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2007.08.04 (土)

「 参院選を本来の争点から遠ざける政治の風と安易なレッテル貼り 」

『週刊ダイヤモンド』     2007年8月4日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 701

現在の政治状況にも関係していると思われるので、少々私的なことではあるが論じてみたい。小欄が読まれる頃には結果が判明しているかもしれないであろう、参議院議員選挙をめぐる世間の“空気”についてである。

自民党のベテラン政治家ですでに政界を引退した人物が、7月中旬に足を運んだいくつかの選挙区の空気が、7月初旬のそれと大きく様変わりしていたと驚いていた。“安倍政権は右翼じゃないのか”という、やじとも質問とも判別しがたい声が聴衆から飛んできたことなど、全体的に安倍政権への冷たい視線が強烈だったと同氏は語った。

安倍政権の支持率は、年金問題を主因として急速に下がり続けた。一方で、しかし、年金だけが選挙の争点であってはならないし、争点とすべき重要案件はほかにいくつもあるということはどの人も納得する。それでも人は問う。「安倍政権は信頼できるのか」と。

そんなとき、明解な論点を提示するのは言論人の役割で、存在意義でもある。7月22日、フジテレビ「報道2001」では、参院選への視点を問う討論が行われた。出席者には日本の知性の一人、榊原英資氏らがいて、氏は、参院選は安倍晋三首相の“ガバナビリティ”を問う選挙だと定義した。

統治能力の根幹は、国家の基本的問題への対処である。安倍政権は、歴代の自民党政権が手をつけなかった重要課題を一つひとつ解決した。たとえば教育基本法と教育三法の改正、国民投票法の成立などだ。公務員制度改革関連法は、各省事務次官会議の了承を得なければ法案の閣議決定ができないという慣例を破って、首相の強力な意志をもって事務次官会議を素通りして閣議決定し、国会で成立させた。

そうした手法を強権的だと批判する声もあるが、国民が選んだわけでもない官僚群に政治が委ねられ、官界トップの事務次官会議の了承なくしては法案の閣議決定も出来ないことのほうがおかしい。その状態こそ、官僚の“強権”が不当に日本の政治を支配していることを示す。

政治はあくまでも国民の代表である政治家の意志によって運営されるべきであり、事務次官会議の了承なしに公務員制度改革関連法を成立させた首相の決意と実行力が、政治を国民の手に取り戻すための第一歩になる。こうしたことをもってすれば、首相の“ガバナビリティ”はむしろ高く評価されてよい。

そのように考え、討論では、私は選挙の争点の一つにこの公務員制度改革があると論じ、官僚主導の具体例として、内閣法制局の憲法および集団的自衛権の解釈のおかしさについて述べた。

周知のように、国連憲章は全加盟国に集団的自衛権の行使を認めている。しかし、内閣法制局は、日本には集団的自衛権はあっても、同権利の行使は認められないと解釈。結果、日本は同権利を行使出来ずに今日に至る。

安全保障政策も官僚群が事実上決定しているという点で、日本は官僚統制であり、他国のようなシビリアンコントロール、文民統制にはなっていない現実もある。

そうした一連の事実に基づいて、戦後日本のこの奇妙な官僚支配を変えることになる公務員制度改革を評価したのだが、それに対し、榊原氏は「ネオコン」という表現で反論したのだ。

氏のネオコンの定義がいかなるものかは知らない。が、政治を官僚支配から国民の代表である政治家支配の体制に変えていくことを評価する意見をネオコンと呼ぶのはスジが通らない。

番組では残念ながら、そこまで踏み込むことが出来なかったが、この種のレッテル貼りをする論法に、私は疑問を抱くものである。そして考える。ネオコンや右翼という類いのレッテル貼りで政治を論ずることが、今回の参院選を本来の争点から遠ざける一つの要因になったのではないかと。

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「 参院選を本来の争点から遠ざける政治の風と安易なレッテル貼り 」

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