「 民団よ、日本社会の敵となるのか 」
『週刊新潮』 '06年6月1日号
日本ルネッサンス 第216回
5月17日に発表された「民団・総連5・17共同声明」は、朝鮮戦争後、半世紀以上烈しく対立してきた在日本大韓民国民団(民団)と在日本朝鮮人総連合会(総連)のあり得ない和解が現実になったことをはじめとして、全ての点で驚きだった。それは民団が、民団の一割程度のメンバーしかいない朝鮮総連に事実上、呑み込まれることであり、豊かで繁栄する韓国が、圧倒的に貧しく道義的にも劣悪な、追い詰められた北朝鮮の政権に屈服することを示すものだ。
和解は民団が朝鮮総連に申し込んで実現した。申し入れに、朝鮮総連側は①脱北者支援民団センターの廃止、②北朝鮮系在日の韓国への墓参団受け入れの廃止、③日本の地方参政権獲得運動の停止を要求した。民団は①と②を受け入れ、③は考慮するとして、朝鮮総連の意を受け入れた。
こうして実現した“和解”への工作は、実は70年代に遡る。約30年間にわたる北朝鮮の工作から読みとれるのは、今回の和解が北朝鮮と朝鮮総連の長年の宿願だったこと、和解といいながら、実は朝鮮総連が民団の魂を吸い取り、金正日の傘下に置いたことである。北朝鮮勢力は如何にして民団を浸食したか。
1973年8月、東京で、在日韓国民主統一連合(韓統連)の前進である韓国民主回復統一促進国民会議(韓民統)の日本本部が設立され、金大中氏が初代議長に就任した。氏は73年8月8日、設立直前に韓国中央情報部によって拉致されたため、設立総会には氏の姿はなく、議長就任も推挙されてのことだった。そして同会の中核に位置を占めたのが郭東儀氏だ。
郭氏らが率いる韓統連の実態は不明ながら構成員は数百名、同勢力の特色は、金日成、金正日批判をかつて一度も公にしたことがない点だ。核、ミサイル、拉致、麻薬、偽札、何があっても韓統連は一貫して北朝鮮の側に立ってきた。この団体を、当時の韓国の裁判所は、反国家団体と断じ、郭氏の韓国入国も拒否された。韓国政府の影響下にある民団も70年代に韓民統を除名とした。
北朝鮮に頭を下げた民団
だが、金大中氏の想いは深く、後に大統領となった氏は韓統連の名誉回復をはかり、盧武鉉政権は彼らの韓国への自由往来を実現させた。同措置の意味を、早稲田大学客員研究員の洪辭虫≠ェ説明した。
「金正日べったりの韓統連と金大中氏が思想信条を同じくすることが、まず、わかります。また、韓統連の面々の自由往来は、韓国の国家保安法の事実上の停止を意味します。北の脅威の前に、韓国が自ら防備体制を解除して無防備状態に陥ることです」
郭氏は、今、かつての金大中氏のような民主化の闘士として、特に、左翼系勢力にもて囃される存在だ。氏は、今回の民団と総連の和解声明が出される20日前の4月27日に興味深い発言をしている。同発言は、左翼系のインターネット新聞「統一ニュース」に掲載された。饒舌に語った氏によれば今回の和解の意味の第一は、「日本から38度線が消滅した」という点だ。理由として、氏は4月24日に民団が郭氏らの下に送ってきた提議書(提案書)と、(2000年の金大中と金正日の首脳会談を祝う)6・15大祝典に民団も参加することになったという2点をあげた。
まず、提議書について、郭氏はざっと次のように語っている。
4月24日、民団中央本部の副団長と企画調整室長が民団団長河丙鈺(ハビョンオク)名の提議書を持って、「6・15共同宣言実践日本地域委員会」の事務室を訪れた。この「日本地域委員会」は、形は韓統連と朝鮮総連の連合体だが、韓統連が先述したような性格の組織であれば、同委員会そのものも北朝鮮の指揮下にあるといえる。その事務所で民団の代表者らは右委員会の事務局長、韓統連の事務総長、総連の統一運動局部長の3氏に会った。しつこいかもしれないが、3団体全て金正日政権の手足とも言うべき存在だ。その3団体に、民団側は自分たちも「日本地域委員会」に参加出来るよう「善処してほしい」と要請したというのだ。
かつて在日人口の8割を占めた総連は、いまや、昔日の面影もない。特に金正日が拉致を命じたことが明らかになると、脱会が相次ぎ、いま残る5万人弱は、拉致も他の犯罪もお構いなしに金正日の北朝鮮を信奉する人々だ。そんな朝鮮総連とは対照的に、日本にも韓国にも貢献してきた民団側が、なぜ、朝鮮総連に膝を屈して「善処」を頼むのか。その謎は郭氏の話を辿ると解けてくる。それが、「6・15大祝典に民団も参加する」のくだりである。
青瓦台で親北路線に豹変
2005年12月に中国の瀋陽で南北朝鮮と海外在住者の代表が集まり、「6・15民族共同委員会を常設の統一運動連帯機構とする」などと決議した。在日を代表してその会に参加したのは8名、内5名が総連中央本部、3名が韓統連のメンバーだ。8名のなかには、韓国でのスパイ事件に関連して名前の浮上した人物が少なくとも2名混じっている。
再び洪氏が説明した。
「北朝鮮系の運動家たちが、自分たちの活動に民団を参加させ、取り込んでいくと決議したのが、平壌の指令であり、瀋陽会議なのです」
一方、民団は今年2月24日に河丙鈺氏が団長に就任、氏は民団本部の人事を刷新し、新たに5人の副団長を任命した。筆頭副団長は金君夫氏、金大中氏が日本に滞在していた当時の秘書兼ボディーガードだ。北朝鮮との連邦政府樹立を目指してきた金大中氏の影が郭氏の上にも、現民団中枢部にも落ちているわけだ。
河氏は民団団長選挙に立候補したとき、民団の中の脱北者支援センターの活動を拡大強化すると公約していた。ところが、4月に韓国を訪れ、青瓦台(大統領府)に就任の挨拶に行ったあと、彼は豹変する。帰国後、河団長は突然脱北者支援センターの活動停止の条件を呑み、前述のように朝鮮総連との和解に踏み切った。彼の方針転換は、尋常ならざる親北路線をとり、金大中氏に恭順の態度を示し続ける盧武鉉政権の影響を強く受けての結果だと思わざるを得ない。その盧武鉉政権の支援を得て、金大中氏は間もなく、金正日と2回目の会談に臨む。
金大中氏の再度の訪朝が、氏の願ってきた北朝鮮が韓国を併合して統一する連邦制移行のきっかけにならないとも限らない。その露払いが今回の在日2団体の和解ではないのか。
和解発表から1週間、民団の各地方組織で漸く、反対運動が起きつつある。韓国を愛し、日本と自由と民主主義を信頼する人々なら反対は当然だ。民団の日本での活動を多少なりとも知る人間として、団長の河氏に厳しく問いたい。河団長の下で民団は変心し、北朝鮮と結託するのか。自由の国、韓国を裏切るのか。そして日本社会の敵となるのかと。
やっと、国民主権の声が上がった
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