「 東シナ海侵犯事件で露呈『民主党の敗北外交』 」
『週刊新潮』 2010年9月23日号
日本ルネッサンス 第428回
民主党代表選挙で再選はされたが、菅直人首相及び仙谷由人官房長官の領海侵犯事件を巡る対応は歴史的失態である。日本固有の領土である尖閣諸島の周辺海域には石油をはじめとする天然資源が中東並みの量で埋蔵されている可能性がある。その海ごと中国に奪われそうな状況だ。
日本の領海を中国漁船が侵犯した9月7日以降の菅政権の対応は、尖閣を領有する日本と、それを不法に要求する中国の立場を大逆転させ、中国の領有権主張に屈するに等しいものだ。菅・仙谷外交の恐るべき気概のなさと中国への隷属精神が一連の対応から見えてくる。
7日午前、中国漁船「閩晋漁(ミンシンリョウ)5179」が尖閣諸島の日本領海を侵犯し、3時間にわたり逃走を試みた。日本政府は直ちに領海侵犯事件として逮捕に踏み切るべきだったが、仙谷長官らが中国との摩擦を恐れて判断が半日以上も遅れた。
逡巡した日本政府とは対照的に、中国政府は直ちに反撃した。8日以降12日まで計5回、北京の丹羽宇一郎大使を呼びつけた。その気迫は尋常ではないが、国家としてこれが当たり前で、むしろ日本が異常なのだ。
まず事件発生直後の8日、中国政府は丹羽大使を呼びつけ、船長らの即時釈放を要求した。9日、「中国の漁民の生命、財産の安全保護」のため、漁業監視船を尖閣周辺海域に派遣した。10日、楊潔篪(ヨウケッチ)外相自らが丹羽大使を呼びつけた。11日、中国外務省は「(日本の措置は)荒唐無稽で国際法、常識違反で無効」「日本が暴挙を続ければ、自ら報いを受けることになる」と激しく警告を発した。
同日、尖閣諸島北東の日本の排他的経済水域(EEZ)内で調査中の海上保安庁の測量船に、中国国家海洋局の海洋調査・監視船が接近、調査中止を要求し、丸2日半にわたって追跡した。
中国の抗議の不条理
12日午前0時、今度は外相より格上の戴秉国国務委員が丹羽大使を呼びつけた。「情勢判断を誤らず、賢明な政治判断」を迫り、さらなる対応措置を取ると示唆した。
中国の抗議の不条理はここに極まった感があるが、仙谷官房長官は「こういう時間帯に呼び出すということは日本政府としては遺憾だ」「いずれにしても冷静に対応している」と述べた。日本政府として抗議したつもりであろうが、領海侵犯した中国漁船の非と中国政府の要求の非については語らない的外れな反論である。
この間、中国政府は東シナ海ガス田共同開発に関する条約締結交渉開催や全国人民代表大会副委員長李建国氏の訪日を延期して圧力をかけ続けた。日本政府は圧力に屈して13日、中国船員14名の帰国と船の返還に応じ、仙谷長官はこう述べた。
「漁船の違法操業との関係でガス田協議を中止するといわれても困る。私の予測では、14人と船がお帰りになれば、また違った状況が開かれてくる」
他方、中国外務省は船員の帰国について、「日本側と厳しい交渉をし、領土と主権を守る断固とした決意を示した」と勝利宣言をした。
漁民らが中国に「お帰りになれば」事態が改善すると考えた仙谷氏の読みのなんと浅いことか。領海侵犯に対して国家として表明すべき憤りや抗議を全く発信出来なかった菅政権は、外交についてなんと昏(くら)いことか。仙谷氏の期待に反して「領土と主権」を断固守ったと勝利宣言した中国政府は笑っていることだろう。杏林大学名誉教授の田久保忠衛氏が嘆いた。
「国としての対応能力を失っているのです。民主党政権の対中外交は初めから負けの姿勢です」
田久保氏は、東シナ海問題における日中の立場が逆転したと語る。
「東シナ海のガス田交渉引き延ばしの中国側の狙いは、実効支配の基盤を固めることです。日中両政府は交渉を進めることを正式に確約しているわけですから、日本側は交渉開始を要求する立場でした。ところがいま、事態の好転を願って取り調べも不十分なまま船員を釈放し、交渉開催をお願いする立場に後退してしまいました。中国はやがて時機をみて、東シナ海の実効支配へと、次の手を打ってくると考えるべきです」
安倍晋三元首相も、尖閣諸島と東シナ海の状況は非常に深刻かつ異常だと見る。
「民主党は船員も船も返しましたが、船長だけでなく、全員を領海侵犯で取り調べ、船内も厳しく捜索すべきでした。領海侵犯は国家主権への重大な挑戦です。菅さんも仙谷さんもその重大性に気づいていないのでしょう。船員を釈放したいま、せめて船長だけでも徹底的に取り調べることです」
「本当に日本は危うい」
安倍氏は、中国に日本政府の決意を見せるためにも、海保、海上自衛隊を尖閣諸島周辺海域に派遣して、上陸阻止訓練を行うのがよいと語る。
「戦略的、外交的環境を整えつつ、尖閣の守りを固めることが大事です。台湾には尖閣問題を日台分離に利用する中国外交の罠に落ちてはならないと説き、同時に、米国との関係修復に最大限の努力をしなければ、本当に日本は危ういことになります」
中国の対日強硬姿勢は、菅政権が国内問題で手一杯で外交、安保に有効な手が打てないこと、普天間問題で日米安保体制が揺らいでいることを見抜いているからだ。
「沖縄基地問題の解決と日米関係の修復に民主党は文字どおり、日本の命運をかけて取り組まなければならない」と安倍氏は指摘したが、そのとおりであろう。田久保氏が民主党政権の限界について語った。
「小沢氏は国会議員を140余名引き連れ北京詣でをし、菅・仙谷両氏は外交・安全保障がわかっていないと見くびられています。彼らは、発生した事態に反応することしか出来ない。戦略的に外交・安保政策を組み立てて、手を打っていく発想も能力も、残念ながらないのです」
田久保氏は、中国の対日強硬姿勢の裏に、このところまたもや進みつつある米中接近があると喝破する。
「サマーズ米国家経済会議委員長とドニロン大統領次席補佐官が訪中し、7日に温家宝首相や徐才厚中央軍事委員会副主席に会いました。台湾への米国製武器輸出などで、米中はこの1年、緊張関係にありましたが、彼らは再び戦略的に関係修復に乗り出しています。米中接近で疎外されれば日本はどうなるか。おまけに菅政権には自国領土を守る気概さえないのです。最悪の外交的敗北、悪夢のような事態が予想されます」
東シナ海で、これから何が起きるかは、南シナ海を見れば予想出来る。そこでは中国が全てを自国の領土領海だと宣言し、軍事力を行使して実効支配を続けている。菅・仙谷両氏は尖閣と東シナ海を日本領だと認識しているのか。認識しているなら、国土、領海を守る気概を見せて、具体的行動で示すことだ。
中国は100年前の帝国主義そのもの…
日本の領土、尖閣諸島沖で日本の海上保安庁の船2隻に故意にぶつけた為に
捕まってた船長を解放したら、今度は謝罪と賠償を中国は求めてきた・・。
…
トラックバック by 経済的自由人を目指す会 — 2010年09月25日 12:56
中国反日暴動のトリックとは?…
結論から言うと、反日暴動、デモ等は決して組織的なものでなく、ましてや反日でもない。巧妙なトリックでしかない。以下にいくつか事件を並べた後に真相を検証する。…
トラックバック by スカイ・ラウンジ「有視界飛行」 — 2010年09月26日 11:59
中国から見れば赤子の手をひねるようなもの…
日本が唱える友好とは共存共栄のことだが、これが中国に通用すると思っているところに民主党政権の甘さがある。中国にとって友好とは、表現は汚いがお互いの「玉」を握り合うこと。イザという時は仕掛けた方も甚大な被害に合うことを前提に成り立っている平衡を指す。従って、先きに船長を返してしまっては、平衡状態しいては交渉にならない。恫喝し放題の状況が出現する。船長を先きに返せば事態が収拾に向かうと考えていたとは外交音痴も甚だしい。あくまで地検判断は起訴とし、政治判断は可能だがとカードをちらつかせ、譲歩を……
トラックバック by スカイ・ラウンジ「有視界飛行」 — 2010年09月26日 22:42
嘘も千回繰り返せば真理となる…
◎日中戦争を催促
今回の尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件では、嘘も千回繰り返せば真理となるというスローガンが盛んに聞かれる。嘘も千回繰り返せば真理となるとは、中国共産党の発明ではない。これはナチス・ドイツのゲッベルス宣伝相の発案になるものである。
今のところ、日本としては、根拠のない言いがかりをつけられた被害者気取りだが、これは欧米が日中に対して戦争を催促しているものである。欧米外を戦場とする戦争は欧米を一挙に好景気にさせる効果が高いからである。
特にアメリカは日本のマスコミを顎使して、日本人に対…
トラックバック by アヴァンギャルド精神世界 — 2010年09月28日 06:23
中国を見誤るな…
これまで当ブログで何度も述べてきた通り、中国共産党政府の方針は一貫している。彼ら…
トラックバック by 野分権六の時事評論 — 2010年09月28日 10:31