです」
百地氏は、テレビ朝日の「報道ステーション」で若手の憲法学者が日本国憲法のどこにも集団的自衛権があるとは書いていない、「ネス湖でネッシーを探すより難しい」との旨を発言したが、国際法と憲法の関係を知らないからこのような主張になるのではないかと語った。
「国際法上の権利であり、認められているが故に、日本国憲法にも書かれていないのです。憲法に書いていないのは日本だけではありません。その他諸国の憲法にも書かれていません。領土主権についても同じです」
国家の領土主権は国際法上の権利であり、わざわざ各国が領土主権を憲法に書かなくても、当然認められる権利だというのだ。
「憲法に書かれていなくても領土主権が日本国にあることは当然です。憲法に書いていないから駄目だということはないのです。ですから、集団的自衛権が日本国憲法に書かれていないから、日本は行使してはならないという人たちに尋ねたいですね。領土主権が明記されていないから、日本は領土主権を主張できないのか、と。そんなばかな話はないでしょう」
百地氏はさらに続けた。
「ただし、国家は主権を持っていますから、主権を一部制限したり放棄したりすることは、可能です。日本が、国際法上認められている集団的自衛権を放棄するなどと憲法で規定していれば、それも可能です。しかし、日本国憲法にそのような規定は、もちろん、ありません」
国際法の基本である国連憲章は集団的自衛権を全加盟国の「固有の権利」と書いているが、これは日本語訳だ。フランス語では固有の権利よりももっと強い意味を持つ「自然権」と書かれている。いかなる国にとっても当然の確固たる権利だということだ。
百地氏が語る国際法と憲法の関係についての考え方は、現代の憲法学界で「随一といわれる実力」を持つ京都大学教授の大石眞氏も共有する。大石氏は、法律の専門誌「ジュリスト」に、「憲法に明確な禁止規定がないにもかかわらず、集団的自衛権を当然に否認する議論にはくみしない」と記す。
報ステは200人の憲法学者にアンケート調査を行い、回答した150人中146人が違憲だと答えたと胸を張る。だが、憲法81条は憲法解釈について最終的判断を有するのは最高裁判所だと規定しており、最高裁は集団的自衛権を認めている。アンケートで得た憲法学者の判断をもって集団的自衛権は憲法違反だと決め付けること自体が憲法違反なのである。