「みぞソバ、赤マンマとともに安らぎを与えてくれるわが家のメダカ」
『週刊ダイヤモンド』 2008年8月9・16日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 751
わが家の小さな池に、12匹のメダカがやって来たのは、今年の4月下旬だった。
その約ひと月前に造った池は、現代風(いまどき)の呼び名でいえば、ビオトープである。深さはせいぜい20センチメートル、盥ほどのサイズだ。なだらかに足で固めた水辺にまず芹を植えた。茂ってくれば、摘んでお浸しにしよう。みぞソバと赤マンマはそれぞれ白い可憐な花と赤い愛らしい花を咲かせる。藺、石菖、真菰はやがて背が伸びて、その葉先にトンボが止まるだろう。池のいちばん深いところ、といっても前述のように、20センチメートルほどなのだが、その水底には石菖藻を植えてもらった。そして私は、そうした草花の合間に、子どものとき土手で摘んだ紫や白の菫を、思いっ切り、たくさん植え込んだ。
ビオトープを造ったカルティべートカンパニーの野口理佐子さんが言った。
「今は、植えたばかりで寂しく見えますが、ひと月ふた月もすれば、ずいぶんとにぎやかになりますよ」
脳裏に、幼い頃歩いた小川の水辺の光景がよみがえる。菫が咲いて、タンポポが咲いていた田舎の土手。水辺に下りて芹を摘むと、母が上手にお惣菜にしてくれた。そして草いきれのなかで遊ぶとき、なくてはならないのが、浅瀬の流れとメダカだった。そんな私の話に、ビオトープ管理士の三森典彰さんがニコニコ顔で言った。
「あと少し待ってくだされば、多摩川の黒メダカを連れてきます。この池で大切に育てれば、すぐに増えますから、増えたら、そのぶんを多摩川に戻しましょう。じつは今日ここに植え込んだ植物はすべて、多摩川水系のものです。ですから増えたら、それも多摩川水系に戻しましょう」
約束どおり、三森さんがメダカを連れてやって来たのが4月下旬だったのだ。ひと月のあいだに、池の水はきれいに澄んで、これならメダカもすみやすいだろうと思える佇まいとなった。
メダカが来て以来、彼らの様子を見るのが早朝の日課の一つとなった。12匹のメダカすべてを数えるのはなかなか難しい。動きが素早く、右から数えていても、何匹かスッと、左に行ってしまう。前後左右、自在に動く敏捷な彼らの頭数を確認し、無事を確かめて、私の一日が始まる。
そしてある日、大事件が起きた。メダカが全員、いなくなったのだ。まさか、と思いながら必死で捜したけれど、いない。水をパシャパシャかき混ぜても、影も形もない。犯人は誰だ。水浴びにやって来る鳥たちだろうか。
この小さな水辺にはいろいろな鳥たちが集まり、水浴びをするようになった。池が溢れてしまいそうな勢いで蹴散らしながら水浴びするのは烏である。メダカたちは生きた心地がしないことだろう。その大きさゆえに、町にすむ鳥たちの最上位に君臨する烏だが、まさか、メダカを一匹残らず食べてしまったわけではないだろう。
とすると、他の鳥か。でも、雀や目白であるはずがない。ならば、昆虫などを食べる四十雀かしら、コガラかしら……。美しい四十雀がメダカを食べ尽くすとは、とうてい考えられない。
考えあぐねた私は野口さんに電話をした。すると彼女が教えてくれたのだ。メダカは寒くなると土の中に潜って体温を保つのだと。そういえば今年の五月は、肌寒い日が多かった。しばらく待って、気温が上がれば、またきっと、メダカは泳ぎ始めるに違いない。
そして今、メダカたちが産んだたくさんの卵から、多くの赤ちゃんメダカが誕生した。当然だが、子メダカは孵化した順番に体長が伸び、体が大きくなる。糸のように細くて頼りない感じのメダカから、小学生くらいに育ったメダカ、もう中学生並みかと思えるメダカまで、同じ池で泳いでいる。私はとうの昔に、数えることをやめ、彼らの元気な姿を楽しんでいる。
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