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2014.03.06 (木)

「 朴槿恵対日外交の絶望的意固地 」

『週刊新潮』 2014年3月6日号 日本ルネッサンス 第597回
朴槿恵氏の大統領就任から、2月25日で1年になった。氏の反日言動はとどまるところを知らず、18日に訪韓したアメリカのロイス下院外交委員長に、慰安婦問題でまたもや日本非難を展開した。カリフォルニア州グレンデール市の慰安婦像に跪いたのがロイス氏である。

そうした中、韓国の通信社、聯合ニュースが中国の西安に、日本の朝鮮半島統治に抵抗した朝鮮人部隊「光復軍」の記念碑が建てられることになったと報じたことを、ソウルの産経新聞特派員、名村隆寛氏が伝えた。同計画は昨年6月に朴大統領が中国を公式訪問した折に要請し、中国側はこれに応ずるという。
韓国政府はまた、3月5日の国連人権理事会で慰安婦問題について国際社会に訴える予定である。

常軌を逸した日本非難に邁進する朴大統領を形容する言葉に「不通」がある。何を考えているか分からないという意味だ。

朴氏は閣僚ともプレスとも闊達な意見交換をするタイプではない。この1年間、国内で大統領が質疑応答を伴う記者会見をしたのは「一度だけ」と2月25日の「朝日」が報じていた。公式の会見や行事以外、友人らとの会食も殆どない。広い大統領公邸で愛犬を傍らに、資料や本を読んで過ごすという。情報筋によれば、朴氏側近も深夜まで働き、報告のメールを午前2時、3時という時間帯に送り、大統領はそのようなメールを見て、忠勤の度合いを測るという。

大統領就任前の2013年1月、朴氏は自伝『絶望は私を鍛え、希望は私を動かす』(晩聲社)を出版した。その中で、こう書いている。

「今も昔も変わらないことがある。初めて政界に入ったとき、これから私の人生は私のものではなく、国民のものだと思った決心、ただ国民と国だけを見つめようという初心には変わりがない」

現実の脅威には無防備

同書には、彼女は外国訪問の際に必ず、韓国を助けてくれた人々に感謝の気持ちを伝えると書かれている。

05年に会った胡錦濤国家主席(当時)は「優しい穏和な顔」「強烈なカリスマ」と憧憬の念を込めて描写し、同年、初対面のブッシュ政権のライス国務長官には「何度も会ったことがあるように親しみを感じた」と、親愛の情を示している。だが、日本人には最初から全く異なる感情を表現している。

06年、彼女は来日したが、「日本の指導者たちの相次ぐ妄言、竹島問題、小泉純一郎総理の靖国神社参拝、教科書問題、慰安婦問題」「韓日関係が悪くなった原因は日本にある」などと書き、日本で会った多くの政治家は「一様に日本側の論理で武装した人たちだった」と決めつけ、訪日は「歴史問題を解決できなければ、韓日両国は無限の可能性を持ってはいるが、一歩たりとも先へ進めないことを証明した」と結論づけている。

朴氏は孫子の「戦わずして勝つことが最上の方法」を引用し、日本に対してそれは外交の力だと説く。
「他のいかなる国との関係より忍耐が必要なのが、日本との外交だ」という朴氏の言葉は、どれほどの忍耐を重ねても外交で日本を追い詰め、謝罪させずにはおかない決意にも読める。

対日歴史批判を国家の重大事と位置づける一方で、氏は現実の脅威である北朝鮮には驚くほど無防備だ。

国連人権理事会の調査委員会は2月17日、北朝鮮についての最終報告書を発表した。北朝鮮の国家機関が政治犯や脱北を試みた人々、拉致被害者に行ったことを「反人道的犯罪」と断定し、「首領、国防委員会、国家保衛部」などの責任者を国際刑事裁判所に提訴することを国連に勧告した。金日成、正日、正恩の3名の刑事責任を問うべしとの結論である。

対して韓国政府は、2月に開かれた南北高位級の会談で、北朝鮮の核問題にも言及しなかった。そのうえ、北朝鮮非難をしないことを約束した。逆に、脱北者らが北朝鮮の体制批判のビラなどを入れた風船を飛ばすことを阻止すると決めた。朴大統領の状況判断が絶望的なまでに拙劣であることを示す一例である。

この種の韓国の外交を前に、アメリカは日韓両国に結束を求めてきた。2月13日のソウルでのケリー国務長官、尹炳世外相の記者会見録を読むと、韓国の意固地さが際立つ。米国の国益は日韓両国が歴史問題を横に置いて力強い三国関係を維持することだと強調したケリー氏の眼前で、尹外相は「日本の新政府(安倍政権)に対して、韓国は関係安定のための多くの努力をした。だが不幸なことに日本の指導者は歴史に関して不正確な多くの発言を重ねた。日本の歴史修正主義の言辞が続く限り、信頼構築は困難だ。性奴隷と歴史認識の問題は(二国間問題を超えて)国際問題だ」などと反論したのだ。

朝鮮半島はすでに有事

朴大統領、尹外相らは、物事の全体像と真実を見ることが出来ないのである。朝鮮半島はすでに有事に入っている。韓国政府中枢にまで北朝鮮勢力が浸透している。最後の砦ともいうべき国家情報院の危機は当欄でこれまでも報じてきたが、万が一、国情院が解体されれば、韓国は北朝鮮勢力の前で丸裸にされる。韓国という国の存在さえも危うくなる。そうした韓国の危機を好機ととらえる中国が、朝鮮半島全体に支配の網を広げつつある。

この局面で、韓国の味方になり得るのは日米である。だが、アメリカの軍事政策は大幅に変化しつつある。それを見れば、韓国は、自ら作り上げた虚構の歴史被害の罠に嵌って、自らの首を絞めるような日本非難を、直ちにやめるべきなのである。

ヘーゲル国防長官は2月24日、来年度の国防予算の方針を発表した。極めて大幅な削減である。米陸軍を52万人規模から44~45万人へと、戦後最小規模に縮小するのをはじめ、空軍の古い世代の攻撃機A―10は全廃、海軍の空母は11隻体制から10隻に、海兵隊は19万人体制から18・2万人に縮小される。

これらは第一段階の軍縮にすぎず、さらなる軍事費削減政策が続けば、米軍は複数の大規模有事発生の場合、「二正面作戦」は出来なくなると、ヘーゲル長官が語っている。

韓国はどうするつもりか。再度強調したい。すでに有事の北朝鮮、朝鮮半島を窺う中国、米軍の直面する厳しい削減――日本と仲違いしている場合ではないだろう。こんなことも見通せない朴大統領の限りない意固地は、指導者としての無能を示していないか。

だが、日本の現状もほめられたものではない。この厳しい安全保障環境にも拘わらず、いまも集団的自衛権に反対する人々がいる。その人々は憲法改正を行ってからにせよというが、そこまで中国が待ってくれると、本気で思っているのだろうか。

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