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2017.08.19 (土)

「 日米韓連携を覆しかねない朝鮮半島情勢 韓国が危うくなれば日本に必ず負の影響 」

『週刊ダイヤモンド』 2017年8月12・19日合併号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1194
 

平和の内に夏休みを迎えている日本とは対照的に、朝鮮半島情勢が厳しい。南北双方の事情は日米韓の連携を根底から覆しかねない。その結果生ずる新しい事態へ備えを急がなければ、日本は窮地に陥る。

7月4日と28日の2回、北朝鮮はミサイルを発射した。米国本土中枢部、たとえばワシントンに到達する飛距離1万キロメートルを超える大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成に、彼らは急速に近づいている。

北朝鮮抑制に真剣に取り組まない中国に米国が苛立つ。危機感から韓国への戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)配備を急ぐが、文在寅韓国大統領の揺らぎも米国の苛立ちを加速させる。

北朝鮮が先月2度目のミサイル発射を深夜に決行した当日、実は文氏はTHAAD配備を事実上遅らせることになる一般環境影響評価(アセスメント)の実施を発表していた。

米国は韓国に既に2基のTHAADを配備済みだ。別に4基を韓国に運び込んだが、配備には至っていない。文氏はこの4基のみならず、配備済みの2基も、排除するつもりで環境アセス実施を指示したのだ。

ところが同日深夜、金正恩氏がミサイルを発射すると、文氏は残る4基の配備を急ぐとして、従来と逆の決断をした。文氏は遂にTHAAD配備を認めたが、米韓同盟が長期的に強化されるか否かは定かではない。

有事の際の戦時作戦統制権を巡って米韓両国はいずれ韓国が統制権を持つことに合意しており、その路線に変化はない。文氏は6月29日のドナルド・トランプ米大統領との首脳会談で同問題を取り上げ、韓国への統制権「早期」返還を求め、トランプ大統領もこれを了承した。結果としてTHAAD配備を急ぐ間にも、ソウルに駐留する米軍の南後方への移動が着実に進められている。

7月11日、米第8軍司令部はソウル中心部の竜山基地から南の平沢への移転を完了した。第8軍司令部は朝鮮半島有事の際の米韓両軍の司令塔になる組織だ。日本にたとえれば座間に駐屯するシアトルの第1軍団前方司令部に相当する組織で、有事の際に全体の作戦を指揮する中枢部隊だ。日米韓3国が北朝鮮や中国の脅威に対処しなければならないとき、その頭脳として機能するのが第8軍司令部だ。

朝鮮半島有事の際、韓国防衛には在日米軍基地からの応援が欠かせない。在日米軍基地は日本の協力なしには機能しない。日米両国との良好な関係なしには、韓国の自国防衛は困難だ。

片や日本は2年前の安保法制で米国軍やオーストラリア軍に後方支援を行えるようになった。だが、韓国との安全保障上の協力体制はとても不十分で、加えて日韓両国に信頼関係が確立されているとは言えない。

そのような中で文政権が戦時作戦統制権を米国から取り戻し、そのときに有事が生じたら一体どうなるか。作戦の指揮権を手放した第8軍司令部が韓国防衛の戦いを指揮することは、無論、ない。のみならず、米韓連合軍司令部は恐らく解体に至るだろう。つまり、北朝鮮あるいはその背後の中国を相手に、韓国は非常に難しい戦いを強いられることになる。

他方、日本は米国への後方支援は行うが、安全保障上の基本的協力関係も形成されていない韓国軍を直接支援することはできない。その先にどんな結果が韓国を待ち受けているのか、想像するだに気の毒だ。

文氏の作戦統制権の早期奪還計画は、北朝鮮への屈服とより強い中国の支配を受けることにつながってしまうだろう。韓国が危うくなるとき、日本は必ず負の影響を受ける。加計学園問題などにかまけるのではなく、じっくり世界を見渡し、いかにして日本周辺に迫る危機を乗り越えるか、そのことをわが事として考える夏休みにしてほしい。

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