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2004.02.21 (土)

「 並の政治家や官僚に劣らぬ横田夫妻の外交判断能力 改正外為法にも見解の相違 」

『週刊ダイヤモンド』 2004年2月28日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 532号

試練は、人を成長させてくれる。
穏やかな夫と裕福な家庭の主婦をしてこられた横田早紀江さんと語るたびに、そう思う。外交官でも政治家でもないが、早紀江さんはおそらく今、並の政治家や官僚に負けない判断能力を身につけている。

2月11日から平壌(ピョンヤン)で開催された日朝政府間交渉に臨む政府の姿勢を、横田夫妻とめぐみさんの双子の弟、拓也さんと哲也さんは厳しく批判した。周知のように、川口順子外相は、すでに帰国した五人の拉致被害者の家族八人とともに、めぐみさんの娘・金恵京(キム・ヘギョン)さんの訪日を要請する、とした。早紀江さんらはこれに強く反発した。恵京さんがめぐみさんと別れたかたちで訪日すれば、恵京さんにとっては母親のめぐみさんや父親を人質に取られていることになり、真実などは語りえない。残されためぐみさんの“死亡”は、永久に事実として固定されかねない。祖父母として恵京さんに会いたい気持ちは溢れるほどであっても、単独での訪日は断る、という理屈だ。

これ以上の正論があるだろうか。外務省と横田家の考え方の相違は、どこに外交の目標を置くかによって生まれてくる。

帰国した5人の被害者の家族と恵京さんを、取り急ぎ日本に連れ帰ることを優先するのか、めぐみさん、有本恵子さん、増元るみ子さんら、死亡または記録なしとされた10人をも視野に入れるか、の違いだ。つまり、焦点を、短期目標に当てるか長期目標に当てるかの相違である。川口外相や田中均外務審議官はおそらく前者であり、横田夫妻らは明らかに後者である。

この相違は、2月9日に成立した改正外為法への反応にも見て取れる。小泉純一郎首相、福田康夫官房長官、川口外相、竹内行夫外務事務次官らは、改正外為法は「現時点で適用するつもりはない」などと語った。

早紀江さんが問う。「なぜ、せっかくつくった法律を使わないなどと言うのでしょうか。使うも使わないも北朝鮮の出方次第と言って、選択肢、決定権をこちらに残しておくのが普通のやり方ではないでしょうか」。

まさにそのとおりである。日本政府首脳の一人も、北朝鮮は日本人が考える以上に、この改正外為法の成立に脅威を感じていると語る。だからこそ、1年4ヵ月間中断してきた政府間交渉の開催に応じたのだ。なぜ、彼らにとって同法がそんなに脅威なのか。

改正外為法の正式名称は、「改正外国為替及び外国貿易法」である。よく指摘される送金停止に加えて、貿易制限も同法律でできる。つまり、ある特定品目に絞って輸出入を停止させることも考えられるのだ。核やミサイル、武器の製造につながる部品は、むろん現在でも輸出できないが、もっと身近な品目を制限して、金正日(キム・ジョンイル)政権に圧力をかけることも可能である。

かつて熱烈な金政権の支持者だった在日朝鮮人が、具体例を語った。
「金王朝のメンバーが日常口にする贅沢(ぜいたく)品は、大半が日本産です。日本の港に合法・非合法に出入りする北朝鮮の船のなかで、生鮮食料品を運ぶことのできる冷蔵・冷凍設備を持つのは万景峰(マンギョンボン)号のみです。ですからメロンなどの高級果物、高級牛肉などを制限品目に指定し、万景峰号の出入港を止めれば、それだけで金王朝にとっては大打撃です」

笑ってしまう話だが、2月16日、金正日62歳の誕生日の祝賀のバカバカしさを見せつけられれば、なるほど上御一人(かみごいちにん)の奢侈(しゃし)を封ずる一手は、北朝鮮がひと握りの独裁者的人物のメンバーのための国となってしまったがゆえに、私たちが考える以上に効果があるのか、と思う。拉致救出行動議員連盟(拉致議連)は17日、特定船舶入港禁止法案を今の国会に提出することを確認した。いざとなれば発動できる力と手段を備えることが、日朝双方の国民のためである。

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