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2014.04.26 (土)

「 廃炉に向けて前を見る地元 目に余る小泉・細川両氏の言動 」

『週刊ダイヤモンド』 2014年4月26日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1032

小泉純一郎、細川護煕両元首相が、脱原子力発電を目的とする一般社団法人、「自然エネルギー推進会議」を設立する。5月7日、都内で設立総会を行うそうだが、それに先立って福島の地元紙、「福島民友」が4月16日の1面トップで同ニュースを大きく報じた。見出しは「知事選で脱原発候補支援」「小泉、細川元首相が検討」「選挙構図に影響か」などとなっている。

福島県は2011年10月に県議会が福島県内の「全原発廃炉」を求める請願を賛成多数で採択済みだ。請願には法的拘束力はないが、原発の運転再開については立地自治体の意向を尊重するのが政府の立場であるため、請願の採択は大きな影響を及ぼす。つまり、福島県にとって脱原発か否かは一応区切りのついている事柄なのだ。

問題はむしろ、県経済の大きな柱として雇用を提供してきた原発無しに、これからどのようにして住民の暮らしを立てていくかである。その意味で福島がこれからの数十年、廃炉に向けて技術を高め、世界のモデルとなる完璧な作業を実施していくことで生活の目途を立てたいとしているのは周知の通りだ。

廃炉には原発についての深い知識が必要なのは言うまでもない。そのために、高水準の知識と技術を有する専門家や職人を確保し続け、さらに後継者も育成しなければならない。原発運転によって生活してきた原発近隣の自治体が、廃炉に向けての技術力によって暮らしを立てるべく方針転換したとはいえ、その実態は原子力関連の技術を磨くという意味では全く変わらない。そう考えれば、決して脱原発ではないのだ。小泉・細川両氏にそのことは理解できているだろうか。

地元で実感するのは、そこに住む人々、あるいは近い将来古里に戻りたいという人々が、廃炉という大事業に前向きに取り組もうとしていることだ。廃炉という言葉の響きは後ろ向きかもしれない。けれど、住民の心は前向きである。むしろ、前向きになることによってしか、活路は見いだせないことを自覚して皆が努力している。各地域を住民が安心して住める場所へと作り替えていくことも、前向きの発想無しには実現は難しいだろう。

福島第一原発で働く東京電力の社員も同様に前向きである。彼らは一様にこう語る──「われわれは地元が完全に再生するまで、絶対に逃げません」。

東電への世間の風当たりが強い中で、事故発生から今日に至る日々、社員の多くが原発サイトでの仕事だけでなく、民家や道路の除染に無償で尽力してきたことを、地元の人々であれば知っている。そうした積み重ねがあればこそ、地元の人々と東電社員の間には、福島再生という大目的に向かう立場から、相互理解が生まれ、一種の連帯感へと深まりつつある。地元を訪れるたびに、私は、問題に果敢に取り組む現地の人々と、そこで黙々と働く東電社員の姿に、心を打たれて戻ってくる。

その地元の人たちが今回の小泉・細川両氏の活動に大変、立腹している理由も、私には分かる気がする。NPO法人ハッピーロードネットの代表、西本由美子さんが語った。

「こんな展望のないスローガンで若い人たちを集めて、福島から反原発の運動を広げようというのですか。小泉さんも細川さんも老害です。あの方たちはご自分の名声で福島に反原発旋風を起こそうとしているのでしょう。福島の沖縄化をもくろむということのように思えます。原発についてもう方針を定めている福島で、あまりに政治的な反原発運動はかえって迷惑です。福島でイデオロギーのための政治闘争などしてほしくないと思います」

小泉・細川両氏は代替エネルギーの見通しも示さずに脱原発を言い続ける。首相まで務めた政治家であれば、無責任な言動は慎むのが本分である。

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