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2006.12.02 (土)

「 インドの領土も中国領だと言ってのける胡錦濤国家主席の笑い飛ばせぬ冗談 」

『週刊ダイヤモンド』     2006年12月2日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 668

 

 


11月19日に閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、中国の胡錦濤国家主席の攻勢が目立ち、中間選挙で敗北した米ブッシュ大統領は心なしか精彩を欠いた。

胡主席にとっては、すべての歯車が順調に回り始めた感があるのではないか。まず、国内では政敵、江沢民氏につながる勢力を抑え込んだ。外交でも得点を重ねつつある。日中関係を改善し、喉から手が出るほど欲していた技術や資本を再び日本から得る第一歩を踏み出した。対米関係でも中国不利を挽回しつつある。今年4月18日の訪米でブッシュ大統領と会談したとき、訪米は失敗だといわれた。日米分断を図る中国の外交攻勢に大統領は乗らず、反対に米国は人権問題や軍事力の増強などで中国の自制を促したからだ。

しかし、APECでは、胡主席はブッシュ大統領に「中米は『利害関係者』として、建設的な協力関係を発展させなくてはならない」と述べた。「利害関係者」とはもともと米国が中国に対して、国際社会で責任ある対応を求める際に用いた言葉だ。中国はそれを逆手に取り、だからこそ、米国は建設的努力をすべきだと注文をつけたのだ。

中国は、ブッシュ大統領が中間選挙で力を失いつつあると踏み、朝鮮半島の暴走を防ぐにはもっと中国に頼らざるをえないと見て、強気なのだ。それでも、米国を軽んずる力は現在の中国にはまだない。だからこそ胡主席は協力を広げていくべき分野として経済、貿易、エネルギー、宇宙開発、科学技術などを挙げ、米国の協力を仰いだ。二国間関係で協力を仰ぐ一方、中国はアジアにおける米国の力の削ぎ落としに、文字どおり命運を賭ける。胡主席はハノイでのAPECの後、20日にインドを訪れた。1996年の江前主席の訪印以来10年ぶりの首脳訪問だ。

だが、中印両国関係は伝統的に摩擦含みだ。大きな理由の一つが領土問題である。中国は長年、中印国境の州、インド北東部のアルナチャル・プラデシュ州は「もともとすべて中国領土」だと主張してきた。そして、胡主席訪印の一週間前にも、孫玉璽駐インド大使が同趣旨の発言を繰り返した。むろん、インド側は激しく反発した。一方の胡主席は知らぬ顔でインド訪問を果たし、24日からパキスタンに入り、原子力発電所建設に関して協力と支援の強化を発表する。

一連の外交は、対米、対インド、さらには対日の観点から興味深い。第一に、それは、中国主導でアジア諸国がまとめられるのを嫌い、その“塊”を突き崩すためにインドに接近し、パキスタンとも協力してきた米国および日本を牽制するものだ。

中国は日本のように揉み手外交はしない。飴と鞭を使い分ける。インドには表向き胡主席の笑顔で接し、同時に別ルートで国境の州は中国領だとの不変の意思を明確に伝えるのだ。

むろん、中国が実際に問題の州をすぐに手に入れることはない。しかし、50年か100年先にはどうか。尖閣諸島の例を見れば予測はつく。隙があれば、南シナ海の西沙および南沙諸島のようにただちに奪い取る。また小欄でも指摘してきたように、高句麗(北朝鮮)は中国領だと主張し続け、同国はすでに半ば以上中国の支配下にある。

そうしたことのうえに、今回、インドの領土も中国領だと言ってのけた。その意図を、中国の国家戦略の大枠として読み取らなければならない。中国の大目的は世界の超大国となることなのだ。彼らは、その際の中国領土は、歴史上最大の版図を手にした清王朝時代の国土の再現でなければならないと考えている。それを示すのが、インド、北朝鮮などへの領土要求である。

ちなみに、日本固有の領土で中国が中国領だと言っているのは尖閣だけではない。琉球(沖縄)もまた中国領という声があるのを、日本人は冗談だよと笑い飛ばしてはならないのである。

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