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2004.01.10 (土)

「 道路族と国交省の完全勝利 道路公団民営化案の決着は小泉構造改革“失敗”の暗示 」

週刊ダイヤモンド 2004年1月10日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 525

「残念です。これで小泉構造改革はつぶれるという予感を抱きました」
2003年12月22日、道路関係四公団民営化推進委員会の委員長代理を辞任した田中一昭氏が語った。

周知のように、政府・与党はその日、四公団の民営化案を決定、委員会の意見書の最も基本的な点を悉く無視する内容だった。田中氏はしかし、政府・与党案を小泉純一郎首相が了承しているのか、最後まで判断できなかったと述べる。

「私のなかに、首相への期待がまだ残っていたのです。実際の法案作成までに、政府・与党案を修正なさるのではないかと、一縷の望みを捨て切れなかったのです」

意見書と政府・与党案のあまりに大きな違いを、意見書を尊重すると言い続けた首相が容認するはずがないと氏は考えたのだ。

両案がどれほど異なるか。まず、意見書は資産と債務を保有する「保有・債務返済機構」と、高速道路を借りて料金徴収と道路建設を担当する会社に上下分離されるが、10年をメドに会社は資産を買い取り、上下一体となる。その時点で機構は解散し、名実ともに自律可能な民営会社をつくると定めた。

政府・与党案は、機構は債務を返済し終えるまでの45年間、存続させるとした。事実上、“永久に”上下分離を固定化し、自立した会社はつくらせないということだ。新会社は事実上、機構の子会社のままだ。12月23日付『日本経済新聞』の社説は、これを“巨大な新ファミリー企業の誕生”と書いた。

また料金収入は、意見書ではまず債務の返済に回し、新規高速道路を建設する際の借金は会社が責任を持って返済するとした。民営会社なら不採算道路は建設しないと見込んでの決定である。対する政府・与党案は、会社が資金を調達して道路を建設するが、完成時に機構が道路も債務もそっくり引き受けるとし、国が事実上、債務を保証することを決定した。これで予定されていた9,342キロメートルのすべてに建設のメドが立ったのだ。道路族の古賀誠氏が浮かべた破顔の笑みに象徴されるように、道路族と国土交通省の完全勝利である。

「12月22日、官邸で私は、民営化に必要な枠組みと政府・与党案の問題点を整理した紙2枚を総理に渡しました。首相は、意見書の8割は反映していると言われた。しかし、残り2割こそが改革の基本で、その余は基本いかんによって動く部分です。私がそう強調すると、総理は、辞任は小泉構造改革に反対することだと言われました」

自分への反対者は改革への反対者だというのは、首相の常套句だ。そう決めつけた首相に、田中氏はきっぱりと「今回の(政府・与党の)決定は小泉構造改革ではありません」と反論。

「この瞬間、すべての期待は消えました。首相は政府・与党案の内容を承知したうえで了承し、小泉構造改革だと言っていることがはっきりわかりましたので、私は辞表を傍らの秘書官に渡しました。総理は憮然として無言でした」

氏は、猪瀬直樹委員への疑問も語った。
「フィクサーの仕事はわれわれのすべきことではないのです。意見書の実現が委員の役割であるにもかかわらず、委員の名においてフィクサーの動きをしたのが猪瀬氏で、枠をはずれた相容れない行動です」

最後に、こうも語った。
「そういえば総理は、政府案で今の公団より数段もよくなると言いました。本当にそう考えているのでしょうか。私は、いいえ、かえって悪くなると反論しました。道路公団の失敗の構造をそのまま残し、かつ拡大するのですから。小泉構造改革は失敗に終わらざるをえないでしょう」

国民にツケを回すことになる民営化案に加担した人びとは、再度、心して、田中氏らの忠告に耳を傾け、法案をつくり直すことだ。

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「 道路族と国交省の完全勝利 道路公団民営化案の決着は小泉構造改革“失敗”の暗示 」

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