「 CO2と気温の関係に新説 気温上昇がCO2増加に先行する 」
『週刊ダイヤモンド』 2009年7月18日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 797
麻生太郎首相は、2020年までに温室効果ガスの排出を05年比で15%削減すると決定した。省エネも、CO2削減も大いに結構だ。しかし、政府の政策は合理的なのか、国益にかない、国際社会への真の貢献につながるのか、疑問である。
右の目標達成には、約62兆円の投資が必要とされる。一方、05年時点で日本のCO2は世界全体の排出量の4・7%を占める。その15%は、0・7%、日本は62兆円の巨額を投じて世界全体量のわずか0・7%を削減するわけだ。なにか間違っていると思うのは、私だけではあるまい。
そもそも、温暖化は本当にCO2が原因なのか。疑問視する科学者もいる。
「今なによりも必要なのは科学的な見方です」
こう強調するのは赤祖父俊一氏である。氏はアラスカ大学地球物理学研究所所長、同大学国際北極圏研究センター所長を歴任した地球物理学の権威だ。7月7日、衆議院会館で行なったシンクタンク「国家基本問題研究所」主催の研究会で講演した氏が強調したのは、温暖化問題はいまや科学的知見を離れ、国際政治や経済の問題になり果てたという点だ。有り体にいえば、プロパガンダになりつつあるというのだ。「プロパガンダと科学の戦いになると、科学は勝てないのです」と氏は嘆く。
氏が指摘したのは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告の矛盾である。IPCCはCO2の増加が温暖化を引き起こす、2100年には地球気温は4度ないし6度上昇するなどと指摘してきたが、その予想はすでに外れているというのだ。
「CO2が今も増え続けるなか、地球気温は1998~2000年頃からすでに約10年間、下がり続けています。海面上昇も止まっています。IPCCの予測はすでに明確に間違っているのです。私の指摘した事象には科学的データの裏づけがありますから、IPCCも否定することが出来ません」
IPCC側は気温の下降はラニーニャ現象による一時的事象だなどと説明しようとするが、前述のように気温降下は約10年続いている。
「10年続いた現象は一時的な変化とは見なされません。それはまぎれもない気候変動なのです。IPCCの予測と正反対の気候変動について彼ら自身まったく説明出来ていないのです」
赤祖父氏は、地球気温の研究では最も信頼されている英国のイースト・アングリア大学の研究も、米国商務省の海洋気象局の観測も、日本の気象庁の観測も、いずれもすべて2000年頃からの地球気温の下降を示していると強調し、こう語った。
「これから約20~25年間、地球気温は下降を続けると思います」
じつは、私は赤祖父氏のこうした主張を今年5月号の『文藝春秋』で詳報したのだが、再び、当欄で氏の主張を取り上げるのは、新たな驚くべき事実が明らかにされつつあるからだ。
赤祖父氏が語る。
「気温とCO2の量に密接な関係があることは以前から指摘され、CO2の増加が気温の上昇をもたらすと思われてきました。ところが、南極の氷を用いたここ数年の研究で、因果関係が逆である可能性が出てきたのです。気温上昇がCO2の増加に先行するという発見です。むろん気候変動は非常に複雑で難しい問題ですから、この種の研究結果はさらなる追試と確認が必要です。そのうえで申し上げたいのは、右の研究結果が確認されれば、CO2と温暖化についての考えは根本的に変えなければならないということです」
日本は、粛々と省エネを進めつつも、現在進行中のCO2削減の国際的取り決めに、安易に乗ってはならないということだ。むしろ、日本政府には科学的知見に基づいた代替案を提示する先頭にこそ、立ってほしい。それが国益に叶い、人類に貢献する道である。
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トラックバック by PastelArc — 2009年07月20日 22:40
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