「 災害列島で成すべきこと 」
『週刊新潮』 '05年11月3日号
日本ルネッサンス 第188回
中越地震から1年、小千谷市と長岡市に足を運んだ。訪れる度に、被災地は少しずつ、しかし、着実に、復興を遂げている。関越自動車道も小千谷・長岡間がようやく開通した。最も激しい被害に見舞われた山古志村にも、来年の春には修復された国道が開通する予定だ。
一方で山々には大きくえぐられ、土が剥き出しになっている個所が幾つも残り、手つかずの県道や市道も多い。最も見通しの立っていないのが家を失った人々の復興である。
山古志村議会の関幸作議員が語った。氏は、被害が激しかった山古志村のなかでも最も激しい被害を受けた6地域の内のひとつ、梶金地区の纏め役である。全戸全壊という凄じい被害にただ呆然としてはいられない、皆揃って故里に帰ろうと氏は全員を励ましてきた。
「28世帯の内、25世帯が長岡市のこの仮設住宅に、残り3世帯は近隣の家族の元に身を寄せていますが、気持は皆ひとつ。出来れば地震から1年で戻りたかったけれど、梶金地区は来年3月までには国道が開通する。国道沿いに家を建て直して、祖先が何百年もそうしてきたように、これからも我々は同じ村落で助け合って暮らしたいと、いつも話しています。村に戻るまで、あと少しの辛抱です」
日焼けした顔がほころぶ。故里をどう再建していくか、関氏らは毎日のように集っては語り合う。問題の解決策を探り当てるためにも、互いを励まし合うためにも、寄り合いは欠かせない。そこでいま一番の悩みが、住宅問題だ。被災者の最大の受け入れ先となった長岡市の森民夫市長も、復興の最重要課題が個々の住民の住宅再建だと指摘する。
仮設住宅群の中にある診療所で関氏が語った。
「村の道路が復旧されました、橋も修復されましたといっても、人間が戻らなければ本当の復興なんてないんですよ。人間が戻るためには住む場所が必要です。ささやかでも、一家が肩寄せ合って暮していくための住宅、その建築資金をどうやって工面するかが問題です」
個人住宅再建への補助
関氏らは、28世帯全てが一軒も落ちこぼれないように知恵を絞った。辿りついたのは以下の構想だ。
皆で建てる住宅は、一戸当たりの土地は50坪から70坪で建築面積は16坪。将来増築し易い設計にし、費用は1,000万円におさめる。
「仮設住宅は9坪です。現在の約倍になれば、何とか、ゆったり出来るとみんな言ってくれます。山古志では、昔から冠婚葬祭は全て自宅で行っていた。けれど、時代も変わり、いまは共用の会館などを使えます。だから、家族が暮せる広さがあれば十分なんです」
国道沿いの山野を国が宅地造成してくれれば、立地のよい場所でも土地の値段は坪1万円が相場だという。
縦横4間の正方形で16坪の住宅なら、土地代を入れて、1,000万円以内で設計し、建ててもらえる目途がついたというのだ。だが前述のように問題は建築費約1,000万円の捻出である。
「山深い農村ですから、正直言って、どの家庭も貯えを沢山もっているわけではありません。借りても年寄りには返済が大変です。しかし、何とかしなければならない。仮設に住み続けるわけにも、山古志に戻らないわけにもいかないのですから」
個人の住宅再建に力を貸してほしいという要望は、政府には容易に受け入れられない。道路や橋は公共財であり、税金を注入して修復するのは当然だが、住宅などの私有財産に公費を補助として出すことは許されないとの考え方があるからだ。
しかし、これは建前だ。現実に国は被災者再建支援制度によって、中越地震において被害を全壊、大規模半壊の二段階に分けて300万円から100万円の援助を出している。事実上、私有財産形成に公費は出ているのだ。
かといって、同制度の適用を拡大するのも問題だ。たとえば大都市での災害時に個人住宅に公費を出すとなれば、どれだけの予算が必要になるのか。財政上不可能だろう。一方、個人の住宅再建に目途をつけない限り、町や村の真の再建があり得ないのも事実だ。
この問題に独自の解決策を生み出したのが兵庫県だ。10年前の阪神・淡路大震災で死者6,433人、全壊、半壊家屋24万9,000余棟の被害を受けた同県は、震災10年目の今年9月1日、兵庫県住宅再建共済制度を発足させた。同制度は災害被害者には、自助、公助に加えて共助が必要だという考え方に基く。自助は個々人が加入する災害保険や地震保険などだが、自助だけで大規模自然災害に備えるのは大変なことだ。公助は国による救済制度だ。現行制度には改善すべき点は多いが、国の援助に限界があるのは止むを得ない。そこで両者の不足分を補う制度として共助の仕組み、住宅再建共済基金を作ったのだ。住宅所有者が年5,000円を基金に積み立てることによって自然災害で家屋が全壊半壊した場合、一律600万円を受け取る仕組みだ。
自然災害と対峙するには
共済基金事務局長の常松貞雄氏が語った。
「都市部では住宅建設には少なくとも1,500万円から2,000万円は必要でしょう。公的支援と自助努力に加えて、共済制度から600万円を支払うことによって、再建に踏み切る勇気づけになると考えています。これなくしては住宅再建を諦める人がいるかもしれません」
掛け金と給付金は県民の意見をとり入れて決めたという。だが、この額で基金は運営出来るのだろうか。
兵庫県で過去100年間に起こった災害で全壊及び半壊した住宅に、今回開始した基金による支給金を支払ったと仮定すると6,000億円になるそうだ。年平均60億円だ。県下の民間住宅戸数は約180万戸、今回共済制度に加入したのは現在4万3,000戸で全体の2.4%、積立金は2億1,500万円になる計算だ。60億円の2.4%は1億4,400万円で、現積立金で十分カバー出来る。但し災害は地域によって被害の程度が異なる。この偏りを最大1・5倍で計算しても、支払いに必要な支給額は2億1,600万円で、これもほぼクリア出来る。
災害が大規模で万一、支払金が不足する場合、兵庫県が債務保証をすることも条例で決定された。より多くの人が加入し、長期にわたって継続することが出来れば、この制度はすばらしい真価を発揮すると思う。
復興に取り組む森長岡市長も、兵庫県のような共済制度が必要だと指摘した。関氏も力を込めて言った。
「年に5,000円なら我々も払えます。そんな制度を作ってもらえたら、本当に有難いと思います」
日本は災害列島である。自然災害は他人事ではない。兵庫県の共済制度を全国に広げたいものだ。
阪神大震災・新潟県中越地震の教訓アンケート
現在、阪神大震災・新潟県中越地震の被災者を対象とする防災アンケートが継続して行われています。
トラックバック by オンラインコンビニエンス何でもそろう便利屋です — 2005年11月04日 21:54
★ 越沢明『復興計画』中公新書(新刊)
台風カトリーナで廃墟になった町、ニュー・オーリンズ。なぜアメリカは、イラクに軍隊を派遣できて、復興がすすまないのか。明治以降、どうやって日本人は、被災から…
トラックバック by 書評日記 パペッティア通信 — 2005年11月04日 22:00
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トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2005年11月05日 01:40
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中共と、売国奴たち
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トラックバック by 手前ら、日本人をなめんじゃあねぇ — 2005年11月05日 13:00
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トラックバック by オンラインコンビニエンス何でもそろう便利屋です — 2005年11月05日 18:55
「がんばろう、日本!国民協議会」と民主党の関係について
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1.「がんばろう、日本! 国民協議会」とは?
読者諸賢はここ数年…
トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2005年11月05日 20:58
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…
トラックバック by なめ猫♪ — 2005年11月06日 20:08
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トラックバック by 草莽崛起 ーPRIDE OF JAPAN — 2005年11月06日 21:02
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トラックバック by Adderall xr snort. — 2007年07月15日 04:16