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2005.04.16 (土)

「 思い込みの責任は誰が取るか 教科書報道に見る歪められた竹島領有権問題の歴史的事実 」

『週刊ダイヤモンド』    2005年4月16日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 588

4月6日、文部科学省による中学校用教科書の検定結果が発表された。発表当日の夜のニュース番組でも、翌日の新聞報道でも、一様に「新しい歴史教科書をつくる会」の主導で扶桑社が発行する歴史教科書、とりわけ竹島領有権問題が焦点の一つとなっていた。

興味深かったのはその報じられ方だ。たとえばテレビ朝日の「報道ステーション」では、司会の古舘伊知郎氏が「私は思い違いをしていました」とカメラ目線で語り始めた。竹島について、扶桑社の教科書に「韓国が不法占拠している」と書かれていたのだと思っていたら、じつは文科省がそう書き直させていたということを、検定前と後の記述を示しながら語ったのだ。

「朝日新聞」と「毎日新聞」も、扶桑社よりも文科省のほうが韓国による「不法占拠」にこだわって修正させた点を強調していた。

こうした報道には2つの特徴がある。第1は、「つくる会」と扶桑社の教科書は日本の立場を必要以上に美化し正当化しているに違いない、という思い込みだ。第2は、竹島に関する歴史的な事実と、同島について韓国の子どもたちが学校や家庭でいかに一方的な教え方をされているかについての無知、あるいは無関心である。

古舘氏の“思い違い”発言には、「つくる会」こそが率先して「不法占拠」という“書いてはならないこと”を書いたのだと思っていたら、そう書かせたのは文科省だった、ひどい検定だ、という驚きのニュアンスが込められていたと言わざるをえない。結局、古舘氏の陥っていた思考パターンは、思い違いというより思い込みなのではないか。ニュース報道では、思い違いは許されず、間違いだと判明した時点で訂正されなければならないが、それ以上に許されないのが思い込みである。思い込みは偏見と同義語であり、ニュースを歪めてしまうからだ。

その意味で「朝日」4月6日付の社説も興味深い。「こんな教科書でいいのか」と題して、扶桑社への批判を展開した。同社説は、4年前の扶桑社の歴史教科書と今回のそれを比較して、日本武尊(やまとたけるのみこと)の神話や特攻隊員の遺書が今回の教科書からはなくなり、全文を載せていた教育勅語も一部の要約になったと書いたうえで、「しかし、天皇の重視は変わらない。実在するかどうかわからない神武天皇の東征が1ページも書かれている」と難詰している。神話を削ったのはよいが、それでもまだ天皇重視ではないかと批判しているのだ。

だが「朝日」が、その意見や批判を尊重する韓国の教科書には、神話の記述に多くのページが割かれている。のみならず、神話と現実の区別も曖昧である。「実在するかどうかわからない」人物や物語が、韓国の輝かしくも誇らしい民族の歴史として紹介されている。「朝日」が扶桑社の教科書を「こんな教科書」と卑下するのなら、韓国の教科書に関してはもっと強い表現で批判しなければ筋は通らないだろう。だが、同紙がそのような韓国の教科書批判や論評を掲載した事例は、私の知る限り、皆無だ。同紙の報道は、この点でも偏っている。これでは扶桑社の教科書への批判のための批判、思い込み報道だと言われても仕方がないだろう。

そして竹島の記述についての歴史を検証すれば、文科省の検定はきわめて正しい。「韓国とわが国で領有権をめぐって対立している竹島」という検定前の表現では、対立しているという眼前の現象を教えることはできても、いったい竹島はどの国の領土か、という点については不明のままだ。現場の教師が竹島についての知識と意識を持って教えてくれる保証はない。だからこそ教科書には、基本的な情報はきちんと書き込まなければならない。私は「朝日」とは逆に、扶桑社の教科書を高く評価する者だ。

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「 思い込みの責任は誰が取るか 教科書報道に見る歪められた竹島領有権問題の歴史的事実 」

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