「 朴大統領弾劾運動の背後に北朝鮮勢力 現実になりそうな「韓国の消滅」 」
『週刊ダイヤモンド』 2016年12月24日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1163
大韓民国という国が消滅する。フィクションのようなことが、現実になるかもしれない状況が生じている。
崔順実(チェ・スンシル)という女性実業家に便宜を図り、国政への介入を許した朴槿恵大統領は弾劾されたが、機密情報を民間人に漏らすなどしており、仕方がないことだろう。同時に、弾劾に向けて暗躍したのは、韓国政府が国家保安法違反の利敵団体に指定した北朝鮮系の革命勢力グループであることも忘れてはならない。
革命勢力とは具体的には「祖国統一汎民族連合南側本部」「民族自主平和統一中央会議」「民主民族平和統一主権連帯」など、北朝鮮主導の組織である。彼らは「民衆総決起闘争本部」をつくり、各種労働組合などを傘下に収めて、一連のデモを統括した。
ソウルに吹き荒れた反朴デモで人々が歌っていた「これが国か!」という歌は、国民を守れないこんな国は国家ではない、と朴政権の現状を批判・非難する内容だが、3番の歌詞を見れば、朴大統領批判を超える革命歌であることが分かる。「(与党の)セヌリ党も(保守系新聞の)朝鮮日報も、醜悪な共犯者だ。おまえたちも解体してやる!」。国家体制を破壊せずにはおかないという、まさに革命歌だ。
作詞作曲者はユン・ミンソク氏、前科4犯、いずれも政府転覆と体制変換を企んだとして国家保安法違反で逮捕されたものだ。四度逮捕されたが、そのたびに短期間で釈放されてきた。韓国の司法が北朝鮮勢力の影響下にあるからだと指摘されている。
氏はまた北朝鮮の工作員が韓国に潜入してつくった組織に加入し、1992年に北朝鮮の故金日成主席をたたえる歌も作詞作曲した。およそ日本では考えられない、驚くような状況が韓国に出現しているのである。
約四年前に朴政権が誕生したとき、朝鮮半島問題の専門家は「南北朝鮮それぞれの、時間との競争が始まった」とみた。その心は、北の体制と南の体制のどちらが先に崩壊するのか、先に崩壊した側が残った側に吸収合併される形で朝鮮半島が統一に向かう可能性が出てくるという読みだった。
今、南北朝鮮間で優位に立っているのは、北朝鮮だといえる。人口は韓国の半分、経済は40分の1。国民を苦しめるだけの独裁国が韓国より優位に立てるのは、情報戦の結果である。
北朝鮮工作員は長年韓国への潜入を繰り返し、思想的、政治的に韓国人を親北朝鮮に染め上げてきた。その総仕上げが今だとみて、金正恩第一書記は全力を挙げている。朴政権のみならず、韓国の保守勢力をつぶしにかかっている。韓国が先に転んだこの絶好の機会を逃さないよう金氏は全力を尽くしているが、その1つの側面が北朝鮮の影響下にある在韓国勢力の手元にかなりの資金を集中させていることだといわれている。
朴大統領への弾劾訴追可決によって、黄教安首相が大統領臨時代理となった。黄氏は2014年に北朝鮮の代理政党といってよい野党、統合進歩党を解体したしっかりした人物だ。
弾劾を認めるか否か、憲法裁判所の判断は180日以内に出されるが、その間に黄氏は保守勢力の基盤を立て直せるだろうか。国民世論は北朝鮮主導の反朴運動の熱狂から覚めて、落ち着きを取り戻せるだろうか。韓国は命運を決する岐路に立っている。
仮に保守勢力が巻き返せず、世論も反朴運動の背後にある北朝鮮勢力と彼らの意図に気付かないまま、来年の大統領選挙に突入する場合、韓国は事実上消滅するかもしれない。どの候補者を見ても、現在より左翼的政権になるのは明らかで、それはすなわち、反日政権ということだ。反朴運動に関わる北朝鮮の働き掛けと意図を認識し、日本の側から韓国に向けて、全体像を伝える情報を発信すべきだ。