「 韓国大統領候補は苦労の辣腕家 」
『週刊新潮』 2007年7月19日号
日本ルネッサンス 第272回
韓国野党、ハンナラ党の大統領候補に、前ソウル市長の李明博(イ・ミョンバク)氏が選ばれた。8万1,084票の得票で、対立候補の朴槿恵(パク・クネ)氏に2,452票の差をつけた。
韓国論壇の雄、『月刊朝鮮』の元編集長で、現在、韓国で最も影響力のある言論人といわれる趙甲済(チョウ・カブチェ)氏は、今回の選挙は韓国の有権者の間に新しい傾向が芽生えていることを示していると語った。
「かつて盧武鉉大統領を支持した20代、30代、40代の若い世代が、今や李明博氏を支持しています。彼らの李明博氏に対する支持率は平均で40%を超え、その特徴は反左派でありながら、いわゆる保守とも一線を画している点にあります」
この政治の潮流を、ソウルのマスコミは゛李明博革命〟と呼ぶ。李氏支持の若い世代は、盧大統領と対立する保守派グループ、ニューライトとも異なる人々だ。彼らが李氏支持を通して求めているのは能力ある指導者による政治である。
たとえば盧大統領は外交能力を著しく欠いている。なかでも北朝鮮政策は尋常ではない。大統領はこれまで、「条件なしの支援を行う」「北朝鮮に多くを譲歩しようと思う」などと述べて北朝鮮にへりくだってきた。対照的に同盟国の米国に反発し、米韓両軍が共同で保持する戦時作戦統制権をすべて韓国軍に戻せと要求した。米国は韓国を突き放す形でこの要求をのみ、早ければ09年10月にも、有事の際、韓国軍が単独で危機に対処する状況となる。
「韓国の若い世代は共産主義や社会主義を歓迎していないのです。盧大統領の金正日に対する思慮も戦略もないのめり込みは、若い世代の知性や感性にとって受け容れ難いのです。それだけ韓国世論は変わったのです」
趙氏は、韓国の国民は、いまや盧大統領の言葉遣いも含めてその教養のなさに愛想をつかしていると言う。
盧大統領の経済政策も時代錯誤だ。たとえば、社会主義的な富の再分配にこだわり、新築マンションは貧しい階層のために一定割合で床面積20坪以下の小さな住宅を作らなければならないと定めた。
時代に逆行する政策は、しかし、新規の住宅開発を鈍らせ、供給は減少、住宅価格も家賃も上昇し、貧しい階層を直撃した。
ソウルに清流を取り戻した男
悉く的外れの盧大統領とは対照的に、李氏の政治的指導力、経済的手腕には絶大な期待が寄せられている。大阪生まれの氏は幼い頃韓国に戻り、極貧の子供時代をすごした。苦学をして高麗大学を卒業し、現代建設に入社した。12年目の1977年に社長に就任、88年には会長となった。会社の業績を上げ、自身も大成功によって資産家となった氏を、韓国の人々は、「コリアンドリームを体現した男」と呼ぶ。
92年に国会議員、2002年にはソウル市長に当選。市長の任期4年の間に、ソウル市を東西に流れる清渓川(チョン・ゲチョン)の大工事を成功させたことで一躍、世界の注目を集めた。
かつてソウルの街に涼風を運んだ清渓川は、生活排水や汚物で汚染され、毎年のようにコレラなどの伝染病をひきおこした。問題解決のために韓国政府は1950年代の終わりにこの川をスッポリとコンクリートの蓋で覆った。その上に高架道路も作った。高架道路には一日平均16万8,600台弱の車が通り、道路下には屋台や小商店約6万店が並び、20万人が暮らした。
李明博氏は市長に就任するや、この川の涼やかな流れを取り戻す計画に着手した。高架道路を取り壊し、コンクリートの蓋をはがすというのだ。多くの人が゛不可能だ〟といったプロジェクト、関係者20万人を立ち退かせ、5.6キロの高架道路を取り壊す工事は公約どおり2年で完了した。いまソウルは清流をまん中に抱いた美しい都市として昔の姿を取り戻しつつある。
この事業を通して李明博氏は自らの強いリーダーシップを証明した。口数は多くても、少しも国民経済を改善しなかった盧武鉉大統領とは対照的なのだ。実績も支持もある李明博氏だが、今年12月19日の大統領選挙で勝利出来るのか。
氏にとっての不安材料は第一に、ここ数か月のキャンペーンでイメージが大きく傷ついたことだろう。早稲田大学現代韓国研究所客員研究員のホン・ヒヨン氏が語る。
「李氏の欠点は金持ちすぎることです。韓国には、日本の資産家とは比較にならない、とてつもない金持ちが多い。なかでも、コリアンドリームそのままの李明博氏は、本当に資産家です。その点を同党の対立候補である朴槿恵氏が非難し続けました」
朴氏は李氏の資産形成について微に入り細に入り攻撃した。その個人攻撃の凄まじさは、゛盧武鉉大統領と朴槿恵氏が水面下で手を結んだ〟との噂を呼んだほどだ。盧大統領にとって、朴氏よりも強敵と見られている李明博氏の追い落としは好都合だ。そのため李明博氏にまつわる情報を盧武鉉大統領が、対立政党の朴槿恵氏に提供したというわけだ。
保守勢力の復権はあるか
この種の噂が囁かれるほど、朴氏の攻撃は執拗、かつ激烈だった。合わせれば2人の支持率は7割近くになる。両氏が一致団結すれば、12月の大統領選挙でウリ党に敗れることはあり得ない。金大中氏、盧武鉉氏と二代続いた左翼勢力から、保守勢力が政権を奪いかえす好機がいまなのだ。
接戦で敗れた朴氏は協力を申し出た。両氏の連携は可能なのか。趙甲済氏は語る。
「本人同士よりも、2人の支持者が団結するでしょう。韓国の大統領選挙で過去2回、左派の金大中、盧武鉉両氏が勝ったのは、いずれも保守勢力が分裂したからです。同じ過ちを三度繰り返すことは、有権者がさせないでしょう」
他方、いまや支持率が一桁台に落ちた盧大統領は、南北首脳会談を成功させて、国民の間に熱狂的なウリ党支持の波を作りたい考えだ。8月28日から予定されていた首脳会談は、北朝鮮を襲った水害で10月に延期された。大統領選挙は12月19日。意表をつくような南北政府の合意がなされれば、状況がウリ党有利に転換する可能性もある。
だが、李明博氏によせられる若い世代の支持の高さは南北首脳会談のいかがわしさを彼らが冷静に見つめ始めたということでもある。金正日政権の正体をより多くの韓国国民が認識し始めたと思われるいま、ハンナラ党が7月4日に、米国が北朝鮮に大きく傾いたのに動揺して、盧武鉉大統領と変わり映えのしない北朝鮮融和策を打ち出したのは、実に皮肉なことだった。
ハンナラ党が政権を奪還するには、北朝鮮政策をはじめ、国の基本的問題でブレず、李、朴両氏が真に私情をこえて大同団結することだ。
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