「 温室効果ガス25%削減で国民はいくら負担するのか 」
『週刊ダイヤモンド』 2009年10月3日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 807
日本時間の9月22日夜、鳩山由紀夫首相はニューヨークの国連本部で開かれた国連気候変動首脳会合の開会式で演説した。2020年までに温室効果ガスを1990年比で25%削減するという中期目標を表明した。
目標値達成は、全ての主要国の参加による意欲的な目標の合意が前提となるとの条件をつけたうえで、「鳩山イニシアチブ」として、途上国や島嶼国に対する無償の資金・技術援助計画もうたい上げた。
国際社会への“華々しい”デビューを果たした後、鳩山首相は高揚した表情で「なかなかおもしろかった」「あれだけお誓いしたのだから、しっかりやらなければならない」と語ったが、私は25%という数字の一人歩きを強く危惧するものだ。
国際公約になった25%削減策に、国民は高い支持を与えている。メディアの報じ方は、テレビ朝日の「報道ステーション」のように、前のめりといってよい熱心な賛成派から、日本のひとり相撲になるべきでないという意見まで、大別すると二分される。それにしても、90年比25%の削減は05年比換算で30%である。どの国も打ち出してはいない大胆な目標だ。
同案をまとめた福山哲郎外務副大臣は、副大臣就任前の取材で、「画期的な目標を掲げ、21世紀の環境政策をリードすることが、日本の活路を開く」と熱心に語った。
確かにそのとおりだ。それも国民、企業の理解と支持があってこそ可能だ。
だが、前代未聞のこの削減幅がどれほどの負担を伴うものかについて、民主党はほとんど説明していない。少なくとも麻生太郎前首相は、自民・公明案の05年比15%の削減を実現するには、62兆円の投資が必要だという見通しや、一世帯当たり76,000円の負担増になるなど、必要最小限のことは説明した。民主党は、マニフェストには25%削減と書き込んだが、25%の削減を国内で行なうのか国外から排出枠を購入するのか、その場合、税で負担するのか企業負担とするのかも明らかにしていない。
鳩山首相の大胆な「お誓い」とは対照的に、米中両国はいっさいの数字を口にしなかった。それどころか、中国は先進国の責任を強調した。地球全体で排出する二酸化炭素の約45%を占める米中両国はさぞかし、日本を与しやすしと見たであろう。
地球全体の4%しか排出していない日本は、高度の省エネ技術をつくり出し、実践してきた。日本がもう一%削減するのにかかる費用と、米国や中国が一%削減するのに必要な費用は同じではない。高い水準を達した国がさらに高い水準を目指すには、幾何学的にコストが上昇するのは、常識である。
鳩山首相にはぜひ、この限界削減費用、追加的に一単位削減するための費用に留意してほしい。東京大学先端科学技術センター特任教授の山口光恒氏は「ECOマネジメント」の中で、これを「それまでの時点でそれより削減費用が安い対策や技術は全て導入しているとの前提に立ったうえで、さらに追加的に温室効果ガスを一単位削減するための費用」と説明している。
麻生前首相は、当初、05年比で14%削減を考えていたが、1%積み上げて15%にした。1%を加えただけで、さらに10兆円のコストがかかると説明した。麻生案を基準にしても、日本と欧米の限界削減費用は3対1、つまり、日本で一単位削るには欧米の3倍のコストがかかることが明らかにされている。中国、インド、ロシアなどと比べれば、さらに差は開く。
麻生案よりさらに高い数値を目指す鳩山案実現にかかる費用については、多くの研究機関がシミュレーションの範囲を超えていると断ずる。こうしたことについて、民主党は国民と経済界に、きちんと説明しなければならないだろう。
国慶節に思う。(12)…
このことは、日本としては真剣に考えなければならない。マスキー法のように、法制化して強制されて、何とか日本の自動車メーカーは技術開発に努力して排ガス規制をクリアしてきた例を基に、CO2の25%削減も何とかなるであろう、などと現(うつつ)を抜かす技術馬鹿も実際には存在している。これがまた問題なのである。
マスキー法は1970年12月に改正された法律で、1975年以降に生産される自動車の排気ガス規制であり、次のようなものである。
1975年以降の生産車は、一酸化炭素CO2、炭化水素HCの排出 量を1…
トラックバック by 世の中、まちがってる、根拠なき反日キャンペーン。 — 2009年10月29日 21:19