「 韓国との情報戦に立ち遅れている日本 手強い存在と心して戦うことが必要だ 」
『週刊ダイヤモンド』 2018年12月22日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1261
12月4日、東京の日本外国特派員協会、通称外国人記者クラブで、「朝鮮人戦時労働者」の裁判について、韓国側弁護団が会見した。
朝鮮人戦時労働者はこれまで「徴用工」と呼ばれてきた。しかし、戦時中、日本に働きにきた朝鮮半島の人々の多くは民間企業の募集に応じた人々で、必ずしも徴用された人々だけではない。安倍晋三首相も国会で述べたように、新日鐵住金を訴え、判決が10月30日に下された裁判の原告4人は全員、徴用工ではなかった。そのような事情から徴用工の代わりに「朝鮮人戦時労働者」と呼ぶ。
会見した韓国人弁護士達は、韓国で新日鐵住金を訴えた裁判で原告の代理人を務めた大弁護団の一部だ。会見に現れたのは金世恩(キム・セユン)、林宰成(イム・ジェソン)両氏らである。両氏共に若く、韓国の法務法人「ヘマル」に所属、或いは関係が近いと見られている。
彼らは会見当日、新日鐵住金本社に二度目の訪問を強行し、面会を断られている。要請書を置いてきたそうだ。内容は韓国大法院(最高裁判所)の判決に従って、朝鮮人戦時労働者に慰謝料を支払い、謝罪することが必要で、いつ、どのような形で実施するか、12月24日午後5時までに回答せよというものだそうだ。
彼らは、さらなる訴訟を準備中で、新日鐵住金側が韓国側との協議に応じない場合、差し押さえ手続きに入る予定だと明言した。
彼らはさらに、新日鐵住金が韓国で保有する資産、PNRという企業の株式234万株は約110億ウォン(約11億円)に相当し、差し押さえの対象だと語った。新日鐵住金保有の韓国における知的財産権は3000件余りで、こちらも差し押さえの対象だという。
新日鐵住金側には一切妥協する気配はない。それで正しいのである。
韓国側の主張には、おかしな点が多い。そのひとつが朝鮮人を労働させたのは国際労働機関(ILO)29号条約に反するという主張であるが、この指摘は間違いだと言ってよいだろう。
29号条約は「処罰の脅威の下に強要される」労働を強制労働としており、強制労働は時効のない犯罪である。ただ、「緊急の場合、即ち戦争、火災、洪水、飢饉、地震……」などに対処する強制労働は例外として許容されている。
ILO専門委員会は朝鮮人戦時労働者問題に関して、救済策を講じよという意見を日本に出してはいるが、その一方で、補償問題は日韓請求権協定で全て解決済みだとする日本政府の主張は正しいと認めてもいる。
ILOの見解には微妙な矛盾が見てとれるが、これは近年の「個人を救済する」思想を反映するものだ。
そこで重要になるのが、朝鮮人労働者への実際の待遇や労働条件は当時の状況の中で受け入れられるものだったかどうかである。日本企業の資料や当時の労働者の証言は、日本企業の待遇がきわめてまともだったことを示している。だが、不足しているのが、そうした情報の発信と周知徹底である。
長崎県端島、通称「軍艦島」をテーマに韓国が作った映画は大嘘の満載で、日本での労働はまるで地獄だったなどという酷い情報が世界に拡散されている。この種の情報戦に日本は立ち遅れている。加えて懸念されるのは相手の弁護団である。彼らは長年日本を標的にしてきた手強い存在である。
冒頭で触れた韓国の法務法人「ヘマル」の中心人物が、張完翼(チャン・ワンイク)弁護士だ。氏は、慰安婦問題で日韓両政府を激しく攻撃することで知られる韓国挺身隊問題対策協議会の活動に1994年から参加、2000年には、松井やより氏やVAWW-NETジャパンなどが主催した女性国際戦犯法廷で韓国側検事役を務めた。同法廷は日本国天皇を裁き有罪を宣告した。こういう人々が相手だ。心して戦うことが必要だ。