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2005.10.06 (木)

「 日本の切り札は自由と民主主義 」

『週刊新潮』 '05年10月6日号
日本ルネッサンス 第184回

米国の外交政策に現れ始めた変化を見ると、今や国際政治の潮目が変わりつつあると思えてならない。一連の変化は、ブッシュ政権の下で米国の外交が外向きから内向きへと方向転換をする兆しではないか。

9月19日に発表された第4回6ヵ国協議の共同声明の内容のなさは、声明が、従来の米国の北朝鮮政策では考えられないほどの妥協策であることを示している。

たとえ6ヵ国協議の枠内であっても、以前は、北朝鮮との2国間の話し合いを最大限避けてきた米国が、今回は、打って変わって都合13回の2国間協議に応じた。どうしても6ヵ国協議を“成功”させて、北朝鮮の核問題をコントロールした形をつくりたいというブッシュ政権の前のめりの外交姿勢が明らかだったからだ。

合意された共同声明には、馬鹿々々しくて話にならないと関係者らが語った、北朝鮮が要求する新たな軽水炉建設の項目が盛り込まれた。

米国は、北朝鮮が「すべての核兵器および既存の核計画を放棄」したあとに初めて「北朝鮮への軽水炉提供問題について議論を行う」、兎に角、北朝鮮が“核ビジネス”から足を洗うことが先なのだと説明した。だが、北朝鮮外務書は、共同声明発表の翌日にはこう語っている。

「米国が北朝鮮に軽水炉を提供すれば核拡散防止条約(NPT)に復帰し、国際原子力機関(IAEA)と保証(査察)協定を諦結し、履行する」「(米国が)再び『核兵器放棄優先・軽水炉後回し』の主張に固執するなら、その悪い結果は極めて深刻で複雑なものになるであろう」

曖昧さが目立つ共同声明を読めば、このような食い違いが生ずるのは火を見るより明らかだ。たとえば、北の核の放棄については、その期限も記されていない。他方、「北朝鮮は原子力の平和的利用の権利を有する」との一文が盛り込まれた。北朝鮮にゴネ得を許した同共同声明は米国外交史に残る汚点となるだろう。

外交基軸の揺らぐ米国

日本外交史の汚点、2002年9月の日朝平壌宣言にも、今回の共同声明で言及された。周知のように、同宣言には拉致という言葉さえ入っていなかった。日本の謝罪で始まり、北朝鮮との国交正常化のなかで日本が経済支援を行っていくとの内容だった。今回の6ヵ国協議では、日朝両国は「平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決することを基礎として国交を正常化するための措置をとる」と決定されたのだ。

ブッシュ政権が北朝鮮に譲ったなかで、日本もまた、米国に倣って妥協を迫られた形である。「平壌宣言に従って」というからには、拉致は問題にされないということだ。拉致を横に置いて、国交正常化交渉を進め、それに伴う経済支援も実施していかざるを得ない条件に、日本は6ヵ国協議という国際的枠組みのなかで曲がりなりにも「イエス」と言ったわけだ。現に、北朝鮮側は共同声明発表後も「拉致問題は完全に解決済み」と繰り返した。

なぜ、このような状況が生じたのか。背景に米国の外交基軸の揺らぎがある。

ブッシュ政権はまだイラク問題で手をとられている。イラクでは総選挙が行われ、民主的な議会の形も出来たが、政治や民生の安定には程遠い。加えて、イランの核問題がいよいよ深刻になりつつある。イランは、イラクよりも遙かに手強い。人口はイラクの2,710万人に較べて3倍弱の6,900万人、国土もイラクの約4倍だ。歴史と文明の深さにおいてイランはイラクとは比較にならない。紀元前から繁栄してきた国は今や、イスラム原理主義が強い力を持つ。この国の核問題は、世界にとっても米国にとっても非常に重い。

加えてハリケーン、カトリーナとリタがもたらした被害がブッシュ大統領の大きな負担となっている。カトリーナによる被害は少なくとも22兆円、リタによるそれも、少なくとも10兆円が見込まれ、アフガニスタンとイラクへの軍費を上回ったのだ。ブッシュ大統領への支持率は過去最低の40%近くを停滞中だ。9月24日にはホワイトハウス前でイラクからの即時撤兵を求めるデモが行われた。息子をイラク戦争で亡くしたシーハン夫人の“not one more ”(もう一人も死なせてはならない!)との訴えを支持して集った人々は、予想の10万人を遙かに超えて18万人に達した。

イラクからの早期撤退を求める声は、共和党内部からも出始め、今やブッシュ政権は北朝鮮問題にまで心配り出来ないのだ。

アジアの支持を自覚せよ

杏林大学の田久保忠衛教授が指摘した。
「米国の外交は外向きの時代と内向きの時代を繰り返してきました。イラクからの早期撤退の声が共和党内部から強まるようなら、ブッシュ大統領の外交政策にも影響が及ぶと考えなければなりません。また彼はあと一年もすれば、政治的影響力を弱めて、レームダック化していきます。強い対外コミットメントを続ける現在のブッシュ政権の外向きの外交は、内向きの外交政策へと切りかえられていく可能性があります。歴史の潮目が変わると感じています」

11月には釜山でアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が、また、12月にはクアラルンプールで東南アジア諸国連合(ASEAN)+3首脳(日中韓)会議と共に、初めて東アジアサミットが開かれる予定だ。

いずれも21世紀のアジアを占う主舞台であり、中国は早くから、両会議において米国の影響力を排除し中国主導の体制作りを目指してきた。

9月26日発売の米誌『ニューズウィーク』は、特に東アジアサミットで強力な指導力を見せつけたい中国が米国外しを画策してきたことを報じている。同サミットは、東アジア共同体構想につながるものだ。

小泉純一郎首相は、9月の総選挙で歴史的な勝利を手に入れた。国内の反対勢力を事実上無力化したいまこそ、外交でスジを通すことだ。日本重視のブッシュ外交が持続する可能性が薄まり、アジアにおける米国のプレゼンスも縮小されていきかねないいまこそ、日本自身が自力で中国の膨張主義に対処する覚悟と体制作りを急がなければならない。

その第一歩は、日本こそがアジア諸国によって支持されていることを明確に自覚することだ。アジア諸国の自由と民主主義を推進出来るのは、日本であること、決して中国ではないことを、はっきりと伝えていくべきだ。そのうえで、日本政府は全力でアジアの自由と民主主義の擁護者になると、決意表明することだ。

その決意の証として、日本政府は、軍事力を背景に有無を言わせぬ強硬策で迫ってくる中国に毅然として対処せよ。具体的には憲法改正を急ぎ、小泉首相は改めて日本国の立場を主張する象徴ともなった靖国神社にきちんと詣でることだ。

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