「 プーチン来日で惨敗の日本外交 」
『週刊新潮』 '05年12月8日号
日本ルネッサンス 第193回
絵に描いたような完全な敗北。97年以来の橋本龍太郎、鈴木宗男両氏らによる外交路線の惨めな失敗。それがプーチン大統領訪日で展開した日露外交の現実だった。肝心の北方領土問題については共同声明も出せない一方で、日本は12項目の合意に署名した。領土問題を完全に置き去りにしたうえで、経済、技術面での援助と協力が先行することになったのだ。日本の完敗に終った日露外交は、日程の組み方も異常だった。
日本側は大統領訪日を要請した03年1月から3年近く待たされて、ようやくプーチン訪問の日を迎えた。ところがプーチン大統領は、11月20日午後羽田に到着すると、日本・ロシア協会の鳩山由紀夫会長らと会談、東シベリアから石油を運ぶパイプライン建設への資金協力を求めた。一方の鳩山氏は1956年の日ソ共同宣言50周年にあたる来年、モスクワで行う記念事業へのロシア政府の協力を要請したが、両者ともに北方領土問題には触れなかった。日本政府より前に、2島返還を基調とする日ソ共同宣言を生み出した鳩山一郎の孫に会い、同宣言50周年の記念事業への協力を約束した。のっけから日本政府に4島返還は論外だと、突きつけたに等しい。
さらに当日夜は六本木ヒルズに足を運び日露修好150周年記念の友好アート展を見学、柔道の山下泰裕東海大教授らと懇談した。
翌21日、プーチン大統領はロシア財界人100人以上を引き連れて日本経団連主催の「日ロ経済協力フォーラム」に姿を現した。奥田碵会長ら日本側財界人を含め500名を超える聴衆を前に、約20分間、熱弁をふるい、東シベリア石油パイプライン計画への日本の協力を求めた。
このあと、ようやく、小泉純一郎首相はプーチン大統領に会ったのだ。訪日要請から約3年、大統領の日本到着後も丸1日待たされた挙句の首脳会談という日程は、領土問題が解決しなくても、日本の企業は経済協力にも技術援助にも必ず乗ってくる、それを日本の政治家も外務省も目をつぶって、必ず受け容れると読んだロシア側の自信を反映していた。
継承される自滅交渉
小泉、プーチン両首脳の差しの会談は1時間25分、内半分が北方領土問題に費やされた。小泉首相は北方4島の帰属問題が解決なくして平和条約締結はないという従来の立場を表明したが、経済協力と信頼醸成の重要性も強調した。これでは、最初からロシアに譲歩しているようなもので、迫力に欠けること甚だしい。
小泉外交は、領土問題を第一の議題にするのではなく、まず経済交流を拡大して友好的雰囲気を作り、信頼関係を築き、そのなかで領土問題を解決していくという橋本、鈴木路線の継承であり、まさにそれこそが今回の惨敗の原因なのだ。
約10年前とは打ってかわって、日本不利の状況に大反転した日露関係は北方領土周辺海域での水産資源共同開発問題にも表われている。90年代、ロシアは通貨危機を体験し、経済破綻の中で日本に援助と協力を求め、そのひとつが同海域での水産加工施設の共同開発や港湾建設だった。だが当時の日本は政経不可分の原則、まず領土問題を解決して、はじめて経済協力を実施するとの前提を堅持、慎重な姿勢を崩さなかった。
今回は日本側が北方領土周辺海域での水産資源共同開発を提案した。するとロシア側はロシュコフ駐日大使が「受け入れ可能な案」と述べた(『毎日新聞』11月22日朝刊)。
かつてロシアが切実に求めた共同開発を、いまや日本がロシアとの関係改善を願って提案し、それをロシア側が余裕をもって、受け容れてもよいと言う。この日露逆転は政経不可分という言葉の使い方にも典型的に表現されている。
前述のように日本はずっと、北方領土という政治課題が解決されない限り経済協力は控えるとの姿勢を貫いてきた。だが、11月17日号の小欄でも報じたように、この原則は1997年4月の橋本首相(当時)の経済同友会での発言によって崩れ去った。従来の政経不可分の方針を捨て去った日本に、今度はロシアが「政経不可分」を主張し始めたのだ。領土問題解決を促すためにこそ、経済・技術交流を進め、友好的関係の構築が欠かせないというわけだ。
揉み手外交に展望はない
プーチン大統領は今回こうも語っている。「国境画定問題を政治化するべきではない」と。
ロシア流“政経不可分”からさらに進んで、政治問題としてとらえること自体を止めよと言ったのだ。小泉首相が慌てて「日本にとって北方4島問題は本質的に重要な政治問題だ」と反論したが、ここまで日本の立場が突き崩されてきたのは、橋本氏以降、日露外交を手がけてきた政治家と官僚たちの責任が大きい。
日本の主張を嘲けるようなプーチン発言を支えるのが、領土を返さなくても確実に日本企業はロシアに投資するという自信だ。その自信を与えた筆頭がトヨタの奥田会長である。
奥田氏は周知のように、日本メーカー初の工場を07年にサンクトペテルブルグで稼働させるべく、投資に踏み切った。トヨタの決断は対露投資の大きな呼び水となりつつある。
領土問題を置き去りにした今回の首脳会談について、21日、谷内正太郎外務次官は「北方領土を横に置いて、それ以外のことをどんどんやるということではない。厳しい議論を繰り返し、相手に伝える」(『読売新聞』11月22日朝刊)と語った。
だが、ロシアの有力メディア複数が首脳会談をどう分析したか、『産経新聞』が11月23日朝刊で報じた。
「経済優先という日露関係の基本的な発展の方向が定まった。領土問題は遠い未来に先送りされた」(国営第一チャンネル)、「北方領土問題は過去の遺物になった」(『独立新聞』)、「日本は(領土問題で)何らかの結論を出す最後の機会を逃した」(ロシアNTV)
的を射ているのはロシアのメディアか、谷内次官か、答えは自ずと明らかだ。97年の橋本外交以来、日本が根本的な誤りを犯し続けてきたのは否定出来ない。そしていま、プーチン大統領下のロシアの本質をも見誤っている。プーチンのロシアこそ国内外において力を最高の価値として活用する国家体制である。日ソ・日露間の過去の合意を悉く無視するその手法も、まさに力に物を言わせるものだ。国内においても法を無視した力ずくの手法で反対勢力を封じ込めるプーチンのロシアは民主主義的国家の構築を放棄したと断ぜざるを得ない。強権、強圧国家のロシアに対して、揉み手で譲歩を続ける日本の現外交では展望は開けないだろう。物事が混乱状態に陥ったときは原点に戻ることだ。時間はかかるが、4島一括返還、政経不可分の原則を立て直してはじめて展望は開ける。日本はそのためにもてる全ての力を傾注しなければならない。
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