「 現在革命続行中、文在寅政権の異常さ 」
『週刊新潮』 2019年1月24日号
日本ルネッサンス 第836回
個人的な感想だが、韓国の文在寅大統領は「信用できない男」の典型ではないか。とりわけ1月10日、韓国大統領府で開かれた年頭の記者会見での発言や表情は、知的に耐えきれないものだった。
韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊の哨戒機に、日本の排他的経済水域(EEZ)内で、火器管制用レーダーを照射した問題でも、「朝鮮人戦時労働者問題」(自称徴用工問題)でも、文氏以下韓国側は自らの非を認めず、逆ギレを続けている。
レーダー照射問題に関して、韓国は、自衛隊機が低空で威嚇的に飛行したと言った。ではなぜ、その場で抗議しなかったのか。日本側が低空飛行などしていなかったから、抗議できなかったのであろう。
加えて、彼らは当初、レーダー照射をしなかったとは言っていない。低空飛行を持ち出して問題をすり替えたのは、なぜか。
日本のEEZ内で韓国の大きな艦船が2隻も目視され、しかもまん中に漁船らしき小さな船をはさんでいるとなれば、日本の海や空を守る哨戒任務についている自衛隊機が、上空から様子を見るべく接近しないほうがおかしい。当然の責務として近づいた自衛隊機にレーダーを照射して追い払おうとしたのは、韓国側に隠したいことがあったからだろう。
どうしても見られたくない現場がそこにあったために、レーダーを照射したのではないか。隠したいことはよほど重要なことである可能性も高い。その点も含めて韓国側は重大な嘘をついていると考えてよいだろう。
もう一方の朝鮮人戦時労働者問題を、文氏は、「韓国政府がつくり出したのではなく、不幸な歴史のために生じた問題」だと語り、日本政府に「もう少し謙虚になるよう」求めた。
韓国大法院(最高裁)が下した判断を、韓国は三権分立の国であるが故に、韓国政府は尊重せざるを得ない、そのことを日本政府も認識せよと、文氏は言ったが、同問題の背景に、文氏の遠大な企みがあったと見るのは決して深読みのしすぎではないだろう。
親北朝鮮の完全な左翼集団
日本企業に慰謝料の支払いを命ずる判決を下した大法院長は金命洙(キムミョンス)氏だ。一昨年9月に文氏が大抜擢した。金氏は「ウリ法研究会」の一員で「親北朝鮮、反日反韓国」の極左思想の持ち主だ。金氏を大法院長に任命したときに、すでに今回の判決の流れが決まったといえる。
韓国で朝鮮人戦時労働者問題の訴訟を支えるのは「法務法人ヘマル」の弁護士達だ。「太平洋戦争犠牲者補償推進協議会」や「民族問題研究所」が支援組織として名を連ねている。
「ヘマル」の中心人物、張完翼(チャンワンイク)弁護士は、2000年に元朝日新聞の松井やより氏(故人)らと共に、昭和天皇を裁き有罪にした女性国際戦犯法廷を開催し、検事役を務めた。また、民族問題研究所は親北朝鮮の完全な左翼集団である。
留意しておくべきことは、文氏が大統領選挙に出馬したとき、法務法人ヘマルが全面的に支えたという事実だ。後述するように、朴槿恵前大統領を弾劾して行った選挙はまさに「革命」と呼ぶべき異常なものだった。その異常な選挙を乗り切るのに法的支援をしたのが法務法人ヘマルだった。両者はまさに一心同体と言えるのではないか。
こうしてみると大法院を支配する価値観と、戦時労働者訴訟の原告団を支援する勢力の価値観は重なる。私たちはこうした人々相手の尋常ならざる闘いに直面しているのだ。
右のような陣容で裁判をおこし、その中で下された判決を、韓国側は三権分立を盾にして日本も尊重せよと言う。だが日本にも最高裁が存在する。日本の最高裁は朝鮮人戦時労働者の件はすべて解決済みと判断した。日本も三権分立の国だ。日本政府も日本の最高裁判決に従わなければならない。その事実を、韓国政府こそ、認識すべきであろう。
現在の韓国政府にはいちいち違和感を覚えるが、日本で発行されている韓国の週刊新聞、『統一日報』の1月1日版に韓国の常識派の論文が複数、掲載されていた。そのひとつが、ソウル大学経済学部教授を経て、昨年から「李承晩学堂」の校長を務める李栄薫(イヨンフン)氏の講演である。
李氏は「反日種族主義を打破しよう」という題で語っている。李氏は「精神文化の遅滞が、20世紀の韓国史を貫通してきた」と断じ、20世紀の韓国の近代化を、韓国人は「無賃乗車」で成し遂げたと指摘する。「近代文明の法、制度、機構は日本の支配と共にこの地(韓国)に移植された」のであり、国が滅びたのも国を建てたのも「自力」ではなかったと、韓国人が一番聞きたくないことを、李氏は語っている。
精神文化の遅滞
それでも韓国がこの70年間大きな成果をおさめたのは、李承晩、朴正煕両大統領をはじめとする「創造的少数」の功績だと李氏は続ける。その上で韓国がいま、失敗の中にあるのは「種族主義」のためだと言う。種族主義とは何かと、『統一日報』担当者に問い合わせると、民族主義以前の閉鎖的で遅れた段階を指すとの説明だった。
李氏は、そのような精神文化の遅滞ゆえに、韓国は「国際感覚において不均衡」、「日本に対しては無期に敵対的である反面、中国に対しては理解できないほど寛大だ」と分析する。
もうひとつ『統一日報』には、前大統領、朴槿恵氏の弾劾及びその後の有罪判決に関して、非常に重要な論文が掲載されている。
朴槿恵氏は過日、32年の懲役刑を下された。66歳の氏は、98歳まで獄に留め置かれるということだ。このような結果になった朴氏弾劾事件を同紙は、「韓国憲政史上、最も恥辱的な出来事」と痛烈に非難している。弾劾の引き金となった唯一の物的証拠が「タブレットPC」だったが、これは後に偽物だと証明された。このPCへの疑惑を提起したジャーナリストは逮捕され、実刑を言い渡された。
どこを調べても朴氏は一ウォンのお金も不正に得ていなかったが、韓国司法は朴氏に罰金200億ウォン(約20億円)を宣告した。収賄の証拠が皆無だったために、裁判官の心証に基づいて「暗黙的請託」という新たな論理をひねり出し、重罪に処するために韓国の刑法にない「国政壟断罪」も急遽作り出した。
弾劾から裁判に至る過程を見れば背後に広範な工作があり、それは北朝鮮との共謀関係の中でこそ可能だったと思わせられる。
論文には「韓国では嘘をつくことは、特に左翼勢力の嘘はほとんど処罰されない」と書かれている。
こんな国が文政権下の隣国だと肝に銘じつつ、常識と良識を備えた韓国人の存在も忘れないようにしよう。