「 米軍普天間飛行場移設問題で調整役にすぎない日本政府 いまだ見えてこない長期戦略 」
『週刊ダイヤモンド』 2005年10月29日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 614
沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題がようやく“最終段階”に入ったと、「沖縄タイムズ」「琉球新報」が報じている。移転先は沖縄県北部の名護市であり、同市長の岸本建男氏は、普天間飛行場の移転先となる新たな基地受け入れに応ずることを公約に掲げて当選した人物だ。
さまざまなプロセスを経て、3つの案が移転先として議論されてきた。大浦湾に面した辺野古沖、水深40メートルの海に浮かぶかたちで2,500メートルの滑走路を有する施設を作り、軍民共同で使用するというのが第1案だ。第2案は同じく辺野古の海上だが、リーフの内側でもっと陸地に近い浅瀬に、1,500メートルの滑走路を作る案である。第3案は、現在米軍が使用しているキャンプ・シュワブの演習場に、新たな滑走路などの施設を作る案だ。
稲嶺惠一沖縄県知事は、第1案に賛成する代わりに、使用期限を15年とした。日米両政府は15年という期限付きの使用と軍民共用の条件を嫌い、沖縄県の意向にもかかわらず、同案は宙に浮き続けた。
第3案は日本政府、防衛庁の提案だ。利点は、すでに存在する基地内での新施設の建設であるため、反対運動が起きにくいことだった。しかし米政府側は猛烈に反対した。第3案の内容は、キャンプ・シュワブの演習場に新たな滑走路を作ることが中心になっているが、問題は、どのようなかたちで、演習場内のどこに作るかである。同演習場の重要な使用目的は射撃訓練であり、滑走路をまたぐかたちでの訓練など不可能だ。また、たとえ1,500メートルの滑走路としても、そのスペースを取るのは容易ではない。
そこで防衛庁側は、滑走路を背にするかたちで射撃訓練場を作り直す案を提示した。となると、射撃は従来の山方向ではなく、国道に向かって行なわれることになる。安全対策上の問題があまりにも大きく、米政府にとっては受け入れられなかった。
米政府が同案を嫌ったもう一つの理由は、普天間を日本側に返還する見返りとして得るのは、きわめて使いにくくなったキャンプ・シュワブだけとなる点だ。これでは一方的なマイナスだと、彼らは考えた。岸本市長も同案に反対した。名護市は、基地受け入れの見返りに、海上に大規模施設を作ることにより地元業者への仕事を得たいと考えていた。だが、陸上案は、海を埋め立てて行なう工事と比べて、コストはかなり低くすむが、工事量が少ない。これでは地元が納得しないのが現実だった。
そこで、最終的に有力になってきたのが浅瀬を埋め立てて、1,500メートルに縮小した滑走路を作る第2案である。浅瀬とはいえ海は埋め立てる。それだけコストをかけるという点で、地元業者が潤うのは間違いない。米軍のヘリコプター部隊をはじめとする普天間の機能を移すためであるから、1,500メートルで十分だ。加えて、ここに作る施設は軍民共用ではなく、米軍単独で使用出来るというメリットがある。この第2案を名護市も米政府・軍も支持している。
それにしても見えてこないのが、日本政府の戦略である。沖縄県も米政府も、自己の立場を主張して、身勝手な案を次々と出してくる。日本政府は両者の調整役にすぎない。しかも、調整策を考える際に、世界規模で起きている米軍再編の要素をまったく考慮していない。
米軍再編のなかでの沖縄の位置づけ、日本の安全保障策の構築を考えるべきだ。それは、日本の安全保障に日本が独力で向き合うことを基本にした、長期戦略をつくることにほかならない。米政府も沖縄県も、日本政府が安全保障政策構築において主体性を発揮することを求めているのだ。
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トラックバック by オンラインコンビニエンス何でもそろう便利屋です — 2005年11月03日 19:43
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トラックバック by 三輪のレッドアラート！ — 2005年11月05日 12:07