「 朴大統領が暗愚の闇から目覚めなければ韓国は危うい 」
『週刊ダイヤモンド』 2014年2月15日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1022
2月6日、安倍晋三首相は参議院予算委員会で、韓国との関係について、「積極的に出ていき、首脳会談が実現するよう努力を重ねていきたい」と関係改善に取り組む考えを強調した。
一方、韓国でも朴槿恵大統領が記者会見に臨んでいた。朴大統領は、北朝鮮の金正恩体制の基盤は極めて不安定で、今後が予測不可能になりつつあるとして、今年の韓国外交の中心軸を「朝鮮半島統一に向けた基盤構築」に置くことを明らかにした。
その際協力を呼びかける「核心的な国々」として、米国、中国、ロシア、EU(欧州連合)やASEAN(東南アジア諸国連合)を挙げ、日本を排除した。
同日同時刻に日韓両国の首脳は正反対のことを語ったわけだ。国家戦略として正しいのはどちらかと尋ねるまでもない。朴大統領の暗愚はとどまることがないのだろうか。
韓国は北朝鮮の脅威に対処する際、米国の支援を必要とする。このところ、たびたび行われている米韓両軍の合同演習は朝鮮半島情勢の逼迫ぶりを示すものだ。
韓国のために米軍が出動するとして、米海軍第七艦隊の母港は神奈川県横須賀である。度重なる韓国による執拗な対日歴史批判、米欧諸国にまで舞台を広げて展開する慰安婦問題に関する事実無根の日本非難、あくまでも日本敵視の韓国外交などで、日本国民が、米軍が在日米軍基地から韓国のために出動するのを快く思わなくなる日が来ないとも限らない。米軍が韓国に協力するのは構わないが、在日米軍基地がそのために活用されるのは嫌だと多くの人々が考え始め、そのような米軍の軍事活動に日本国は一切協力すべきでないとの世論が高まりでもしたら、日米軍事協力は壁にぶつかる。米軍は事実上、動けなくなる。
米軍が効果的に動けないとき、朴大統領は中国に救いを求めるのか。もしくはロシアか。それではたして韓国の自由と民主主義の体制を守れるのか。
北朝鮮をめぐる朝鮮半島での紛争を、中国が虎視眈々と狙っているのはいまさら言うまでもない。南北朝鮮問題は、米中、あるいは米中露問題であることを肝に銘じることだ。そのとき、ものをいうのは軍事力である。外交を変える力としての軍事力が朝鮮半島の勢力図を決定する。韓国の国益はいま日本と良好な関係を構築し、日米の協力体制の下で朝鮮半島を守ることで担保されるだろう。歴史と国際情勢を正しく理解できずに反日を叫んで留飲を下げるばかりでは朝鮮半島の未来は暗い。
韓国の現状は、ただでさえ、異常である。野党統合進歩党の李石基議員ら計10人が国家反逆の内乱陰謀罪で逮捕され、2月3日、李容疑者に懲役20年が求刑された。彼らは地下革命組織(RO)を結成し、北朝鮮の対南攻撃に呼応して韓国を混乱に陥れる具体策を練っていた。驚きは、北朝鮮の工作員と断定してよい人物が韓国の国会議員になっていたことにとどまらない。彼らが北朝鮮の偵察総局と連動していたとの見方が有力なことだ。偵察総局は、金正日から金正恩への権力移行が挫折しないように、韓国を積極的に攻めて吸収するために、金正日が死亡する前に新設した対南工作組織である。李容疑者と偵察総局のつながりは北朝鮮のために働いている反韓勢力が朴大統領の足元で暗躍していることを示す。
加えて北朝鮮の工作が浸透していない、韓国唯一の情報組織、国家情報院がいま、つぶされそうになっている。今月にも国情院の韓国国内での活動を禁ずる法律が可決される可能性があるが、その場合、韓国は本当に北朝鮮に吸収されるだろう。
朴大統領が見詰めるべき危機は、実はこうした事柄である。大統領が暗愚の闇から目覚めない限り、あの国は危ういと私は考える。