「 天皇陛下の譲位、総選挙、憲法改正 国政は今秋から大仕事がめじろ押し 」
『週刊ダイヤモンド』 2017年1月14日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1165
国政は今年秋から再来年の平成31(2019)年までが大仕事を成し遂げる年だと、安倍晋三首相に最も信頼されている記者の1人は語る。天皇陛下のご譲位、総選挙、憲法改正案の発議と国民投票などがこの間になされるとの読みだ。
これは昨年12月30日、「言論テレビ」の番組で、「産経新聞」の名物記者、政治部長にして黒シャツ姿で知られる石橋文登氏が語ったものだ。
今年1月とみられていた総選挙はもはやないが、その後の政治日程を見ると、総選挙を打てるのは今年秋に限られると強調する。理由は、平成31年は参議院選挙、32年は2020年で東京五輪、33年は安倍首相が任期を3期務めるとしてその最後の年になる。以上を考え合わせて首相の大目的である憲法改正を念頭に置けば、総選挙は今年秋にしか打てないという。
「民進党と共産党が選挙協力すれば自民党は現有議席から47議席ほど減らし、自公で過半数割れを起こすとみられます。その代わり、民進党も終わりの始まりの局面に立ちます」と石橋氏。
それでも今年秋に総選挙に踏み切る理由は、日本維新の会の橋下徹氏を国政に巻き込む戦略が基本にある。
「自民党もよくやっているが、政権交代可能な第二政党が必要だという有権者の思いは強い。橋下さんが立てば、民進党にも影響を及ぼします。京都選出の前原(誠司)さんなど、政権交代を目指す人物は少なくないですから」
つまり橋下氏の国政への出馬は野党が割れるきっかけになる。結果として、自民党だけでなく改憲を目指す勢力の拡大をもたらすという読みだ。その上で平成30年の国会会期を大幅に延長して、衆参両院で十分な議論をする。憲法改正案の発議にこぎ着けるのに丸々1年。その上で国民の決定に委ねるのは、平成31年の春のころと、石橋氏は読む。
その前には、天皇陛下のご譲位への思いに応えつつ、国家としての基本的在り方を守らなければならない。意見が分かれている中、ご譲位という大きな方向は定まったが、それを特別法で乗り切るのか、皇室典範に手を付けるのか。民進党をはじめ野党の考えや、皇室のお考えもある。この件だけは争いのないようにつつがなく成し遂げなければならない。
東京都議選もある。国政レベルとは対照的に自公分裂になりそうな首都選挙をどう乗り切るのか。石橋氏は、安倍首相は極めて現実的だと強調する。
「大目標がはっきりしている人で、それ以外のことは妥協も構わない。今だから言いますが、郵政民営化のとき、衛藤晟一、平沼赳夫、古屋圭司各氏ら、もともと安倍さんと非常に親しい人材が亀井(静香)さんに乗せられ反対し、小泉政権をつぶそうとした。安倍さんが最後の段階で彼らに言ったのは、郵政なんかよりもっと大きな目標がある。自分たちが政治家としてやろうとしているのは憲法改正、安全保障などじゃないかということでした」
国際情勢の大変革を眼前に見ながら、いま安倍首相が目指すのは、自国は自力で守るという国家の基本を整えること以外にない。その意味では憲法改正の最大の目玉は9条2項だと、石橋氏は言い切る。
「2項を削るか、それとも3項を書き加えて、自衛隊が憲法で認められていない現状を解消することでしょう」
石橋氏は、実はこの他にも非常に多くの興味深いことを語ったのだが、1つだけご紹介する。
「僕が勝手に考えた総理になれる三条件は、(1)細かいこと。言い換えればセコいこと。(2)恨みは決して忘れず執念深いこと。(3)見掛けほどアホじゃないこと。森喜朗、小渕恵三、小泉純一郎、皆三条件を満たしています。安倍総理もそう。例外が麻生(太郎)さん」
番組ではここで爆笑、氏の見立てはもっと続いたが、今回はこれで終わり。