「 引き返せない道に踏み出した戦略なき再処理工場の稼働 最終的なシワ寄せは消費者に 」
『週刊ダイヤモンド』 2006年4月15日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 637
原子力発電に使用された核燃料からプルトニウムとウランを抽出する商業用再処理工場が、4月1日、青森県六ケ所村で運転を開始した。17ヵ月間の試験運用で430トンの使用済み核燃料を再処理する予定だという。
運用開始で、日本原燃の六ケ所村再処理工場は半減期が1万4000年という毒性の強いプルトニウムに染まったわけで、引き返すことの出来ない道に踏み出したことになる。同工場はもともと、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出し、高速増殖炉に使用する目的で計画された。だが、「もんじゅ」の事故により、高速増殖炉開発の道は事実上閉ざされた。新たな開発を目指す方向性は打ち出されたが、技術的経済的見地からも、実現には多くの課題があり、きわめて困難と言わざるをえない。こうした点を考えて、拙速に再処理工場の稼働に踏み切るよりも、技術の推移を見守り、あと20年や30年は慎重に待つべきだと私は主張してきた。
だが、日本原燃は踏み出してしまった。そこで、あらためて、同計画について考えてみたい。
再処理推進派の人びとは言う。工場稼働は米国の原子力政策と軌を一にしたもので、日本が国連の安全保障理事会の五大常任理事国と肩を並べて核燃料再処理実施国になったことの意義はきわめて大きいと。
米国は今年2月に国際原子力エネルギーパートナーシップ(GNEP)政策を発表、「揺り籠から墓場まで」との表現で、核燃料のリースを基本とする核物質管理の国際秩序を提唱した。国際社会を、核燃料供給国と受給国に二分し、前者のみが使用済み核燃料の再処理を許される、その核燃料再処理国は五常任理事国と日本に限られるというものだ。
推進派の人びとは、非常任理事国であり、核非保有国である国のなかから唯一、日本が再処理国として認められたことを評価する。日本が排除されていれば、人類の未来エネルギー分野での開発競争からも締め出されかねないと言うのだ。地球環境、エネルギー事情を考えれば、日本が原子力の平和利用技術で世界に貢献すべきなのは当然だ。その意味では、今回の再処理工場稼働は確かに意味があるかもしれない。
だが、足元の現実は稼働にはまったく別の動機が働いていたことを示している。再処理工場は、全国九つの電力会社が主たる株主を構成する純然たる民間企業、日本原燃のものである。国有企業ではなく、民間企業が再処理に乗り出すのは世界でも初めてで、これは日本の原発産業の特徴でもある。
電力業界は1985年に六ケ所村の再処理工場建設を決めたが、条件の一つは、全国52の原発から運び込む使用済み核燃料は、同村に永久に貯蔵するのではなく、再処理をして再び各地に送り出すことだった。が、前述のように再処理で抽出したプルトニウムを使う予定だった高速増殖炉計画は頓挫した。それでも地元を納得させ使用済み核燃料を搬入し続けるには、どうしても再処理工場を稼働させなければならないという事情があった。
もう一つ、電力業界は、再処理工場建設に莫大な費用を注入ずみだ。コストは当初7,600億円の予定が3倍の2兆1,900億円にふくれ上がった。稼働させなければ元が取れない。再処理工場は40年間で3万2,000トン処理する予定だが、その費用は約19兆円と見込まれている。これらすべてを電力会社は積立金と料金収入で賄うが、それらのほとんどを上乗せした電気料金を支払うのは、消費者である。
再処理工場は、こうした業界の都合が優先されて動き始めたと言わざるをえない。動き始めたけれど、国家の大戦略を欠いた再処理工場の展望はどうしても私には見えてこないのだ。
NHKスペシャル「汚された大地で〜チェルノブイリ 20年後の真実〜」
とてもいい番組だと思う。電力会社から広告料をもらっている民放には作れない内容だと思う。NHKもまだまだ捨てたものではないと思った。
見ていて思い…
トラックバック by 蒼と碧の幻想 — 2006年04月20日 17:49
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トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年04月20日 18:10
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竹島海域調査、外務次官きょう訪韓(読売新聞 4/21)
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トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2006年04月21日 11:27
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汚された大地で 〜チェルノブイリ 20年後の真実〜
NHKスペシャル 午後9時〜9時49分
「汚された大地で 〜チェルノブイリ 20年後の真実〜」
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トラックバック by *ぱいなっぷりん* — 2006年04月23日 00:31